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スカイフェアリー 「日本防空学園編」  作者: Curious Sky
第1章「零(ゼロ)から始まる空の旅」
3/5

第2話「ゼロと隼」

 ――機長はミーティングルームの扉を慎重に開け、中に入った。


 部屋にいたのは、学園の制服を着た4人のスカイフェアリーたち。


 皆、凛々しい姿で並び、やってきた機長を迎えた。


 「機長さん、はじめまして。わたしたちは第43局地戦闘機部隊『隼隊』です」


 落ち着いた雰囲気の、深い緑色の髪の子が前に出て話し始める。


 「私は隼隊隊長の『零式艦上戦闘機五二型』です。名前が長いので零戦五二型ぜろせんごうにいがたと呼んでもらえると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします」


 「私は機長の空見だ。駆け出しの新米機長だが、よろしく頼むよ」


 ふたりは軽く挨拶を交わした。


 「さて……それでは二一姉さんから順に自己紹介をお願いします!」


 零戦五二型が隊員たちに勧めると、ひとりひとり自己紹介を始めた。


「こんにちは、姉の零戦二一型です。機長さん、これからよろしくお願いしますね」


「……零戦三二型だ。はぁ……自己紹介とかめんどくせぇな……」


「烈風一一型です……! 機長さんに認められるように精一杯頑張ります!」


 みんなかつての日本を代表する、個性豊かな子たちだ。


 しかし4人のうち3人が零戦とは思わなかったが……それに局地戦闘(迎撃戦)部隊と言っていたが、みんな局地戦闘機ではなく制空戦闘機なのも少し変だ。


「あの、ひとつ聞いていい? みんな制空戦闘機だけど……本当に局地戦闘専門なのかい?」


 疑問を五二型に問いかけてみる。


「ああ、それですか? 実はこの部隊は増加するアグレッサーの脅威に対応するために急遽編成された部隊なんです」


「本来は迎撃が得意な局地戦闘機の子が適任なのですが……人手が足りないので我々が担当しているんです」


「なので名前は局長戦闘部隊ですが、実は制空戦の方が得意だったりするんです。実際色んな任務に就いてるので……」


「そうなんだ、なるほどね」


 機長は納得した様子を見せた。


「では機長さん、早速訓練の方に……」


 (ビーッ!ビーッ!)


五二型の言葉を遮るように基地内にサイレンが響き渡る。機長は突然の事態に動揺を隠せなかった。


「緊急! アグレッサー戦闘機編隊が市街地上空へ接近中。迎撃部隊は即座に緊急出動せよ!」


 アナウンス基地全体に響き渡り、途端に騒がしくなる。


「ごーちゃん、スクランブルよ!」


 先ほどまで柔らかい印象だった二一型の目が変わる。するとミーティングルームに一〇〇式司偵が駆け込んで来た。


「機長! 現在スクランブルできる部隊は隼隊のみです! いきなりの初陣ですが……飛んでください!」


「はい……! わかりました!」


「みんな! きっと、精一杯やってみせる……だから見ていてくれ、私の指揮を」


「もちろんです機長さん! 貴方が頼りです、頼みますよ!」


 隼隊と機長は急いで飛行場へと駆けていった。機長はなんと、復元された実機の一〇〇式司偵に搭乗することになった。


 どうやら搭乗機体はスカイフェアリーと同じ年代の飛行機でないといけないらしい。スカイフェアリーの一〇〇式司偵も機長と一緒に乗り込んだ。


「機長、司令部からの指示もあります、落ち着いて指揮をしてください」


「わかりました!」


 隼隊の面々も、準備を進めた。実機の姿をした飛行ユニットを背負い、戦闘服に着替えた。4人が並んで滑走路へ向かう。


「ふっ……いい暇潰しになりそうだぜ、あのひよっこ機長の腕前も知れるしな」


「三二、油断しちゃダメよ。みんな気を引き締めて」


「はぁ……二一姉はうるせえなぁ……おい烈風、ちゃんとやれよ」


「は、はい! 私……頑張ります!」


「こちら零戦五二型、隼隊出撃準備完了。離陸許可を」


 五二型が管制塔へ許可を求める。


「了解、離陸を許可する。隼隊、出撃せよ!」


「……隼隊、出撃!」


 許可が降りると、全員飛行ユニットのエンジンを始動した。プロペラの風で髪が揺れる。頭上で回るプロペラの残像はまるで天使の輪のようにも見えた。


 滑走路に並んでいた4人が順番に駆け出し、地面を蹴って加速していく。スピードに載ると、体がふわっと浮いて空へ舞った。


「機長、指令をお願いします」


「……一〇〇式司偵、出撃!」


 機長の指示で大きな機体が動き出す。美しい翼が風を切り、徐々に空へ浮かんだ。遠ざかる基地からは、整備員たちが帽子を振って見送ってくれていた。


 あっという間に、隼隊と機長を乗せた偵察機は空の彼方へ消えていった。アグレッサーの予想航路までそう遠い距離ではない。


 ――アグレッサーとの初戦闘、機長は高鳴る鼓動を押し殺していた。

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