プロローグ
新作です!可愛がってあげて下さい。
【登場人物】
宇辻 宙:僕。主人公。MS。
宇辻 星華:宙の母。心配性。
早川 幸花:宙の恋人。看護師。
星熊 五郎:コマンダー。カリスマでリーダー向き。
高嶋 星夜:男。宙の同期。パイロット。
玲海 良那:ボーイッシュな女性。変わり者。PS
雷火( らいか ):苗字も分からない謎の人。PS。
食原 菜月:女性パイロット。
【用語説明】
・NOL《ノル》:新型のウイルス。症状は風邪と変わりがないが、副作用で《《笑えなくなる》》。
・スペースリウム:宇辻が搭乗する宇宙船。
・コマンダー:スペースシャトル全体の権限と責任を持つ。リーダー。
・パイロット:コマンダーの指示で宇宙船を操縦する。
・MS:機器やロボットアームの操作、船外活動をする。
・PS:科学者・研究者の中から選ばれる。宇宙船のシステムについての訓練は受けていない。宇宙飛行をしないとできない実験を行う。
僕は宇宙からの天の川の景色を見て息を呑んだ。人生で一度も見たことがない壮大な景色に圧倒された。
「宇辻!出発いたします!」
「了解。」
コマンダーの星熊が返事をすると、僕は天の川へ飛び込んだ。そして、子供の頃に見た星とは全く違う立体的な星に圧倒されるまま宇宙に流されていた。
〜10年前〜
「今日は月が綺麗だね」
まだ彼女ではなかった早川幸花が横で言った。
僕は星を見ていた。
「ねえ、どこ見てるの?」という幸花に対して「あの星が綺麗だね」と場違いなことを言った。今日は自称デートという名のお月見にに来た。
この後、告白して長いお付き合いが始まるのだが……そんなことは知る由もなく、そんな回答をしてしまった。まあ、告白が成功したから良いのだが。
「綺麗な星なんてどこにあるの?」
「あそこだよ。あそこ」
「え?」
上を指差す僕に向かって、幸花が首を傾げた。
僕は生まれつき視力が良いのだから、見えないのも仕方がないのかもなと思って、そう伝えた。幸花は「そうなんだ!視力良いんだね」とコンビニで買ったお月見ムードを出すための団子を咥えながら答えた。
この時に宇宙飛行士になることと、幸花に告白することを決めた。
幸花が団子を食べ終えて静けさだけが流れる時間が一番緊張した。
告白が成功した時は(言ってみるものだな)と軽く考えたが、断られた時には重く考えて立ち直れなかったのかもしれない。
僕はこんなもしもの話をよく考える。癖のようなものだ、と僕は考えている。
親に心配させないくらいの時間に僕らは家に帰った。帰り道はとてもウキウキして帰った。親に逆に心配されるようなウキウキ度だった。
そうして、僕らは付き合うようになった。宇宙飛行士を目指すようになった。
全てはあの星月夜から始まった。あの星月夜が人生を変えてくれた。
僕はそんなことを考えながら宇宙に流されていた。あの星を目指して——————