ある秋晴れの日に
ゆりあが彼を見かけたのは、ある秋晴れの空が青く澄みきっていた日だった。
雄太とショッピンセンターのカフェでお茶をしていたゆりあ、二人の会話が
途切れた瞬間、彼女の目に映ったのは、さびしそうに向うを見ていた彼だった。
よそ見をするゆりあに、雄太は声をかけた。
「どうした?」
「何でもないわ。」
ふと我に返るゆりあ
「ところで、これから映画見るんでしょ?」
「あっ・・そろそろ時間だ。」
「そう、行きましょう」
二人は、映画館へ向かった。ゆりあが振り返るとまだ彼はそこにいた。
「行くぞ。」
「えっ・・・待って!」
「・・・待った。」
裕子が翔の目の前に立ち話しかけた。その言葉を聞いて彼女を見上げる翔・・・
「何だ・・・裕子か・・・」
「何だとはなによ・・」
そう言いつつ裕子は、翔の前に座った。
「せっかく来たのに・・ねぇ・・回りましょうよ。」
「いや・・・やめとくよ」
「なんでよ・・・」
「じゃぁ・・一人で行けば。」
「なんで、私一人で行かないといけないの。」
「ちょっと、一人にしてくれないか。」
「もうっ・・・何なのよ、一体」
むくれて裕子は、去って行った。裕子を見送った翔・・・ため息をついた。
「残念ですが・・・」
翔はこの言葉が耳の奥からよみがえってきた。
一年前の秋
この日も澄んだ晴れの日。
それは一瞬の出来事だった。
歩道を歩いていた翔とゆきえ
「あぶない!!」
ゆきえの叫び声と共に翔の記憶がなくなった。
目覚めるとそこには、ゆきえと翔の両親が、
そして
翔の耳に入った一言が「残念ですが・・」だった。
泣き崩れるゆきえの両親・・・
翔が目をやるときれいな顔をしたゆきえが隣に横たわっていた。
翔の目覚めに気付いた両親・・・翔はただ涙を流していた。
あれから一年か・・・
そう思い翔は再びため息をついた。
映画を見終わったゆりあ、カフェの前を通ると、まだ彼がいた。
振り向く翔、ゆりあと視線があった。
しばらく、二人の時間が止まった・・・
「どうしたんだ!」
雄太の声がゆりあを戻した。
「いえ・・・別に」
雄太の方を振り返る
「お兄ちゃん・・・いい加減にしてよ」
再び裕子が翔の前に現れ、ボーっと遠くを見ていた翔をみて
「どうしたの・・」
「なんでもない・・・」
裕子の横を見るとそこには見たことのない女性がいた。
「だれ?」
「あっ・・友達の奈々枝ちゃん」
「奈々枝です・・」
奈々枝はそう言うとペコリと頭を下げ、そして裕子に耳打ちをした。
「これが自慢のお兄さん?」
「ところで裕子お前の彼氏は?」
「何言ってんのよ。つれてきてないわよ。」
ばつ悪そうに話す裕子・・・
「そうか、じゃぁ何か食べに行こうか。」
「やったぁ♪」
喜ぶ二人だった。
ゆりあが振り返ると翔と裕子達が話しているのが見えた。
「いきましょう」
雄太とゆりあは、ショッピングセンターを後にした。