二十一話
「なぁ、取り敢えず一週間に一度だけで良いな?」
「鍛えてくれる話か?もちろん良いぞ。こちらとしても鍛えてもらう立場だし」
「良かった。それと更に増えることはないよな……」
「………どうだろう。結果次第じゃないか」
翌日、学園でクライシスはクラスメイトの一人と話し合う。
内容としては訓練のことで、予定日のことだ。
精神鍛錬ばかりだし、もしかしたらもう来ないかもしれないとクライシスは思いながら念のために話し合う。
「結果?」
「そう結果。強くなれたら続けるし、強くなれなかったら来なくなるだろうし」
「………一応言っておくが意識しないと強くなれないからな?」
「わかってる」
「ほんとうに?面倒くさくなったり一つぐらい手を抜いていいやって思ったら意味ないからな?それに昨日の今日で強くなれるはずもないし」
「……わかってる。昨日教えてもらったことを忘れなければ良いんだろ?」
「そう」
それで強くなろうがなれなかろうが本人次第だとも思う。
ただ弱くなることはないはずだから人のせいにしないでほしいと祈っていた。
「それと、もう一つ頼みがあるんだが良いか」
「………なに?」
「授業で自主訓練する時間あるだろ?その時も鍛えてくれないか?……いや、面倒なのはわかるけど」
「基本的に昨日と同じだぞ「かまわない」」
昨日と変わらないと言ったのに気にしないというクラスメイトに頷くクライシス。
ただ面倒だと思っていることに気づかれたことに表情に出ていたかと顔を触っていた。
「はぁ……」
「よろしくお願いします!」
「「「「「「します!!!」」」」」」
そして頼まれた当日に自習の時間が来てため息を吐く。
しかもクラスメイトの全員が頭を下げて頼んでくる。
授業を確認してなかったのも自分も悪いが狙っていたなと思う。
「まぁ、良いや。それよりも昨日来たやつは……」
「全員です!」
「じゃあ覚えているよな」
「「「「「はい!!」」」」」
「なら、まずはそれをやって。それから一人ずつ声をかけるから」
「「「「「っ」」」」」
やり始めたのを確認して横目で教師を見る。
そこには感心するような目を向けていた。
「はぁ……。まずはお前から」
「っ!?」
「声をかけられたで結構な人数が集中出来くなっているぞ。後は肩を触られたと完全に集中を乱すな。………女子も触るんだよなぁ。嫌なら女子は手を上げろ、上げたら触らないから」
念のために女子に声をかけるが誰も手を上げない。
なら触っても良いと許可をもらったと考えることにする。
「取り敢えず、今触ったお前腕を動かしてみろ。………意識しながらだ」
「っ……!っ……!!」
「良いぞ。後は集中を続けろ」
「次はお前だ」
肩を触った相手を一人ずつ集中させながら体を動かすように指示をする。
それだけで集中が途切れる者が多く、それを自覚して悔しそうに歪めている者が多い。
「なんでっ……」
「それをしながら自由自在に動けるようになったら奇襲とか冷静に対処できるし自分の身体の状況を把握できるようになるから頑張れ」
「マジでっ!?」
「集中しろ」
クライシスの言葉に更に精神鍛錬に気合を入れるクラスメイトたち。
ダンジョンだからこそ奇襲が恐ろしい。
「もう一度言うぞ。深く息を吸って吐け。空気や光、自分の周りを意識しろ」
それだけを言って行動を再開するクライシス。
クラスメイトたちも言葉に従って再開していた。
「………終わり」
全員の肩を叩いてから動いてもらって少し経つと授業の終わりの鐘が鳴る。
見ると全員が汗だくになっている。
それに比べて自分は全く汗をかいておらず疲れも全くない。
「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
強くなるために必死に学ぼうとする姿。
それが無性に羨ましくて、無性に妬ましく感じる。
自分には身近にそんな相手はいないし、今の時間も何の糧も得られなかった。
「クライシス」
「はい?」
「今度からはお前も授業に教師役として入るか?」
「何の実績も上げてませんし、その間の時間で自分を鍛えることが出来なくて勿体ないです」
目の前にいる者達は自らを鍛えることに全力を注げる。
その間、自分は鍛えることも出来ないのが時間が勿体なく感じる。
「教師役として教える側になったら金も入るぞ」
「!!」
金が手に入ると聞いて目を輝かせて教師に顔を振り向く。
「まぁ、実績が出たらだがな。もしそうなら引き受けるか?成績も色をつけてもらうことも出来るだろうし」
「当然!」
更に成績がアップすると聞いて即答するクライシス。
金はいくらあっても困らないし、成績に色がつくなら勉学に手を抜くことが出来る。
是非、詳しい話を聞きたいと擦り寄る。
「ところで君はまだ一学年だし指示を聞かない生徒もいると思うけど、どうやって指示を聞かせるつもりだ?」
「力の差を分からせれば従うんじゃないんですか?」
「……そうだな!」
どうやって指示を聞かせるかと確認したら脳筋な答えが返ってくる。
だが真理でもあるし、どうしても必要な時もあるから教師には否定することができなかった。




