五十四話
「あっ、おはよう」
「おはよう。昨日、言ってたように来週の週明けに配信するから」
「おう。皆にも伝えておく」
翌日、学園の教室で配信の予定日をクライシスは口にする。
それを聞いたクラスメイトも頷いて他の皆にも伝えようと決める。
「それと今日も精神訓練をするから」
「マジで!?わかった!」
更に続けられた言葉にクラスメイトは喜び、早速他の皆にも伝えようと動き始める。
近くにいて話が聞こえていた他のクラスメイトたちも今日は訓練かと喜ぶ。
「…………喜ぶのか」
その反応に微妙な表情を浮かべる。
強制ではないし自分の意志で来ていて不満の声を上げるのなら来るなとは思うが、喜ばれるのも微妙な気分になってしまう。
「そういえば先生も来るのか?」
前回は来ていた。
それで本当に強くなれるのか実践したいというようなことも言っていたし、もしかしたら来る可能性もある。
そのことを考えるとやはり先生相手にも鍛えるというのは、やりにくいし抵抗感がある。
「あれ?そういえば先生は来るの?」
「どうだろう?多分来るんじゃないか?」
「えぇ〜」
一人が先生も来るのかと確認してくる。
そのことに多分と頷くと微妙に嫌そうな表情を浮かべる。
やはり先生がいると生徒たちもやりにくいのかもしれない。
訓練にも悪影響が出そうだし先生たちは遠慮するべきかもしれない。
「先生に関しては拒絶するしかないか……」
「?なんか言った?」
「何でも」
先生に関しては参加を拒否させてもらおうとクライシスは考える。
どうしても参加したいのなら生徒とは別、もしくは離れたところで見えないようにだ。
生徒たちが見たいのなら隠れたところで見てほしい。
「なにか困ってたら頼ってくれよ?いつも俺たちのために時間を使ってくれるんだし」
「わかってる。その時になったら頼る」
もし拒否をするのなら暴力を使って分からせればよいとクライシスは想像する。
その場合の最高は何でも言いなりにさせることかもしれない。
「まぁ良いや。ちょっと職員室に行ってくる」
「………まぁ良いやって。なんか誤魔化そうとしてないか?それに職員室に何しに行くんだよ」
「ちょっと頼みたいことがあるからお願いしに行く」
「頼みたいこと?」
「気にしなくて大丈夫。それじゃ」
「ちょっ!?」
気になることを口にするが聞かれるよりも先にクライシスは教室から出ていく。
それが少しだけクラスメイトは悔しく感じた。
「すいません。実技の先生とか……いた!」
「あれ?クライシス君、どうした?もしかしてダメだったか?」
職員室に入ると早速見つけるクライシス。
先生たちも手招きをしていてクライシスも寄って行く。
「いえ配信した時に姿を映っても問題ないそうです」
「そうか。それは良かった。わざわざ教えてくれて助かる」
「いえ。そんなことより次から先生は精神訓練に参加する時は見えないところでやってもらっても良いでしょうか?生徒たちも気になるので」
「え?……いや別に構わないだろ?」
「生徒たちがやりにくそうにしてたので。どういう訓練か興味があるなら隠れて見てください」
「どうしてもか?」
「どうしてもです」
「………むしろ、そのやりにくさが訓練にならないか?」
「前回はあまりにも集中できていなかったのでダメです」
「教師だぞ」
「だから生徒は言いなりになれと?」
教師だからと生徒であるクライシスに自分の指示に従わせようとするが反抗されてしまう。
そのことに他の教師たちも反抗するクライシスに厳しい目を向けてしまう。
生徒なんだから少しは教師たちである自分たちに従えと思う。
普段は誰が教えてやっているんだと思っているのかと言いたい。
「ははっ。それとも力づくで俺を従えてみますかぁ?別に俺はそれでも構いませんよぉ?」
そんな言葉が聞こえると背筋に冷たいものが奔る先生たち。
何が原因なのか理解していて、その原因に全員が警戒態勢をとる。
「おっそいなぁ?」
「「「「!?」」」」
その中でも一番強そうな教師に後ろから肩を組む。
目を見開いている教師たちにつまらなそうな表情を少しだけ浮かべるクライシス。
それでも結構な数の教師たちがいるし全員を同時に相手をするなら楽しめそうだと想像する。
「あっ、そうだ!一緒に鍛えられるということは仲間意識が芽生えて普段の授業でも舐められらません?それが嫌なら一緒に鍛えられるのは止めたらどうだ?それでも良いと言うのなら力づくで従わてみたらどうだ?」
この場にいる教師たちと戦うことを想像して嗤うクライシス。
生徒たちよりは強いだろうから期待できそうだと考えている。
「「「「………」」」」
そして先生たちはクライシスに警戒するが出された意見に対して考え顔を見合わせる。
たしかに出された意見の可能性はある。
それにクライシスと戦っても特にメリットはない。
勝てるかはかなり難しいと思うし、勝てても従うようになるとは思えない。
むしろリベンジに熱中して今している訓練も教師たちに勝つために投げ捨てそうだ。
「そうだな。君の言うとおりだ。離れて様子を見てみよう」
降参だと手を上げながら言われた言葉にクライシスは残念そうな表情を浮かべて職員室から出ていった。




