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My Nightmare~Last Loaring~  作者: Avi
花の咲く意味
12/21

その心を守る

双子である兄弟は外見はもちろん、声質も非常に似通っており、長らく共に過ごすなど深く交流を持たなければその区別は難しい


髪型の僅かな違いが悪魔へと変貌したことにより見定められず、声だけでどちらかと判断するのは、一度二度会っただけのベイカーには不可能であった


突如、イグリゴリらの拠点であるノーズヘッドに現れたその悪魔がヴァレリ兄弟のどちらかだという事実はベイカーを驚かせた


悪魔化したこともそうだが、ナルスダリアの忠実な部下に見えた兄弟がここにいる


独断か、ナルスダリアの指示か、どちらにせよ状況が拗れる予感が走る


「ヴァレリ兄弟、1人か?ここにいるのはナルスダリアの指示か?そうとは…聞いてなかったけどな」


すっと静かに、音もなく地に降り立つとヴァレリはベイカーを見据えた


「ここにいるのは我らの独断だ。しかし、根本として我らの成すこと全ては陛下のためだ。陛下に叱責されようが許諾されまいが我らは、ナルスダリア陛下の為に動いている」


静かな口ぶりだが、その言葉の薄皮一枚下には危ういほどの熱を感じさせる


妄信的と言えるほどの崇拝


「(…ナルスダリアの指示じゃないのか。…良かった、それなら…まだナルスダリアを信じられる)」


ここまでの協力、助力をしてくれているナルスダリアへ抱いていた信頼の情を損なわずに済んだことをベイカーは安堵した


だからと言って安心はできない

芽生えた疑問は失われるものではない


「…それなら何が目的だ?いや、その前にアンタらの悪魔化をナルスダリアは知ってるのか?」


詰まるような一拍の間が置かれる


「…魔力を持つことは知っておられるさ。私もディルミリアも「選ばれざる者」だからな。だがこの姿をご覧に入れたことは無い。」


「アンタらも?…じゃぁイグリゴリと関係が?」


ディルミリアの名を出したことから対峙する双子がヴィンセントということがわかった


「違う!」


ベイカーの問いにヴィンセントの語気が強くなる


「陛下に仇なすものと我らが同じであってたまるものか!!

我らはイグリゴリという存在が発足する前から捨て子だった!それがある日、語り手の末裔、それも幼子だからと奏国の権力者に引き取られ家畜のような日々を過ごした。」


「なんでそんな…」


「簡単なことだ、権力者の元からフェンリルに選ばれたものが出れば更なる立場を得ることができると浅はかな考えを持っていたからだ!」


「神格化されてしまったばかりにフェンリルがそんな打算の要因になっちまったのか…」


「拾われたことで我らは生きられたさ、いや!生かされていただけだ!狭い牢のような部屋で光も自由も希望もいつの間にか持てなくなっていた!家畜のほうがまだ自由はあったろうと思えるほどに…それが10年も続けば心は壊れる、外へ出たい、自由になりたいと願うことさえいつの間にかできなくなった」


「(ということは…双子の妄信的なほどのナルスダリアへの忠誠の理由は…)」


「多少頭が回るならもう理解出来るだろう!その地獄に蜘蛛の糸を垂らしてくれたのが!救ってくれたのがナルスダリア陛下だ!

我らに、命を…思い出させてくれた。与えてくれたと言っても過言では無い」


「…恩があるのは分かった、アンタらの振る舞い見てりゃナルスダリアへの忠誠だって疑う余地は無い。だから今ここにいることが疑問なんだ…いい加減聞かせてもらおうか?何が目的だ」


ベイカーには焦りが生まれていた


メルファを連れていったイグリゴリらとの距離が離れることはもちろん


この会話を聞きつけたイグリゴリらが駆けつける恐れもある


「俺がここにいるのは…足止めだよ。お前のな。」


「なに…?ってことは…まさか…」


その返答は双子の目的もメルファなのだと暗に示した


ヴィンセントの口ぶりからすると恐らくは双子の片割れ、ディルミリアがメルファを追っていると見て良いだろう



「なんでお前らまでメルファを…いや、問答してる暇はない!通してもらうぞ!」


これ以上、メルファらと引き離される訳にはいかない


可能な限り素早くヴィンセントを振り払い追うために、ベイカーは駆け出した


剣の柄に手をかけた瞬間、ヴィンセントは跳躍し頭上5mほどの高さに浮遊する


届かない、距離的に本来ならベイカーは大型拳銃ジャックローズを使う場面だが少しでも発砲音は出すべきではない


それをわかってか、そもそもがヴィンセントの距離なのか


「(いや!足止めが目的だから積極的に交戦する気がないのか!なら!)」


クレバーな判断はその場での最適解である、

とヴィンセントは判断したが見落としがあった


それはリーチの見誤り


ベイカーの背丈、剣の全長、そして跳躍力を多少過度に見積もったとしても


5mという高度は安全圏であるはずだと確信に近い推測をしてしまった


そしてセルセイムの丘にて見たものの失念


「ふっ!」


ベイカーはヴィンセントへと向かって思い切り地を蹴り跳んだ


そして右手の親指と中指の先を合わせ、弾いた


〈パチンッ〉


ベイカーが指を鳴らした直後


〈バチバチッ!!〉


その後頭部に金色の光が集まり、爆ぜながら光る三つ編みを発現する


ミザリーの三つ編みと違いリーチは数m程度だがそのパワーは比べて遜色ない


そしてその数mの延長がヴィンセントの推測を突き抜ける


ベイカーはその光る三つ編みをミザリーのように「尾」としての認識はせず

「第三の腕」として使役する意識を持つことにしていた


それはグワッと一瞬で伸びるとヴィンセントの脚を掴んだ


「なんだとっ!?」


余裕の距離だと過信、意識外のベイカーの攻撃に対する反応が緩慢になっていた


「大人しくさせてもらうぞ!」


思い切り掴んだヴィンセントの脚を引き寄せるとベイカーはその頭部に思い切り拳を振り抜いた


〈ゴッ!!〉


鈍い感覚だが、素手で殴ってもダメージが通らないという事はなさそうな手応え


顎を打ち抜くつもりではあったが悪魔化されていては正確に狙うのは難しい


顎を揺らすという事が悪魔化された相手に可能かどうかも分からないが、それでもベイカーは極めて正確に顎を打ち抜いていた


「(どうだっ!?)」


顎を打ち抜かれたヴィンセントはそのまま自然落下を始める


飛ぶという特性上、外殻の防御力がそこまで高くないということかもしれない


〈ズシャッ〉


ヴィンセントはそのまま力なく地面に落ちた


「よし……」


気絶したと思われるヴィンセントの元へ歩み寄るベイカー


どうやら周りのイグリゴリらに気づかれた様子もなさそうだ


メルファを追う前に、ヴィンセントをそのままにしておく訳にもいかない


どこか物陰にでもと思ったとき、違和感に気付く


「(なんで悪魔化が解けない…?)」


〈ズアッ!!〉


突然、ヴィンセントの背中の片翼が毛羽立つように逆立った


「なっ!?」


一歩後ろに跳躍し距離を取ろうとするベイカーへと向かって


逆立った翼が黒い羽根のようなものを無数に飛ばしてくる


ベイカーが地面に着地するまえにそれらがベイカーへと到達する速度だ


ベイカーは瞬時に光る三つ編みに傍らの大木を掴ませると自身の体を引き寄せさせそれを回避する


〈ズザッ!!ズザッ!〉


氷を削るような音がその羽根の威力を暗に示す


咄嗟の判断でなんとか躱すことはできたが、ベイカーはその羽根の行き着いた先に目をやる


その背後にあった大木は鋭利な斧で幹を抉られたような無惨な状態となっていた


生身のベイカーが受けていれば甘く見積もっても命に関わっていたことは間違いない


冷たい汗を感じつつ、ヴィンセントへ向き直るとゆっくりと立ち上がっている所だった


まるで影響が無いわけでは無さそうだが、それでもこの短時間で起き上がったからには簡単に大人しくさせては貰えないことが伺えた


「おかしいな…客人って扱いだったと思うんだけど、おもてなしにしちゃ過激だな」


「丁重にもてなしているさ、お前もナルスダリア陛下にとって重要な礎となったと記憶しておいてやる」


「良い墓でも作ってくれるって?…お断りだな。アンタらの狙い通りに死に体になってやってもナルスダリアが喜ぶ訳でもない、そのぐらいわかるさ」


ゆらり、とベイカーの光る三つ編みが揺れる


そして沈黙の中、帯びる静電気がパチリと小さく爆ぜた


〈ザッ!!〉


再びベイカーがヴィンセントへ向けて駆け出す


「(相手は本気だ、手加減してちゃこっちがヤバい!それにっ!)」


時間をかけ過ぎてしまっている

メルファがどこまで連れていかれたのかもう目視できなくなっている


しかしここで焦ってヴィンセントに遅れを取れば、それこそ目も当てられない


ベイカーは極めて冷静に努めようとしていた


剣を振り、ヴィンセントへと振り抜こうとするもヴィンセントの身体の動きから、飛んで避けられることは読んでいる


〈バチチッ!!〉


ベイカーの光る三つ編みの先はミザリーのもの同様に手の形を模している


その手で地面を引っ掻くように削るとブワッと砂埃を巻き上げさせる


月明かりのみの薄暗い山道

そこに砂埃まで巻き上がれば目を閉じずとも、視界は奪ったも同然


とベイカーの思った通り、ヴィンセントは視界を確保するため

そして砂埃に紛れての奇襲を避けるために急激に高度をあげた


「目くらましに紛れるつもりだろうがそうは…」


ヴィンセントが周囲に目を走らせる


一瞬の隙をつかれベイカーを見失ったのだ


解除したのか、先程まで目を引いていた光る三つ編みの灯りも見えない


「逃げたか…?」


隙をついてメルファ奪取に向かうという可能性は充分にある

逆の立場であれば交戦する意味もなく、悪戯に時間を浪費するならば切り抜けてメルファに向かうのは容易に想像できる


その思考がヴィンセントにその場にはもうベイカーがいないと誤認識させてしまった


真下ではなくベイカーの行く先であろう山道の先に視線を向けた


その時


〈キィンッッ!!〉


鉄で鉄を引っ掻くような音が闇を割いた


〈ズシャッ!!!〉


音に反応するも避けこと適わず、それと同時にヴィンセントの翼が弾ける


「ぐぅっ!?…なんだ!?」


見れば翼に穴が空いてしまっている

硬い羽根で構築されているはずの翼を何かで撃ち抜かれたのだ


「(硬質の翼が!?なにをした…!?)」


不意の奇襲、身体にダメージはなくとも翼の損傷に堪らずバランスを崩し高度を落としていく


「よう、一大事だな」


ハッ!と声のした方へ目を向けると大木の枝の上にベイカーの姿を見つけた


やはりこの場を去ってはいなかった


ということは先程の攻撃のためにベイカーは身を潜めたのだ


そして


体勢を立て直そうとするヴィンセントの元へベイカーが飛び込んでくる


手に剣を握りそれを、思い切り振り下ろす


〈ゴシャァ!!〉


痛手を負った翼へ狙いをつけて一撃を叩き込む


「貴様っ!!なんのつもりだっ!!」


「少し静かにしてもらいたいだけさ!」


〈ズシャッッッ…〉


落下の勢いを乗せ、ベイカーの剣はそのままヴィンセントを地へ叩き伏せた


片翼の翼は甚大なダメージを受けているもののヴィンセント自体にはそこまでのダメージが通ってはいない


それもそのはず、ベイカーは刃ではなく峰でヴィンセントを叩き伏せたのだ


いわば手心を加えたようなもの

それはヴィンセントの苛立ちを呼び起こしはしたものの、悪魔化を解かせ無力化にはどうやら成功したようだった


「…手加減したのか?…なぜだ?」


「あんたと違って俺に殺す気はない、だが邪魔をさせる気もない。羽根がなきゃ、攻撃も追跡もできないだろ?」


「…後悔するぞ…お前がしているのは無駄なことだとすぐに気付く」


「無駄?なんのことだ?…いや、悪いけどそんな暇もないんだ。あんたもイグリゴリらに見つかんないようにするんだな」


気になることではあるが、今は優先すべきことが明確にある

ベイカーは山道に目を向けると足早に進み出した


十数分のタイムロスは痛い

背後にも注意をはかっていたが、ヴィンセントにはもう襲ってくる気力はないようだ


それを察するとベイカーは剣を肩にかけ脚を早めた


短時間とはいえ戦闘行動を行ったことへの不安はあるが、結局は追うしかできない


せめて極力静かに、尚且つ素早くだ


つつ、と頬に汗が流れるのを感じながらベイカーは祈った


「(頼む…間に合ってくれよっ…)」




_______________


# メルファ サイド


「はぁっ…どこまで行くんだよ…?」


と言ってももちろん答えてはくれないイグリゴリの団員らに連れられメルファは山道を登り続けていた


獣道ではないにしても、なかなかの傾斜を歩き続ければもちろん疲労が溜まるのは否めない


息切れを多少大袈裟にしつつ膝に手を置けば、やれやれと言ったふうに引率するイグリゴリも歩を緩める


「(よし、少しは時間が稼げるか…)」


疲労があるのは事実だが、大袈裟なのはもちろんメルファの演技だ


ナルスダリアの口ぶりから、何らかの考えがあるのだと推測したメルファ


「(…女王様の言い方だと、大人しく連れて行かれる必要があった。というか、多分副団長から引き離すためだ…そのために女王様は副団長をあそこで足止めしてる。だとしたら次は…女王様が副団長を振り切ってアタシに接触を図る?か?多分、連れていかれてる間に得た情報が欲しいはず…アタシもそれを伝えたいし…それとも…)」


すっと来た道を振り返る


月明かりがあるとはいえ道中は暗く静かだ

その道を駆けてくる者の姿は見えない


「(いるのか…?)」


メルファが真っ暗な道に目を凝らした

思い描いた姿こそ見えなかったが

その時、何かが動いたのが見えた


しかし何かまでは分からない


黒の中で黒が動いたようなもので気のせいかとも思ったが、急激にその何かがこちらに向かって飛んできた


「な、なんだ!?」


メルファの傍を通り抜けたその黒い影は突っ込むようにイグリゴリらに飛び込んでいった


〈ズシャッ!!ズザッ!〉


風に逸らした目を背後に向けようとすると削るような音がいくつか聞こえてきた


「えっ?」


メルファを引き連れていたイグリゴリら3人が膝を付きバタバタと倒れる


揺れる月明かりの光が届いたその足元には幾つもの飛び散った血痕がしとやかに地面を染めていた


その中に惨状を思わせぬほど静かに立っていたそれは、飛び込んできたその影は


片翼の翼をたたえた人型の悪魔だった


「殺したのか…?なんで、お前…イグリゴリじゃないのか?」


不気味な雰囲気にやや押されながらもメルファが尋ねる


〈ザッ〉


静かにそれはメルファに歩み寄ると


〈ガッ!〉


とメルファの首を絞め、そのまま身体を持ち上げた


「ぐっっ!…ぅぅ」


強い力で首を圧迫され、苦痛に顔を歪めるメルファ


「イグリゴリなどと…呼ばないでもらおうか」


静かな怒りを孕んだ声、どこかで聞いた声


しかしこんな状況では冷静に思い出すこともできない


息を吐くことはできても吸うことができない


顔に血が上る、目に涙が溢れてくる

メルファは声にならない声で、呼んだ


メルファの唯一の味方の名を


「ィ…ァ…」



その声は夜に掠れ、紛れ、誰の耳に届くでもないかと思われた



〈ギィィンッ!!〉



細い金属音のような音が鳴り響く


そして直後


〈ドシャッ!!〉


と片翼の悪魔の翼に穴が空く


「な、なに!」


衝撃にメルファの首から手が離れる


〈ドサッ〉


と地面に膝を付く形で落とされはしたが鈍い首の圧迫からは逃れられた


「かはっ…かっ、はぁ…はぁ…な、なにが?」


メルファが涙で滲む目を、音の鳴った方へ向ける


そこには


「…ベイカー…?」


赤毛の青年が、大型拳銃を手にゆっくりと歩いてきていた


「メルファ!大丈夫か?」


「なんで、ここに…?」


「なんでってこたないだろ」


「え?」


「まだ仕事の途中だ。投げ出すなんてさせやしないぜ」


「…でも、あんたの幼なじみを拐ったのは

…」


「メルファじゃない。だろ?」


ミザリーを拐ったのはメルファの父率いるエグリゴリであっても、そこにメルファの意思は無い


だからそれに対してメルファが引け目を感じたり罪悪感を覚える必要はないと、そう言いたいのだ


「…ま、話は後だ。どうやらお客さんはまだ元気みたいだ」


ベイカーの言う通り、片翼の悪魔


先程交戦したのがヴィンセントだったということはこちらは


「ディルミリアだったか?ヴィンセントは無力化した。これ以上やっても無駄だ。」


「…殺したのか?」


睨むような鋭い光を向けながらディルミリアが尋ねる


「いや、今のあんたみたいに翼を撃ち抜いて一発殴らせてもらっただけさ。悪魔の回復力があればなんてことはないだろ」


ベイカーの返事を聞くと、ゆっくり立ち上がる

まだ戦意はあると見えるが


「まだやる気か?」


ベイカーはメルファを庇うように前に回り込む


「…べ、ベイカー…アタシは…やっぱり…」


まだ迷いがあるのかメルファがか細い声をあげる


「…俺がそれを決めさせたんだ。」


「え?」


「俺がイグリゴリに負けたから、俺を助けるためにメルファはイグリゴリについて行った。


メルファが本当に心から決めたことじゃない。だから、今度はメルファ…君の意思で、心で決めろ。


君が心で決めた事ならイグリゴリについて行くことも俺は止めやしない、でもそうじゃないだろ?」


振り向いたベイカーと目が合ったとき、微かにメルファの瞳が揺れる


「メルファ、君はどうしたい?

どこに行きたい?なにをしたい?


君が心からの気持ちで決めたことなら、俺がその心を守ってやる!」


「…ベイカー…はは、急に言われても決めらんねぇよ…ちょっと考えさせてくれよ」


涙で滲んでいることをベイカーは気づいてはいないが、それでもメルファが微笑んだことは分かる、それを答えとして受け入れることもできた


「ふ、ふざけるなよ…お前には自由なんてやらない。」


怒気を孕みディルミリアがこちらに歩み寄る


「それはお前の決めることじゃない。…なんでメルファを狙う?」


「簡単なことだ!イグリゴリが目下、ナルスダリア陛下の障害だ!そのイグリゴリの頭目の娘なんだろ!その娘を餌にすればディエゴ・エルゲイトはおびき寄せることが出来る、殺せるんだ!」


「…だからメルファを…?ふざけるなよ、人の命を国の為の犠牲にするなんてナルスダリアが認めるはずない。そんな考え自体ナルスダリアが軽蔑するってことぐらいアンタらなら分かってるだろ!」


「分かってるさ!覚悟の上だ!だがそれでも陛下が覇道を行くためなら我らは泥を被り茨の道も喜んで這って進もう…それに


その娘なら構わないだろう、せめて尽きる前に国の為になれれば生きた証とできるではないか」


ディルミリアの言葉にメルファに明らかな動揺が走った


「…どういうことだよ?」


「は?…ははは…なんだ知らなかったのか?その女はなぁ…」


メルファの瞳が揺らぎ動揺が表れる


「知ってるのか…アタシのこと…やめろっ!言うなっ!」


ディルミリアの言葉をメルファが遮ろうとするが


「その女はな!〈代魔病〉なんだよ!」


ディルミリアは叫んだ


「…代魔病…?なんだよそれ…」


ベイカーの問いにメルファは、俯き自らの上着の襟元を強く掴むだけだった


「…アンタの口から聞くことじゃなさそうだ。第一俺の目的は遂げてんだ、悪いけど引かせてもらう」


ベイカーは懐から大型拳銃ジャックローズの弾丸を取り出すと、手早くそれを弾倉に込めた


実は先程まで、ジャックローズの弾丸を通常使用している「タッチファイヤ」着弾と同時に極小規模の爆発を起こす弾丸から、「スコーピオン」に変更していた


ヴァレリ兄弟の翼の外殻の硬さを見ての変更だった


「スコーピオン」は弾速が速く貫通性に優れ、硬い外殻相手でも有効な弾丸


それを再び「タッチファイヤ」に戻すのにも理由があった


極小規模とはいえ爆発を起こす弾丸であるがゆえ、隠密行動とは程遠い

しかし「合図」としては有用できる


ベイカーはそれを遠くの地面に向けて連射した


〈ドゥオン!!ドゥオン!ドゥオン!!〉


と山中に独特な発砲音が響く


ナルスダリアへの合図だ


メルファを奪取したとの



「さて、このままここにいたらイグリゴリの連中も、ナルスダリアも来るかもな。本意じゃないだろ?…退けよ」


ディルミリアはベイカーをしばし睨んでいたが


やがてバッと踵を返し、闇夜の空に紛れ消えて行った



「俺達も行こう、メルファ。」


いまだ縮こまっているメルファの手を掴むと

ベイカーはどんどんと山道の中へと入っていく


「とにかくノーズヘッドから離れよう、イグリゴリらに追いつかれたら厄介だ」


「あ、あぁ…」


力ないメルファの様子

ベイカーはディルミリアの言った「代魔病」という言葉が引っかかっていた


メルファの様子もそれが起因していることは間違いないが今はそれよりも安全を確保することが優先事項だ


極力、痕跡を残さないように尚且つ素早く

ベイカーはメルファの手を引き山を下っていった



_______________


同刻


ノーズヘッド


ナルスダリアとイグリゴリ副団長ジャープによる一騎打ち


もとい、ナルスダリアによるジャープの足止めが行われているここノーズヘッド


例によって悪魔と化したジャープの力は、やはり団員らとは一線を画している


画しているのだが、それでもその手にした巨大な鉈はいまだナルスダリアの身に触れることはできていたかった


〈ブォンッ!!〉


と振られた鉈を、もう何度目の回避かもわからぬが跳び交わすナルスダリア


「ふぅ…さすがに、腕が立つな副団長。冷や汗が止まらないよ」


「ぬかせ、躱すことに従事していているとはいえ一太刀も入れられぬとは屈辱だ。なぜ…攻撃してこない?」


「何度も言っているだろう、私は、バリオール奏国はイグリゴリへの弁済を行う責任がある。貴公らを打ち伏せることがしたい訳では無いが、今対話をしてくれるわけでもないときた。」


「…なんだと、ではなぜ私を戦いに…まさか!」


ジャープがある考えに行き着いた時


〈ドゥオン!…ドゥオン!…〉


遠くから銃声がこだましながら聞こえてきた


「なんだ、この音は…?」


ジャープが周囲を見回す

しかしイグリゴリの団員らも状況がわからないように首を横に振る


「どうやらここまでのようだ。貴公ももはや私に構っている場合ではないだろう?」


「貴様!足止めだったのか…だとすればメルファの元へは…あの小僧か!?」


「さぁ、どうかな?」


ナルスダリアを睨むジャープ

その頭の中では彼の中における優先順位を探っているように見える


「…追え!奴に地の利はない、まだ間に合うはずだ。」


ひとまず指示を出した所を見ると、メルファを諦めるつもりはなさそうであるが


「ナルスダリア…もはや国王だとしても我らの障害となるのならば、ここでうち伏せておくのもやむを得ない」


ナルスダリアを捨ておいて、という選択ではない


ジャープが再びナルスダリアへ向かい敵意を迸らせる


「甘く見られたものだなと、こちらも気概を見せてやりたいところだが…彼らが貴公らの追跡を振り切るためには私が手を貸す必要があると見る。つまり…」


「逃がすと思うか…?」


「逃げるという選択ではない、そして貴公にも逃がさないという選択をとることはできない。」


〈ヒュッ!!〉


ナルスダリアが鞭を振るうと、足元の地面を叩きつけた


「また会おう。ジャープ副団長、次はディエゴ団長にもお目通り願うと伝えておいて貰おう…マカブル」


〈ドプンッ〉


途端にナルスダリアの足元の影が水しぶきのように跳ね上がりナルスダリアを包んだ


「なにっ!?」


そしてその影の水しぶきが地に落ちたそこにはもう、ナルスダリアの姿はなかった




_______________


ベイカーがメルファと共に山を下り始めて30分ほども立ったころ


周囲にイグリゴリらの追跡の気配はなく、走り詰めだったことから


ベイカーはメルファを気遣い、木陰に紛れ休憩することにしていた


お互いに息を整え、夜の沈黙にしばし浸って数分もそのままの時間が流れた



「ベイカー……気になるか?」


ふと、メルファがベイカーに問いかけた


「ああ…〈代魔病〉って…なんなんだ?」


それはディルミリアが言った言葉

話の流れから解釈するにメルファがその〈代魔病〉というものにかかっている


そういう旨の発言ではあったが、ベイカーの耳にはその代魔病という病に聞き覚えがなかった


「…代魔病ってのは…フェンリルに選ばれる気になってた…バカな人間の業さ」


「フェンリルに…?」


「…アタシはさ、一応語り手の末裔って奴で…お母さんは一度はフェンリルにも選ばれてたんだ」


「そこまではなんとなく理解できるさ…じゃぁ君の母親はフェンリルをずっと継いでた…」


ふるふるとメルファは首を横に振った


「一瞬だけさ、すぐにフェンリルは離れていっちまったんだ。」


「…」


ベイカーの頭に過ぎったのは、恩師でありミザリーの母親でもあるアリス・リードウェイ


最後にフェンリルを継承したのがアリスだ


惰性とも言える慣習で継承され続けていたとされる歴史の中、唯一フェンリルが自発的に選んだと見られたのがアリスだった


アリスが選ばれた際、既に継承されていた女性からフェンリルは抜け出したとされる


その女性がメルファの母親

ルシア・エルゲイトということだった


「そんでさ。代魔病ってのはさ、語り手の中に稀に表れる病気。悪魔であるフェンリルに選ばれるために


人の身体、その内側が魔力に変わっていく病気なんだよ。」


「人の身体の、内側…?それって…内臓のことか?魔力に変わるって…そんなの…!?」


無事で済むはずがない

その発言を遮るように蘇った記憶はメルファと初めて会った日のことだった


あの日メルファは突然、尋常でない苦しみ方をし倒れた


あれも〈代魔病〉の影響だったということなのかと思い当たったのだ


「内側から徐々にな、馬鹿だよな…継承する器としてオススメですよって、自分の身体を魔力に変えるなんてさ。そうまでしてフェンリルに選ばれたかった人間が自分勝手な進化してんだぜ?」


「選ばれなかったら…代魔病にかかった人は…メルファはどうなる…?」


思慮深く聡明でもあるベイカーは自身でもその答えを想像できていた


聞けないと思ってはいても、想像と違う答えが聞ければと一縷の望みを込めた問いにメルファは応えた


「…魔力になった内臓とかはさ、魔力が補填しようとしてくれてんのか。完全に機能しないわけじゃないんだ…でも魔力である部分が増えていくと人間の身体がそれを維持できなくなっちまう。そうなると魔力が急速に人の部分を食っちまう


全部が魔力になって消えちまう


ってことらしい」


「……いつからそんな状態になってたんだ?」


ベイカーは気丈に振る舞いたかった

それでも声の端が微かに震えてしまう


「代魔病は15歳の頃から発病し始めるんだってさ。過去にいくつも前例はあったけど発症時期は皆同じ歳頃だって話だ」


「それって…君が村を飛び出した頃…」


ベイカーの目頭が熱くなる

つまり、メルファはその代魔病を抱えながら1人で生きてきたということだ


「…アタシの母さんはさ。一度フェンリルに選ばれて、そんときはもう皆が真綿のように扱って、丁重に丁重にされてたんだってさ。でもすぐフェンリルが母さんから離れてった。


そしたら薄情なもんでさ、みんな手の平返して母さんを王都から追い出した。


父さんも母さんも、そりゃ受け入れられなくて納得できなくて悔しい思いし続けてた。


でも、アタシを授かってからはもうそんなのどうでもよくなったんだって


フェンリルよりも大切なものを授かれたって、自分らが迫害されたことも忘れたんだってさ。」


哀しそうな顔のまま、それでもその話を聞いた時のことを思い出したのかメルファは少し笑った


「慎ましい暮らしだったけど、アタシが少しずつ大きくなって成長を見守ることが嬉しかったんだって。


それなのにさ、母さんが一度フェンリルを継承していたってのがここで変に裏目に出ちまったんだ」


ふぅ、と小さく息を吐くメルファ


「フェンリルを継承すんのに遺伝的な面があるのか、アタシの遺伝子はフェンリルを継承する気満々で〈代魔病〉を呼び寄せちまった。


そんで…そこからが悪夢さ


発症して少しした頃、母さんは心労が祟って病で亡くなっちゃって


父さんも唯一の娘であるアタシをなんとか助けようと寝る間も惜しんで治療法を捜して駆けずり回った」


「…君のせいじゃない…」


ベイカーはすぐに発言を悔いた

そんな言葉がなんの慰めにもならないこともわかってるはずなのに、それでも何かを言葉にしたかった


「へへ…でもさ、日が経つにつれ父さんはやつれていく。本なんかもう何冊読んでたのか分かんないくらい、治療法を探しまくって…アタシなんかよりずっと、ずっと辛くて苦しそうだった。


アタシはそんな姿見るのが辛くて…父さんにはそんな日々捨てて幸せになって欲しくて


馬鹿だから…どうすればいいのか必死に足りない頭で考えて考えて


そんで結局出た答えが、アタシが居なくなればいいんだって」


「それで村を飛び出した…」



「うん。父さんに見つかんないようにさ、治療法を探しに遠出するって言った日に合わせて村を抜けて、そこからは出来るだけ遠くで、細々と生きて…今に至るって訳さ」



「大変だったろ…そんな端折るなよ」


「同情して欲しい訳じゃないからな。…なんだよ?泣きそうな顔しちゃって」


「泣くかよ…俺が泣いてる場合じゃない。…治療法は、ないのか?」


「…身体が魔力に変わって、死んじまうのはそれを抑制する力がないからさ。だからフェンリルを継承できれば死ぬことはないんだってさ。」


「…まさか?だから君の父さんはミザを…!?」


「…え?で、でもアタシが生きてるなんてジャープ副団長が報告するまで知らなかったはずだ。どこかで生きてるかも知れないって予測でそんなことするか…?」


「そうか、7年…諦めるには短い歳月かもしれないけど、タイミングがズレてる。だとしたらその理由がまた別にある」


イグリゴリの団長ディエゴ・エルゲイト

ミザリーを奪った理由がメルファの〈代魔病〉を治療の為なのか


だがその真偽よりも、ベイカーにはある推測が浮かび上がる


「フェンリルの力…だとすればメルファ…やっぱりミザを奪り返そう」


ばっと思わずメルファの両肩に手をおく


メルファは驚いた顔をしつつもベイカーの言葉を待つ


「ミザはフェンリルを継いでるって訳じゃない、それでもフェンリルの力をフェンリルそのものと同等に扱えるんだ。その力には〈変質〉させられる魔力がある。恐らくそれが代魔病を抑える要因になってる、なら!


もしかすれば君の代魔病を治す力になるかもしれない」


ベイカーの言葉にメルファの表情が固まった

と思えば両目がふと揺れ始める


「…ホントか?」


「可能性があるって域を出ないけどな。やってみる価値は十分にある…ミザは必ず手を貸してくれる」


「…可能性なんて…ただこのまま、蝕まれて死んでいくだけかと思ってた。なのに…治るかもしれないって思えるのか、思って…いいのか」


メルファの口の端が震える

「治るかも」と、可能性ですら口に出せずにいたこれまでがどれだけ長い月日であったかを示すように


「君の父親が仮にメルファの為にミザを奪ったとしても、今ミザよりもフェンリルの力を上手く使える者なんて存在しない。…まぁ結局は当初の目的に戻る訳だ」


「ホントだな…そういえばさ。ジャープ副団長が言ってたんだ「あの娘は人形」だって…あれってどういう意味なんだ?」


「そうだな…ちょっと込み入った話になるけど必要な話か。メルファも充分に関係しているしミザのことも君には知って欲しい…話すよ」



ベイカーは、ミザリーの辿ってきた道筋を

共に歩いた者としての視点を交えながら


その壮絶な過去をメルファに話して聞かせた


食い入るように話を聞いていたメルファ

その話が3年前、約束を交わした日にまで辿り着くと


「ふぁぁ!とんでもねぇなぁ…なんか信じらんないような話だけど、ベイカーが嘘つくような奴じゃないことと今のアタシの身の上とかを踏まえると…全部ホントなんだな」


「俺にとっちゃ…2人とも強い子だよ。比べる訳じゃないけど、似てる気がすんのはそういう境遇があっても前に進んでる姿を見てるからかもな」


「そうだな…なぁベイカー。」


「ん?なんだ?」


「アタシはフェンリルも、アリスさんも、ミザリーも、恨んじゃいない。〈代魔病〉なんてのはたまたまアタシが貧乏くじ引いちまっただけだ。」


「メルファ…」


メルファなりの気遣い、口にする必要などないことではあるが

それをあえて口にすることで


ベイカーと関わりの深いミザリーやアリスを怨恨の対象とみていないとしっかり認識させたかったのだろう


「ああ、ありがとう。さ、話たいことはまだあるだろうけど今は山を抜けよう…そうだ」


「なん?」


「ナルスダリアが言ってたんだ、合言葉を口にしろってさ。落ち合う合図になるって」


「…へ、それがこの状況をどうにかできるってこと?」


「まぁ適当なこと言うような人じゃないし一応な。っと」


ベイカーは指の背を少し噛んだ

微かに血が滲み出す


それをピッと地に投げると合図を口にした


「…マカブル」


「変なの」


合言葉に茶々を入れるメルファを一瞥していると


足元の影が急激に、不自然に広がり始まる


すぐに10mを超えるほどの影がまるで水溜まりのように波打ちだす


「わっ!」


メルファとベイカーは思わず後ずさりする


そのとき


〈ズァッ!!〉と


その影の水溜まりから何かが飛び出してきた


前脚のようなものがせりだし、なにやら顔の様なものが巨大な口を開きながら現れる


全貌がでてこそいないがその姿は


「…ワニ…?か?」


どうなら巨大なワニの悪魔らしかった

10m超の影たまりから頭部と前脚しか出ていないことから全長は20mをゆうに越すと見える


「…な、なぁ?まさかと思うけど…ナルスダリアか…?」


「なわけないだろ…」


「だ、だよな?」


優雅に堂々に歩くナルスダリアの姿と目の前に佇む巨大なワニはどう考えても重ならない、しかしナルスダリアも只者ではないと理解しているが為の誤解


「じゃぁ…ナルスダリアの所へ、案内してくれるのか?頼めるか?」


「うわぁ…ワニに話しかけてるよこの人…」


「うるさいな…こういうのとは何度か出くわしてるんだ、それにナルスダリアが遣わしてるってことも」


〈グワッ!!〉


途端にワニが巨大な口を開いた


「あんぎゃぁーっ!!」


追われている立場も忘れてメルファが叫ぶ


その口の中には闇が広がり、生物の口内とは思えない不思議な気配を感じる


「喰う気か…このワニ…」


と思ったがそのまま大口を広げた状態でピクリともしない

もちろんベイカーらの呼び掛けに返事する訳でもない


敵意は見られない、ということは


「口の中に入れってことか?」


「嘘だろ!…え、マジ?」


「あんまり気分の良い行為じゃないけど…」


などとベイカーらが躊躇っているとその耳に微かに音が聞こえてきた


人の走る音、それも一つや二つではない


イグリゴリらの団員ということは容易に想像がつく


先程のメルファの叫びが引き寄せてしまったのだろう


「メルファ…」


「すません…自分先に入りましょうか?ベイカーさん」


引け目を感じたのか、しおらしくメルファが腰を低くする


「同時に行こう、それで恨みっこなしだ」


覚悟を決めた2人は少し息を整えると


「行くぞ!せぇのっ!」


ベイカーの合図で、同時にそのワニの口の中に飛び込んだ


2人がワニの口内に着地すると同時に、そのワニの悪魔は口を閉じると



そのまま影溜まりの中に


〈ドプンッ〉


と身を落としていった



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