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木枯らしの中

この日は、現地視察の日だった。


長の橋本、三宅、岩本、ゆりあと翔は、候補地を視察に2台の車に分乗して行った。一台は、プロジェクトチームの、そして、もう一台は翔の車だった。視察自体は午前中で終わり、少し離れた島に海産物のおいしい食堂で昼食を取り、その後は自由行動となった。


ゆりあは、食堂から見えた建物がふと気になった。そして、昼食後、外に出てその建物の方を見ていた。

すると橋本がゆりあに声をかけた。


「石原さん、帰りますよ。」


ゆりあは、振り返り、見ていた建物を指差し


「あっ・・わたし、そこの建物に興味あるから、ちょっと、よって来ます。」


「一人で大丈夫ですか?」


「ここ・・・フェリーもあるみたいですし・・・・後で一人で帰れますから・・」


「そうですか・・」


ゆりあを残しプロジェクトチームの皆は先に島をでた。




チームが橋をわたりはじめると風が吹き出した。


「だいぶ吹いてきたな・・・・」


すると、その風は次第に強くなっていった。


橋をわたりきったところの料金所でおじさんが


「君達は運がよかったな・・」


「えっ・・・」


「もうすぐこの橋・・・通行止めになるから」


さらに強い風が吹き始めた・・・


木枯らしだった・・・


ラジオからは波浪警報が発令されたとチームの皆に聞こえた。ゆりあを一人置いてきたことを後悔していた一同


「どうする?」


そう相談をしているとことに橋本の携帯にゆりあから連絡が入った。


「石原さん、大丈夫?」


「すみません。勝手な行動をして、今日は、戻れないみたい。」


「そうか、我々は、今日帰るけど、どうします。」


「明日、休みください。明日、移動します。」


「そうか、気をつけて」


「みんな、これから帰ろう。」


一同が帰ろうとした時だった。翔が橋本に声をかけた。


「橋本さん」


振り返る橋本に翔は頭を下げ。


「じゃあ、私はここで。」


「そうだな、樋口君、お疲れ様・・・じゃあ。また」


橋本たちは翔を残し帰って行った。







「どうしよう・・帰れない。」


フェリー乗り場に着たがすでに出港した後だった。しかも、次の便の欠航が決まっていた。


落胆し待合室に一人座るゆりあ


その頃、翔は車で橋を渡り島に戻っていた。


島内を探したが、ゆりあが見つからない。


やがて、強風のため、橋は通行止めになった。


フェリー乗り場についた翔、


そして、休憩所でうつむいているゆりあを見つけた。


「石原さん。」


その声に顔を上げ、翔を見たゆりあ、


「樋口さん・・・なぜ?」


「石原さんを迎えに・・・と思ったんだけど」


「なぜ私を?」


「まだ・・・間に合うと思って・・・」


「間に合う?って」


「橋は、通行止めになってなかったから・・・」


「じゃぁ・・帰れるの?」


喜ぶゆりあに


「もう・・・」


「そう・・・」


あきれるゆりあに


「ホント?携帯すりゃよかった。」


「そうよ。なぜ。かけてこなかったのよ。」


「すまない。」


その言葉を聞いて、ふっと笑みを浮かべるゆりあ


「本当に・・・  行きましょう。」


ゆりあは席を立った。


「どこへ?」


「ここじゃ、寒いでしょ。」






二人は、昼食を取ったお店に行き、そこで、食事を取った。


店の主人に、近くに泊まるところがあるか聞いてみた。


「近くに、浜田屋があるから行ってみたら?」


しかし、浜田屋は満室だった。


「他に宿泊できる場所は?」


店主に聞く翔


浜田屋の主人も当たってくれたがすでに満室だった。


「どうする?」


聞くゆりあに


[ちょっと待ってて」


浜田屋に戻ろうとする翔・・・


「どうしたの?」


「キャンプ場がないか聞いてくる」


「キャンプ場?この寒いのに?」


しばらくして、戻ってきた翔


「石原さん・・浜田屋で泊まれるって。」


「えっ?さっき・・」


「聞きに、行ったら、一人なら寝れるところがあるって。」


「あなたは?」


「別の民宿で、あけてくれるそうだから、そこに行くよ。」


「そう、よかった・・・」


ゆりあは、浜田屋に泊まれることになった。






翌朝、浜田屋を出るとそこには翔の車があった。


中では翔が眠っていた。


それを見つめるゆりあ・・・


やがて、そっと助手席に乗り、眠っている翔の顔をそっと手を伸ばした。


かわいい寝顔をして・・と思いつつ・・・髪に手が触れた。


その時、ふっと翔の目が開いた


「おはよう」


ゆりあの顔を見て驚く翔


「おはよ・・」


「どうして車で寝てるの?」


「あ・・いや・・」


言葉に詰まる翔、それをゆりあが見つめ、そして


「ありがとう・・」


「・・・」


言葉が出てこない翔、慌ててエンジンをかけた。


「帰りましょう・・」

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