三十話
「来ましたね」
放課後、部室へと入るとそこには既にシクレがいる。
優しそうに嬉しそうな笑顔で迎え入れられると少しだけクライシスも嬉しくなる。
「はい。好きな本なら何でも良いんですよね?何冊ぐらい持ってきますか?」
「そうですね……。互いに本を紹介するとしたら十冊で二十冊はいきますし……。五冊ずつにしませんか?それでも念のために十冊は持ってきましょう。時間が余ったら、それを紹介すればよいですし。そのぐらいなら大して重くは無いはずです」
「たしかに」
シクレの言葉にそのぐらいなら本を持っても大して重くはならないかと頷く。
あとは互いに紹介する本とか事前に教え合ったり配信日を話し合うぐらいだろうか。
「それでいつ配信しますか?」
「………今日とか」
「流石に本を持ってきてないんですけど、今から部屋に戻って取ってくるんですか?」
「流石に冗談ですよ。今日、コラボを決めたばかりですし。………明日にしますか?」
「………お願いします」
クライシスの同意を取れたことにシクレは笑顔になり手を取って部室から出ていく。
どこかに連れて行くのかわからないまま流されるままに連れて行かれる。
「ついでに何冊か本を買いに行きましょう!その中から最低一冊は配信で紹介しませんか?」
「そうですね。それじゃあ早速行きましょう」
本を買うのに丁度良いとクライシスは頷く。
それを尻目についでに一緒に御飯を食べに行こうと決めるシクレ。
その顔は赤くしながらも口元がゆるくなっていた。
「ここなら沢山の本があって私のオススメの本屋ですよ。早速選びましょう?」
興奮気味に手を引かれて歩く。
歩いている間も楽しそうでクライシスは微笑み、シクレは一緒に歩いていることに嬉しくて笑顔を浮かべる。
その様子を見られてるのも気づかないぐらいにシクレのテンションは高くなっている。
「クライシス君はどんな本を買うつもりなんですか?」
「………戦闘系?」
「あんなに強いのに?」
「他の人の考え方は参考になりますからね。そうでなくても勉強にはなりますし」
「そうなんですね」
「それでシクレ先輩は何の本を買うつもりですか?」
「お料理の本ですよ」
何故か恥ずかしそうに顔を隠しながら教えてくれるシクレ。
クライシスは何が恥ずかしいのか理解ができない。
「なら互いに買い物が終わったら合流「嫌です!」……えぇ」
シクレはクライシスの提案に否定する。
「なら私にオススメの本を選んでもらいませんか?私も選びますから」
「そうですね。………先輩って基本は後衛の回復役ですよね?」
「はい。クライシス君はお料理はどのくらいできますか?」
「簡単なものしか作れないぐらいですね……」
「なるほど……」
互いに軽く相手のことを把握しながら買う内容の本を頭の中で決めていく。
クライシスは後衛の動きについて書かれてある本を探そうと決めるし、シクレは料理の興味のない男の子でも簡単に作れるレシピが載ってある本を選ぼうと決める。
「………うん」
途中、クライシスが料理を作る動画を配信するのも良いんじゃないかと思いつく。
簡単なものぐらいしか作れないというのなら少しづつ上手くなっていく過程を見るのも面白そうだ。
助手として一緒に参加するのもありかもしれない。
「それじゃあ、まずはクライシスくんの本から探しませんか?」
「良いんですか?」
「えぇ、もちろん!」
言葉に甘えつつも探しに行くクライシス。
始めてくる場所だから何処に目的の本が並んでいるのかわからない。
それでも仕切板を見つけることで直ぐに解決できた。
「これだけで良いんですか?紹介する本の数には足りませんよ?」
「先輩こそ。俺は家にある本も紹介するので大丈夫です」
「あぁ、なるほど。私も家にある本を紹介しますし問題ないですね。それと本を選んでいただきありがとうこざいます」
「それこそ、こちらこそ」
互いに感謝しあって苦笑する二人。
そのまま隣り合って歩いていく。
「ついでですし一緒にレストランで食べませんか?それと互いの選んだ本を読み終わってから配信しましょう」
「わかりました。できるだけ早く読み終わらせようと思います」
「お願いしますね」
早く読み終わって互いに感想を言い合いたい。
感想自体はつまらなくても、きっと一緒にいるだけで楽しいだろうなという予感がシクレにはある。
「それと配信は明日って言ってましたけど念のために週末ではダメでしょうか?」
「……そうですね。構いませんよ。私もどうせなら吟味して選びたいですし」
クライシスの提案に了承するシクレ。
どうせなら男の子のクライシスにも興味を持ちそうな本を選びたい。
「それよりもレストランに行きましょう。お腹が空いて辛いです」
「それもそうですね。少し急ぎますか?」
「お願いします」
「はい、もちろん。お任せください」
笑みを浮かべながら少しだけ早歩きになる二人。
仲が良さそうな二人を邪魔するものは誰もいなかった。
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