二百二十六話
「それじゃあ休憩に入るから」
「おつかれー。いや、本当に」
「しっかり休めよー」
クライシスが休憩に入るとクラスメイトの皆がお疲れ様と労る。
ほとんどのお客さんがクライシス目当てで写真を撮ろうとしていて、その対処や純粋に客の多さに生徒たちは疲れ果てている。
特にクライシスは自分の責任だと感じていたのか、かなり働いていた。
「そういえばクライシスくんはどこか目当ての店でもあるのか?」
「いいや。まずは適当に歩き回ろうかなって」
「なるほど」
特にどこに行こうか考えていないらしい。
適当に歩き回って楽しむのだろう。
少し休憩してから合流しようかとクラスメイトたちは考えていた。
「まずはフレール先輩のところに行くか……」
そういえば鍛えていたし、どうなっているのか確認しようと最初の行き先をクライシスは決める。
「どこだっけ?」
たしか戦うのだから広い場所でやっているはず。
学園の広い場所を虱潰しに探そうと決める。
「さてと、探すか」
「え?なにか探しているのか?俺も手伝おうか?クライシスくん」
「ん?」
虱潰しに探そうと決めた途端に声をかけられる。
手伝おうとかという声に誰かと確認すると、そこにはフレールがいた。
「フレール先輩?」
「よっ。休憩か?探し物があるなら手伝ってやるよ」
会話からしてフレールも休憩らしい。
それなら丁度良いかとフレールたちがイベントを開催している場所を確認することに決める。
「いや。フレール先輩たちのイベントの場所をどこか探そうとしていたんで教えてくれませんか?」
「えっ。聞いてなかったか?」
「場所は聞いてないです」
「そうか………。わかった。じゃあついてきてくれ」
案内してくれることに感謝しながら言葉に甘えるクライシス。
どんな者たちがいるのか少し楽しみだった。
「ここで俺達は戦っている」
「……かなり広いな」
思わず口に出してしまうクライシス。
これだけ広いと学園のメインイベント何じゃないかと思ってしまう。
「いやぁ〜。クライシスくんのお陰でかなり余裕をもって相手できてるよ。子どもたち相手にもわかりやすくアドバイスも出来るし」
「それはすごいな……。そういうの口や言語化が上手くないと駄目なのに」
「だろう?」
クライシスの褒め言葉に嬉しくなるフレール。
後でクラスの皆にもクライシスに褒められたと伝えようと決める。
「あの……?」
そんな中、子供が一人クライシスたちのところへよってきた。
「どうした?」
クライシスは子供が自分の近くまでよってきたことにしゃがんで視線を合わせて応答する。
その姿にフレールは感心する。
「あのクライシスさんですよね?」
「そうだけど?」
クライシスは相手が何を言いたいのか何をしてほしいのか分からず話してくれるまで黙って待つことにする。
なんとなく察することができても話してくれるまで何もするつもりはない。
もしこれが自分と同年代かそれより上だったら無視していた。
「えっと……。その……」
「大丈夫。話してくれるまで待つから、まずは落ち着いて」
クライシスは更に視線を低くしようかと思うが、これ以上は地面についてしまう。
それならと座り込んで見上げる。
何を口にするのか楽しみだった。
「俺と戦ってください!!」
「良いよ」
両手を握りしめて全力で叫び頼んできた子供にクライシスは即答する。
そのぐらいなら構わなかった。
「………フレール先輩。良いですか?」
だが直後に先輩たちの邪魔にならないかと思い返して確認する。
「良いぞ。むしろ今日は最後までやるか?」
「やらない。やるとしても一時間だけ」
「そうか。残念だ」
ところどころからえー、という残念そうな声が聞こえるがクライシスは翻す気は無い。
だってこれはフレールのクラスの出し物であるし、クライシスも休憩が終わったら自分のクラスの仕事がある。
今回応じたのはまだ幼い子供が勇気を出して挑んできたからだ。
同年代かそれより上の相手だったら同じ頼みでも無視をしていた。
「それじゃあやろうか」
「おいおい。クライシスくんともあろうものが子どもたちを相手にするのかよ。それよりも俺達と戦えよ」
いざ、やり始めようとすると野次が飛んでくる。
誰だと確認すると自分より少し年上らしい人たちがいる。
「…………俺と同年代か年上の人で俺と戦いたい人は手を上げてください」
ため息を吐きながらクライシスは確認する。
どれだけ自分と戦いたい人がいるのか知りたかった。
「………………」
そしてかなりの人数の手が上がった。
しかも客だけでなく自分たちの学園の生徒や小さい子どもたちまで手を上げている。
聞こえなかったのか、それとも勘違いして手を上げたのかとおもってしまう。
「《身体》《強化》」
とりあえず自分の学園の生徒と子どもたち以外は全員ぶん殴って気絶させる。
優先するのは子どもたちだ。
「カスに興味あるはずがないだろう?まずは子どもたちが優先に決まっているだろうに?」
反応できない時点で自分の的ではない。
それなら子どもたちを優先するほうが、かなり価値があるとクライシスは考えていた。




