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六話

「何をしているんですか?」


 翌日の朝、昨日と同じようにシクレが寮の部屋に訪れる。


「また何のようですか?」


 欠伸を吐きながら部屋に招き入れるクライシス。

 外で立ちっぱなしにするのも何だし詳しい話は中に入ってしようと考えていた。


「これです」


 そう言ってシクレが見せたのは昨日、事務所から出てダンジョンで行動していた時の動画。

 こうして客観的に見ると変な笑い声が出てしまいそうになる。


「こういうのはちゃんと配信でやってください!罰として今日も配信します。一緒にダンジョンに挑みましょう!」


「二人でですか?」


「はい!」


 二人で挑むのかと確認したら、まさか頷かれて内心驚くクライシス。

 だが本人が良いのなら、それで良いやとスルーして頷く。

 取り敢えずは学園に行かなきゃと憂鬱に思いながら支度を始めていた。



「はぁ……」


「どうしましたか?」


「やっぱ学園に行くのメンドイです」


「それでも学生である以上は行かないといけないんですから頑張りましょう」


「………はい」


 いざ学園に通うとシクレが学園に通うのが面倒だと言うクライシスを隣で宥めながら一緒に歩いている。

 クライシスはそのことには一切触れずに流しているが、いつもと違って視線が集まっているのは彼女のせいだろうなと思っていた。


「なぁ!ちょっと良いか!?」


「何でしょうか?」


「これってお前だよな!?」


 テンション高く見せてきたのはシクレにも見せられた動画。

 それに対してクライシスは似た動画ではないかしっかりと確認して頷く。


「だよな!どうしたら同い年なのにこんなに強くなれるんだ!?」


「は?鍛えろ」


 何を当たり前のことを聞いてくるんだと少し苛立ちを覚える。

 むしろ己を鍛える以外に強くなる方法があるのかと逆に疑問だ。


「いや鍛えるって」


「逆にそれ以外で自分が強くなる方法があるのかよ?あったら俺が知りたいんだけど?」


「……ほらクスリとか」


「あれって強くなれんの?使った後は結局、弱くなる話しか聞いたことが無いんだけど?」


「…………たしかに」


 バカみたいな答えに欠点を指摘するクライシス。

 その反応に鍛えると言ったのも本気だったのだと理解させられる。

 一時的にしか強くなれないし使った結果が逆に弱くなってしまうから嫌っていそうにも感じる。


「そもそもクスリって使い続けないと効果が発揮できないしデメリットがでかすぎない?毎日クスリを飲まないといけないとか。一度でも忘れたらどうなるんだよ?」


「そりゃ話によく聞く廃人とかじゃないか?」


「二人共、何でクスリについて話し合っているんですか?怪しい目で見られていますよ」


「?シクレさんのせいじゃなくて?」


「ん?」


「マジだ。なんか警備さんたちに凄い目で見られている」


 クスリについて盛り上がっているとシクレに止められてしまう。

 怪しい目で見られている理由はシクレじゃないかと言い返されるが見当違いのそれにシクレは苛立ちを覚える。

 そして警備員の大人たちが近づいて来てクライシス以外の二人は慌ててしまう。


「えっ、こっちに来てませんか?」


「やばっ。えっ、マジでヤバい!」


「………?」


 二人が慌てている理由が分からずに眺めているクライシス。

 何も悪いことはしてないのだから何で慌てているのが全く理解できない。

 そうしていると大人たちが集まってくる。


「すまないけどクスリのことを話していなかった?」


「?はい。何でリスクがでかいのに使うんだろうって話し合っていました」


「あぁ、なるほど。念のために質問するがクスリはしてないよね?」


「そもそも買える場所があるんですかクスリって?」


「………今まで誘われたり見たことがないのかい?」


「?」


 そんな機会があるのかと視線で問いかけてくるクライシスに警備員さんは警戒のし過ぎかと理解する。

 そもそも入手方法がわからないんじゃ手に入ることもないし、この様子だと使う気も無いのだろう。

 ただ危険性も理解できているか怪しいので学園にクスリの危険性についての講義をする必要性があると判断していた。


「一応言っておくけどクスリは凶暴性を増して無闇に暴れるからね。他人に迷惑をかけたくないなら使わないように」


「無闇に……ね」


 自分がそうなったらと思うとものすごくダサく感じる。

 それに普段が知的に戦う者がそれを失われるのは勿体ない。


「なんだ?興味が沸いたのか?」


「いや、すごくダサく感じて」


「昨日配信で暴れるの好きって言ってなかったか?」


「好きだけど自分の意志で暴れるのが好きなのであってクスリが理由で暴れるのは面白くなさそう」


 暴れたときを想像しているのか本当に嫌そうだ。

 きっと際限なく暴れても物足りなくなるのだろう。


「確認ですけどクスリで暴れても苛立ちとかは解決しないんですよね?」


「そうだ」


「なら良いや。暴れている間が楽しいのに、それが失われるなんて冗談じゃない」


「これ以上は遅刻しますので!」


 警備員はこの子クスリ自体はしていないんだけど危険じゃないかと目を鋭くさせる。

 そんな警備員を見てシクレはこれ以上はマズイと思い、二人で腕を引っ張ってクライシスを学園へと連れて逃げて行った。

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