四十三話
「ふっ!」
手にした剣をクライシスへと振り抜く。
それを当然のように掴まれてしまう。
「っ!?」
全力で掴まれた剣を引き抜く。
大した抵抗もなく引き抜かれたのは手加減されていることもあるのだろう。
「へぇ」
そのまま距離を取りながらクライシスの足元に魔法を放つ。
そして舞った煙に視界が塞がれたと一気に後ろへと回り込んで横切りを放つ。
「やっと工夫し始めたんだぁ」
だが、それも掴まれて止められてしまう。
視界が塞がれたはずなのに掴まれたことに疑問を持つが、そんなことは後回しだと更にそこから魔法を撃とうとする。
「えっ」
次の瞬間には浮遊感を味わっていた。
想像もしていなかった状況に頭が追いつかない。
「そのまま落ちたら終わりだなぁ?受け身をとったらどうだ?」
頭の中が真っ白なのに、そんな声がやけにハッキリと聞こえる。
そして言われたとおりに頭を抱えながら受け身を取りながら転がり立ち上がる。
「まさか自爆覚悟で魔法を撃ってくるとは少し驚いたなぁ」
自分の手は剣を持っている。
何が起きたのか理解できないが、まだまだ挑むことは出来る。
「それにしても何で自爆覚悟で魔法を撃ってくるやつがいるんだろうなぁ?もしかしたらノーダメで耐えられるかもしれないのに?……次はわざと受けてやろうかな?」
クライシスの言葉はおそらく嘘だと判断する。
もし本当にノーダメで耐えられるなら既にやっていたはずだ。
「ふん!」
もう一度剣を振る。
途中で止め、剣を持っていない方の腕で拳を突く。
「上手い上手い」
「はぁっ!」
拳を逸らされるが残した剣を振る。
掴まれたと同時に、また浮遊感が襲ってくる。
クライシスを見ると何かを投げたような体勢をしている。
今理解したが、魔法を撃とうとしたときも投げ飛ばされたのだろう。
「ほら頑張れ頑張れ」
魔法を撃つ準備をする。
最初のように撃つのではなく呪文を唱える魔法を。
魔法というのは詠唱がなくとも撃つことは出来るが、そのかわり威力が低くなる。
だが今の世の中は威力が低くなっても詠唱をしないのがポピュラーだ。
その方が何かあった時に即座に使えし詠唱が長いと邪魔をされるのがほとんどだ。
今ではパーティの最大火力が必要なときしか使われない。
「ふぅん?」
「《炎》《百》《槍》《囲め》《撃つ》」
基本時に言葉が多くなればなるほど威力が上がり魔力の消費も大きくなる。
そしてクライシスの周りには百の炎の槍が現れ襲ってくる。
「危ない。危ない」
クライシスも魔法で槍を創り炎の槍を迎撃する。
自らを中心として槍を振り回し炎の槍を叩き落していく。
余裕を持って叩き落していく姿を確認してフレールは更に魔法を唱える。
「《強大》《炎》《球体》《全て》《燃やし尽くせ》」
絶好のチャンスだとフレールは最大火力の魔法を唱え唱える。
それを気づいたクライシスは襲ってくる槍を迎撃する速度を上げる。
「熱いなぁ」
段々と近づいてくる球体の熱気と炎の槍の熱に思わず愚痴をこぼしてしまうクライシス。
残ってる槍は数本。
最後に襲ってくる巨大な球体の炎と同時に回転して打ち払う。
「くそっ……」
悪態を付きながらもフレールの口元はつり上がっている。
このぐらいは当然だと感じている。
「少しは動かせてもらうぞ?」
「っ!……がふっ!?」
相変わらず目に負えない動きで接近してくる。
そして腹を殴られ息を吐き出す。
「まだまだ、やれるだろう?」
その後には腕を掴まれ、また投げられてしまう。
「当然!……あれ?」
「やる気はあるんだぁ?なら回復ぐらいはしてやろうか?」
投げられた後、地面に尻を付けてしまう。
何度か立ち上がろうとしても力が入らず地面に座り込んだまま。
そこにクライシスが近づき回復してやろうかと提案する。
「頼む」
「ほぅら?これで立ち上がれるだろ」
何も唱えずクライシスは手から優しい光を放つ。
それで確かにフレールは回復する。
「お前も回復魔法を使えるのか?」
「じゃなきゃソロでダンジョンを挑むのは厳しいだろう?才能が低かろうが必死に覚えたからなぁ?」
「なるほどな」
魔法の才能が低くても使えないわけでない。
中には、それでも努力で使えるようになった者もいる。
クライシスもそういうタイプなのだろう。
シクレと比べても回復量が違う。
「よっ、と……」
全身が汗に濡れていて服がそれを吸っているせいで重く感じる。
それでも回復したし戦うと決めていたから立ち上がりクライシスを睨むと面白そうに笑われる。
「何がおかしい……!」
「いやぁ。楽しいなぁって」
実力差があるのは理解している。
笑ったのもバカにしたのではなく、まだまだ戦えるからだということも予想できた。
だけど、その顔を崩してみたくなった。




