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聖女召喚に巻き込まれました

作者: ぺいた
掲載日:2026/09/03

「ほーらほら、新しいおもちゃだよ~~~!」


私は買ってきたばかりの猫じゃらしを、スーピンの前でへにょへにょと動かした。

スーピンはちらりと見てきたが、すぐにフイと横を向き、つまらなそうにあくびした。


「ええ~~~、気に入らないの? 高かったのにー」


スーピンは白い毛に黒いぶちのある猫だ。

麻雀牌の、(スー)ピンのようにぶちが並んでるのでこの名前にした。

とてもかわいい。


「スーちゃん~こっちはどう?」


私は、なんかの包装に使われてたヒモをぷらぷらさせた。キラン! こっちを見た!


「ほ~らほ~ら、どうだ~!」


段ボールの横からチラチラ見せると、お尻フリフリして狙ってる! ダッシュと同時にヒモを振り上げると、ジャンプ&キャッチ……の大事な場面が、なぜか光の中に包まれて、何も見えなくなった。



やっと目が見えるようになった、と思ったら、そこは夢の世界だった。


猫が! 中世の神官みたいな服を着た猫が! 後ろ足で立った猫が! たくさんいるのだ!


「なにこれ? 夢の国?」と私が感動してると、スーピンが

「うわーへんなとこ来ちゃったなあ」と言った。


え!? スーピンがしゃべった!?


「聖女様! よくいらしてくださいました!」

西洋の貴族みたいな服を着た、二本足の黒猫が、両前足を広げて歓迎のようなポーズをした。


この猫もしゃべってる!


「我が国の危機を救うために、聖女様が来てくれるという伝説は本当だった!」

「聖女様! どうかこの国をお救い下さい!」


なんだろうこの状況。どっかで聞いたことあるような。


ハッ! わかった、これあれだ、異世界の話だ! アニメとかによくある!

そうか、だから言葉が通じるのか! 転生チートってやつだな!?


ぽんと手を叩いて理解したところで、服着た猫が言った。

「ところで、この生き物は聖女様の奴隷かなにかですか?」


「まあ! うちのかわいいスーピンちゃんが奴隷なわけ」

「こいつは俺の世話係だ。気が利かないがよく働く」


え?


「そうでございましたか。世話係のわりには態度がでかいようですが」

「体がでかいから態度もでかくなるのはしょうがない」

「いやあのちょっと待って! なんかおかしい! 話がおかしい!」


私は必死で猫たちの話に割り込んだ。

「私が召喚されたのよね? 聖女として!」


服猫たちがあきれたような顔でこっちを見た。


「自分が聖女だと……?」

「異形のバケモノがおこがましい……」


い……いぎょうのばけもの?


「まあそう言うな。元の世界ではこいつらが中心に世界を作っていたのだ。勘違いする気持ちはわかる」


スーピン……かばってくれてるみたいだけど、こいつら呼ばわり……?


「聖女様がそうおっしゃるなら……」

「さすがは聖女様、慈悲深い……」


『俺は寛大な心で許してやるからな?』のような顔で私を見るスーピン。


「あ……ありがとう……」

と、つい言っちゃったけど、おかしくない? これおかしくない? なんか納得いかないんだけど!


「それで、国の危機とはどういうものなのだ」

スーピンが聞くと、服猫が話し始めた。


「王宮の重鎮が次々に倒れ、亡くなっていくのです。原因不明の病で」


「症状は?」


「嘔吐したり、食欲がなくなったり、おしっこが出なくなったり、茶色いおしっこが出たりして、そのうち痙攣して、悪い時は数日で死んでしまいます」


その症状って……なんか、猫が食べたらいけないものを食べたんじゃないだろうか。

猫飼いなら絶対に気を付けるべき食べ物を。


「タマネギ食べてない?」


私の質問に「タマネギ?」と聞き返された。

そうか、ここでの名前は違うのかもしれないな。


私は紙とペンを持って来てもらって、絵に描いて説明した。

「こんな感じで地中に生える野菜で……切ると涙が出て……」

「ああ! 食べてる! ラット国の親善大使にいただいた、異国の野菜!」


「ラット国の親善大使……」


「長年、国交を断絶していたのだが、この間、和解の申し出を受けたのだ。この花もその時に受け取った親善のしるしだ」


と言いながら私の前に差し出したのは……ユリじゃん!!!!


「あの、ラット国の民って、もしかして全体的に体格が小さくて、歯が出てる?」


「よく知ってるな! そうだ! 歯が一生伸び続ける民族だ」


やっぱネズミの国だ!

ユリもタマネギも、ネズミにとってはたいした問題がないけど、猫にとっては猛毒!

親善なんてとんでもない、国家滅亡を企んだテロじゃん!


「悪いことは言わない、ラット国との国交は断絶しましょう。この野菜も花も、あなたたちにとっては毒なんです。全部処分しなくちゃダメです。体についた花粉を、なめただけでも死にますから、絶対になめないで! 必ずお風呂に入って!」


私の説明を聞いた服猫たちは、

「信じられない」

「友好国として協定を結んだのに」

と騒いでいたが、スーピンの

「この者の言う通りだと思う。私も絶対に食べさせてもらえないし、手違いでユリに触ったら、ものすごい勢いで体を洗われる」

という言葉を聞いて、

「この野菜も花も全部焼却だ! 花に近づいた者は湯で体を洗うように通達せよ!」

と動き出した。


ものすごく納得いかないけど、猫様の危険がなくなるならそのほうがいい。

ほっとしながら服猫たちが走り回るのを見ていたら、また光に包まれた。



光が消えると、私はスーピンとともに自分の部屋にいた。

時間も動いていないようだ。なんだろう今の、白昼夢? にしては、現実味があったような。


スーピンが私を見ている。

「ねえさっきさ、スーピンしゃべってたよね」

と言うと、フイと顔をそらした。


「ねえほんとは私の言葉わかってるの? お世話係なの? 私のこと、気が利かないと思ってるの?」

と言いながら、つかまえて抱き上げた。


スーピンは「ニャッ」と嫌がって飛び降りて、廊下に出てしまった。

廊下で止まって、振り返って私を見た。そして前に向き直ると、階下に走り去った。


下にいる母におやつでもねだるのだろう。いつもの日常。

でもちょっとだけ、スーピンとわかりあえたようなバカにされたような、複雑な気持ちが残った。

9月3日、[日間]コメディー〔文芸〕 - すべて

で3位になってました! ありがとうございますー!(*'▽')

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― 新着の感想 ―
面白かったです、猫様の話し読みたい続編楽しみ。
面白かったw ところで、スーピンはオスなの?メスなの? 聖女召喚されてるけど、口調は男口調なので…
多分スーピンにとっては主人公はお世話係でしょうね〜。 仕方ないですよ、人間はネコ様の奴隷なんだから……。
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