五十二話
「というわけで夏休みの宿題を皆でやらないか?」
「良いですよ」
「配信のネタにもなるし良いかもな」
「面白そうですね。内容はちょっとアレですけど」
翌日、早速事務所の配信者を集めて提案する。
その結果、全員が頷くことになった。
「それで、どうやって調べるんだ?人に聞くにしても過去のことは話したくない人もいるだろうし」
「基本はネットじゃない?色々と情報はあるし」
「ネットだけで調べても嘘の情報じゃないかと疑われるしなぁ」
「クライシスくんはどう思う?」
「ネットは事実を調べれば良いと思いますよ。探せばイジメが原因の自殺とか誰の見解なのか書いているのもあるでしょうし。ぞれにイジメなんて話したがらないって最初に注意書きでもすれば良いと思います」
まぁ、そうだよなと頷く配信者たち。
基本はネットで調べるしかないだろう。
「あとイジメはヤッている本人がこの程度でイジメだとは思わないのもいそうですからね。ただからかっただけだって言って」
「………やっぱりいじめられてました?」
「………多分?まぁ男の維持……、やっぱりいじめられたで」
「あぁ、はい……」
クライシスの態度にイジメのことを話したがらないというのも納得できる配信者たち。
それなりに付き合いがあるし乗り越えたから話してくれたのかもしれないし、赤の他人が教えてくれるのは難しそうだと理解する。
「イジメの内容は容姿をからかったり。私物を隠されたり。投げて追わせたり。あと何の前触れもなく殴ったりしたな。それを見て笑っ「「「「やめろ!」」」」……そうやって聞きたくないと目を逸らすのも理由の一つ………。それぞれのイジメの見解を発表するのも良さそう」
「採用だけど止めてくれ。色々と精神的にキツイ」
クライシスの言葉を遮る配信者たち。
誰もが暗い表情をして沈んでいる。
「はぁ………。取り敢えず分かっている範囲でのイジメによる自殺者と相談の数を俺は調べますね。あとはイジメの原因とか内容でしょうか?………やりたくないならやらなくても良いですよ?」
「クライシス君はやるんですよね」
「夏休みの宿題にレポートがあるんですよね?なら丁度よいですし」
最初に提案されて頷いた理由を思い出す配信者たち。
夏休みの課題に丁度良いと頷いたのは自分たちだ。
あまりにも気楽に賛成したこともあって自責感で逃げることができなくなっている。
「いえ、やります」
「俺たちもだ」
一人がやると宣言すると他の配信者たちも頷く。
本人たちがそう言うのならまぁ良いかとクライシスは考える。
「そうですか……。ところで話は変えますけど先生から鍛えている姿も配信してくれと言われましたけど、その姿を配信する気はありますか?」
「また急に話しを変えてきたな」
「夏休みの宿題ということはまだまだ時間がありますし。それなら割と直ぐの問題も解決したいので」
「私は良いぜ!それでどんな鍛え方をするんだ!?」
「普段の鍛えている姿なので精神修行になりますね。かなり地味になる絵だと思います」
「組み手とかはしないのかよ?」
「普段から鍛えている時は組手をしていないので」
「配信である以上は見栄えも良くしないといけないから組手は絶対にする必要はあるだろ?」
「普段通りじゃなくても?」
「これから普段通りにすれば良いじゃん」
その提案に面倒そうな表情を浮かべるクライシス。
それにいつもの精神修行が終わった時の様子から動けないだろとも思っていた。
「何で嫌そうな顔?」
「いつも終わったあとの様子を見ているんだけど、あの後動けるの?」
「「「……………」」」
クライシスの確認に何人かは目を逸らす。
たしかに終わった後に組手をするのはキツイ。
「まぁ、配信を見ている人も説明するから同じことをしてくれと言えば大丈夫か?同じことをすればどれだけキツイかわかるだろうし。終わった後の様子を見れば、そこから組手は無理だと判断できるかも?」
「………そうだな」
クライシスの提案に今のところ、それしか無いと頷く配信者たち。
他にも良い案が思いついたら提案するつもりだ。
「それの配信はいつにするんでしょうか?」
「取り敢えず今週中にいつ配信するかどうか決めるつもりです。普段通りと言っていたから他の生徒も配信に映って良いのか確認したいですし」
「あぁ。そういえば色々と聞いていた人たちがいましたね」
あれはそういうことだったのかと納得する。
配信に映りたくない人もいるだろうから配慮するための確認だったのだろう。
そして配信に映って良い人たちだけで、どんな訓練をしているのか配信する予定だと想像できる。
「配信する日が決まったら教えてくれませんか?その日は俺も参加したいので」
「わかりました。決まり次第連絡します」
それで、もし誰も来なかったら自分だけでも参加しようと心に決めるヤーキ。
他の配信者たちも自分だけは絶対に参加してあげようと心に決めていた。




