二十五話
「何をしてるんだお前は」
「………切り忘れ?」
「「「「そうじゃない!!」」」」
ダンジョンから脱出すると目の前には事務所の先輩たちがいた。
しかもなぜか怒っていてクライシスは首を傾げる。
「そもそも何でここに?ダンジョンに挑むなら、どうぞ」
「待てや」
ダンジョンに挑むのかなと道を開けると肩を掴まれる。
本当に何のようかと疑問でしか無い。
「お前はいつもあんな風にダンジョンに挑んでいるのか?だとしたら危険すぎて止めなきゃいけないが?配信を見ている皆さんが真似したらどうするつもりだ?あとお前自身も危なすぎる」
「?見てくれる人が真似してもその人の責任ですよ?あと危険すぎるのはわかりますので対処法は考えておきます」
真似しても責任は真似した本人のものだとクライシスは口にする。
そして危険行動に関してはクライシス自身も理解しているために対処法を考えると告げる。
「いや有名人で強いやつの真似は誰でもしたがるし何かあったら責任転嫁をしてくる。今日はもう遅いし明日にでも真似しないように注意したほうが良い。何も言わなければこっちを悪者にしてくる」
「そうなんですか?」
「そうなんだ。だから時間は短くても良いから配信して真似しないように言っておけ」
「わかりました」
「なら良い。それはそれとして説教だ」
「え?」
理解したのを確認すると肩を掴む力を強くする。
事務所の先輩たちも笑みを強くする。
何故か逆らえず、されるがままに事務所に連れて行かれクライシスは説教を受けることになった。
「はぁ……」
長い説教が終わりクライシスはため息をつく。
もう外は完全に暗くなっており腹も減った。
何でも良いから食べたくてしょうがない。
「おいおい、お前クライシスってやつだろ」
「……だれ?」
腹が減って抑えていると目の前から知らない奴らから声をかけられる。
スマホを片手にニヤニヤと笑っており何を狙っているんだろうなと考える。
「お前、あれだろ?配信のは動画編集して作ったんだろ?本当は弱いくせに頑張ってるよなぁ」
「……………?」
「ほら何も言い返してこない。やっぱりこいつは弱いって!」
急にワケのわからないことを言われて困惑するクライシス。
そもそも目の前にいる相手は誰なのかわからない。
「ほらほら。試してみるか?」
目の前でニヤニヤと笑いながら挑発してくる。
そこまで言うのなら強いのだろうなとクライシスは判断する。
「どうせむお゛っ」
「?」
だから思い切り腹を殴る。
普通に防ぐなり回避するなり対処できるだろうなと思っていたら直撃してクライシスは首をかしげる。
直撃しても攻撃が効かないぐらいには固いかもしれないと想像していたが、そんな様子にも見えない。
「おごっ!?」
喧嘩を売ってきて、この程度なわけがないと考えて額に裏拳を叩き込む。
頭から地面に叩きつけられて赤い液体が地面を濡らしていく。
「…………?起きたらどうだ?」
地面に倒れ伏している男を蹴り上げて浮かせた身体を掴み上げる。
喧嘩を売ってきてこの程度なのは納得がいかない。
「もう許してくれ!?俺たちが悪かったから!」
「?俺に勝てるから喧嘩を売ってきたんだろう?タダ黙って許すかと思ったのか?そんなことするはずないだろう?」
「だからってやり過ぎだろう!?」
「喧嘩を売ってきたくせにやられる発想がないお前らが悪いに決まっているだろう?喧嘩を売るほどの実力があるかと思って期待していたのに期待ハズレでがっかりだ。なぁ?」
「う゛……。あ………」
平手打ちを繰り返して意識を目覚めさせるクライシス。
目をわずかながらに開いて自分を認識したことに楽しそうに笑う。
「なぁ。そんなに弱い癖になんで俺に喧嘩を売ってきたんだ?俺の攻撃にも全く反応できていないし暇つぶしにならないだろう?」
「で……。ふざ…ごぽっ!?」
「答えてくれないと困るだろう?」
頭から血を流し、何度か殴られて上手く喋れないところに声が聞こえないと更に殴るクライシス。
「もうやめてください!動画も撮って流しているんですよ!?」
「なら続けないといけないなぁ?」
一緒にいた男の言葉に更に殴り始めるクライシス。
ポキっという音と口から血を吐き出したのを認識して、ようやく一度止まる。
「も゛う゛や゛め゛でぐだざい゛!!」
「ここで見逃したら同じ真似をするやつが出てくるだろう?その度に相手をしろと?相手が弱いから許してやれと?なぜ弱さを武器にしている奴に容赦しないといけないんだ?その結果俺が不利益を被ってもお前たちは笑っているくせに?」
「ゆ゛……で………」
「許したら繰り返すだろう?同じようなことを繰り返されるのは面倒なんだ。だから苦しんでくれ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うるさいなぁ」
残った一人が突撃してくるが勢いのままに来るせいで簡単にカウンターを決めることが出来てしまう。
もちろんカウンターに使ったのは挑発してきた男だ。
武器のように振り回して脇腹にぶつけることができた。
「おっ……。おっ……。おっ………」
カウンターを食らった男は脇腹に手を当てて後退していく。
そこに挑発してきた男を投げると簡単に倒れた。
「後ろから襲ってきたら面倒だし折るか」
ボキリという音が響く。
ついでにスマホも壊し迷惑料として財布を奪ってクライシスは去る。
少し時間が経つとサイレンの音が聞こえてきて、うるさいなぁと思っていた。
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