第5話
公園で話し合った日。
千晴の過去を聞いた日から3日過ぎた。
最近は千晴に脅されている
会う度に「私の過去話したから、伊藤くんの過去とかも聞きいたいなぁ」って
僕にもある。過去はある。
この話は誰にも話したくない。
そう思ってた。
自分にとって恥ずかしい過去。
やらかした過去。
「ねぇねぇ、伊藤くんの過去の話はないの?」
「うーん。」
「あんまり話したくない?」
「いや、そのすこし後悔してるというか。」
「後悔?私だってすごく後悔してたよ!でも、伊藤くんに全部話して、少し気持ちが楽になったよ!だから、伊藤くんも!私に話聞かせて!」
「わかった。今日の放課後、公園行こ」
「うん!!」
この話は墓まで持っていくつもりだったのに。
今まで誰にも話したことの無い。
ずっと塞ぎ込んでいた話。
家族にも、親戚にも。
誰にも話してないな。
1人で抱え込んできたから。
「伊藤くん!公園行こう!」
「行こうか」
ついに話す時が来てしまった。
正直、緊張している。
どんな反応をされるんだろう。
バカにされるのかな。笑われるのかな。
からかわれるのかな。
そんなことを考えていた。
「伊藤くんの過去の話。聞こうか」
「なんかすごく楽しそうだよね」
「そんなことないよ。」
「そう??」
「早く早く」
「わかったよ。」
小学校4年生の時かな。初めて友達ができたんだ。
それまで友達なんて居なかった。どんどんグループができて言って、話しづらかったから
自分で言うのもなんだけど、昔は活発な方で。
人と話すのも大好きだった。
どんどんグループができていく中で、たった1人僕に話しかけてくれた人が居てね。
リョウタって人なんだけど。
友達にならないか。って
すごく嬉しかったよ。友達が出来たって。
あれから、毎日のようにリョウタと過ごしていたよ。
授業でのグループ活動。授業間の移動。
とにかくなんでも一緒に居た。
リョウタと友達になってから。色んな人とも話せるようになったんだ。
リョウタ以外の人ともいっぱい話したし、遊んだし。
リョウタのおかげで楽しい日々だったよ。
でもね、悲しいことがあったんだ。
僕の両親が事故で亡くなったんだ。
突然だった。普通に授業を受けてる時に急に教室のドアから先生が慌てて僕のことを呼んだんだ。
両親が!って。そのまま病院に行って、一命は取りとめたんだけど。
脳に傷を負っていたみたいで植物状態になってしまって。親戚の人がこのままにしていても目覚めるとは限らないし、僕のことは親戚の人が育てるからって両親は天に登っていったよ。
でもね、親戚の人を僕はどうしても信頼できなかった。
僕は両親が植物状態でも良かったのに。僕の意見なんて聞かずに両親は居なくなったから。
どうしても信用出来なくてね。
その時はまだ小5だったから。
一人暮らしとかできるはずもなく。我慢して過ごしていたよ。
両親が居なくなった悲しみから。心にぽっかりと穴が空いたみたいになっていてね。
リョウタには相談していたんだ。リョウタは真摯に向き合ってくれて。助けてくれたよ。
でも、その1ヶ月くらい経った後かな。
妙な噂が立ったんだ。
伊藤ヒロってやつが自分の両親を惨殺したんだ。
根も葉もない噂が僕を傷つけた。
そんな噂は瞬く間に広がって。
僕は殺人鬼という濡れ衣を着せられたんだ。
あんなに友達が居たのに。みんな離れていって。
またひとりぼっちになった。
そんな日々が続いていた時。僕は見てしまったんだ。
リョウタが僕のことを殺人鬼だって広めているところを。
目を疑ったよ。あんなに信頼して色々話していたのに。親友だと思ってたのにって
すぐにリョウタを問い詰めたよ。
なんであんなことをしたの?ってそしたらさ、リョウタのやつ。変なことを言ったんだ。
ヒロのことが大嫌いだった。そう言ったんだ。
あの時のことは今でも忘れないよ。
相当心にダメージを負ったからね。
その後リョウタはこう続けたんだ
「最初はひとりぼっちだったから情けで話しかけて友達になったのに。急に色んな人と友達を作って。
みんなと仲良くなって。俺は1人もできなかったのにって。」
嫉妬かよ。って思ったよ
確かに最近奢ってくれとか。何かを取ってきてくれとか。
色々こき使われることが多かったな。ってその時初めて気がついたよ。
随分と前から嫌われてたんだなって。
あのことから人を信じられなくなってしまってね。
また裏切るんだろとか。そんなことばっかり考えてしまって。
友達を作れなかった。
「これが僕の過去かな」
そう言った瞬間。松田さんは泣いていた。
予想外の反応だった。
「伊藤くんも辛かったんだね。」
「辛かったけど。もう泣かないでよ」
「ごめん。」
松田さんが泣き止むまで待った。
背中をさすって待っていた。
「なんかさ、伊藤くんと私。似てるね」
「似てる?」
「うん。辛い過去を持ってるところとか。」
「確かに。似てるかも」
こうやって自分をさらけ出すことで共通点が見つかることもあるのかもしれない。
松田さんの言う通り全てを吐き出したことで
少しスッキリしたかもしれない