第1話
いつも通りの朝。
アラームに起こされ、布団を畳んで、顔を洗い、歯を磨く。
平凡な普通な日常。
家には誰も居ない。高校2年で一人暮らしをしている
両親は中2の時に事故で居なくなった。
親戚に引き取られるという話もあったが、お父さんの方の親戚も、お母さんの方の親戚もなんだか気に入らなかった。
だから、1人で暮らす。そう宣言した。
今はお金と家賃、光熱費、電気代諸々支援してもらってる。
朝ごはんは一応食べる。
食べてもあんまり変わらないとも思ったが、冷蔵庫にあるゼリー飲料を飲んで終わり。
その後はベランダに出て、外の空気を吸って。
一日が始まることを実感する。
家を出るまで。いつも暇だ
とりあえずニュース番組を見て、時間を潰す。
家を出る時間が近づいたら、着替えてカバンを持って。
両親に「いってきます」と声をかけてから外に出る
駐輪場から自転車を取って学校までの道のりを走る。
もう少しで桜が散ってしまうなぁ。とそんなことを思いながら淡々と自転車を漕ぐ。
学校に着いてからは、教室の隅っこにある席に座って。本を読む
相変わらず教室はガヤガヤしていた。
テレビの話。芸能人の話。推しの話。誰かの噂。そして学校1の美少女の話。
朝はこんな話題で持ちきり。
ガヤガヤする教室に少し耳を傾けて、本を読む。
決して混ざりたい訳では無い。
ただ、今日はどんな話題なのか気になるだけだ。
今日は学校1の美少女の話らしい
また誰かが告白して、振られたらしい。
学校中の男子が惚れていて、毎日のように告白の話を聞くのに。
一度も承諾したという話を聞いたことがない
まぁ、噂程度だが
この学校にはイケメンだって居るし、性格の良い奴だっていっぱい居る。
そんな人からも告白されてるのに一切承諾しないというのは信じ難いものだ。
「ねぇねぇ」
学校1の美少女のことを考えてたら。
その本人に話しかけられた
「はい?」
「伊藤くんだよね?」
「そうですけど…」
「学級委員会の話なんだけど」
なんだ学級委員の話か。
そういえば、この前学級委員を決める時にあまりにもみんながやらないと言うので痺れを切らして、手を挙げてしまった。
学級委員は2人なので、あと一人は誰かなぁと思っていたら、松田さんが手を挙げてたのを思い出した。
その後は特に忘れていたが、今思い出して気分が憂鬱になった。
今日の放課後はスーパーに行って、セールの肉を買おうと思ったのに委員会が入ってしまうなんて
運が悪すぎる。
授業を外を見つつ、ぼーっとしながら終わらせて、昼休みになった。
毎回昼休みは図書館に行く。昼休みは廊下も教室もガヤガヤしてうるさいので。静かな図書室に行く。
「伊藤くーん」
「松田さんどうしました?委員会ですか?」
「ううん!図書館行くのかなって。いつも昼休み図書館行ってるよね」
「図書館?行くよ。静かだし」
「私も着いてっていい?」
「うん。」
本当は静かにひとりで本を読みたかったが断る訳にはいかないので仕方がない。
そのまま席に座り、本を読み始める。
「伊藤くん、おすすめの本ある?」
「おすすめはこの人の本かな」
「そうなんだー、読みやすいの?」
「うん。読書初心者でもわかりやすいと思うよ」
「読んでみよっと」
今まで一切話したことの無い美少女と。同じ空間にいる
他の男子と違って松田さんに告白しようだとか、好きだとか。そんな感情はないけれど。
なんだか緊張する。
やっぱり美しいなぁと思う。
肌は綺麗だし、鼻は高いし、二重はくっきり綺麗だ。
「ん?どうしたの?伊藤くん。私の顔になんかついてる?」
「あぁ、いやなんでもない」
「そっか!」
危ない。顔をジロジロ見てることがバレてしまう。
この美貌だったら、男子全員を虜にしてしまうのも無理は無い。
「そういえば、伊藤くんは何読んでるの?」
「えっと。ミステリー系」
「ミステリー系か。謎解きとかもあるんだよね」
「まぁ、そうだね」
「難しそうだよね」
「最初はわかんないかもしれないけど、読んでくうちにどんどん面白くなるよ」
「そうなんだ〜。今度読んでみよう」
しばらく一緒に本を読んだ。
本を読み始めてからは静かに。集中して読めた。
「松田さん。そろそろチャイム鳴るから教室戻ろ」
「あ、ほんとだ。本に夢中で気づかなかった」
「本って読むと一気に集中するよね」
「うん!伊藤くんのおすすめすごく面白くて真剣に読んじゃった」
「おすすめ、喜んでくれてよかった」
「これからも伊藤くんにいっぱいおすすめ聞こうかな」
「僕でよければ。いつでも教えます」
「ほんと?やったー!」
昼休みのあとは3時間授業を受けて帰るだけ。
早く帰りたいけど、委員会があるのが辛かった。
きっと委員会は2時間かかるだろうと推測していた。
スーパーの特売肉買えないのがなによりも悔しい。
まぁ、決まったことを悔やんでも仕方ない。
ぼーっとしてやり過ごそう。