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お金のために配信者になります〜えっ、人気がないとお金はもらえないんですか?〜  作者: 霞風太
二十三章 夏休み最後のバーベキュー

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百六十一話

 グラウンドにはベーベキューに来たほとんどの者たちが集まっている。

 その視線はグラウンドにあるビンゴマシーンに向けられており手にはビンゴシートを握っている。


「それでは皆様、今からビンゴ大会を始めます!!」


 どっ、と響く歓声。

 それだけでビンゴが楽しみだったことが伝わる。


「持ってない人はもらいに来てください。じゃないとビンゴゲームに参加できませんよ」


「ここまで来なくても周りにビンゴシートを配っていた人があまりを持っていると思うので、その人からもらってくださいね!」


「貰ってない人はいませんかー!?貰ってないなら今から配りに行きますのでー!」


 ビンゴシートを配っていた学生たちがシクレたちの言葉に合わせて声をあげる。

 どうせなら全員でゲームを楽しみたいのだ。


「全員持っていますでしょうか!?」


「「「「持ってまーす!」」」」


「はい!ではビンゴゲームの説明をしますね!」


 シクレの確認に返事を返すバーベキューの参加者たち。

 それにシクレも頷いてゲームの説明を始める。


「こちらにいるクライシスくんがビンゴマシーンを動かして数字が書かれた玉を出します!その数字と同じ数字をビンゴシートから探し穴を開けてください!無かったら残念ですが外れなので開けないで次の数字に期待しましょう!そして斜め横縦に五個並んで揃えたら景品をもらえます!」


「最初に当てた人からクジを引いて番号が書かれた景品をもらうことができます。中には高価なものあるらしいので早くビンゴが揃うように祈りましょう」


「それではまず一個目です!番号は63番!」


 そしてビンゴ大会が始まった。




「何当たったー?」


「いっぱいのペン。そっちは?」


「お菓子の詰め合わせ」


「うわっ。いいなー」


 子どもたちがビンゴで当たった景品を見せ合う。

 子どもでも片手で持てる景品を当てた者もいれば大人でも持つのが大変な大きさの景品を当てた者もいる。


「よく当てたなー」


「うん」


「良いなー。それ当たりでしょ?私も当てたかった」


「そう?でもそっちだって綺麗な手鏡じゃない」


「そうだけどさー」


 他にも互いの当てた景品を羨ましがっている者たちもいる。

 大人たちはそんな子どもたちを見て互いに苦笑し合っていた。


「それにしても……」


「あぁ……」


「「まさかクライシスくんが一番最初にビンゴを当てて一番良いのを当てるなんてな!」」


 あっはっはっは、と笑い合う。

 しかも四回という本当に最短で当ててクジでも良いのを当てて行った。

 クジで一番良いのを当てた瞬間に、まさに魂が抜け落ちた顔をしたのを今でもハッキリと思い出せる。

 あの顔を見ただけでもうすべてを許せた。


「平静を装っていたけど明らかに焦ってたよな」


「わかる」


 笑い話に出来るのは参加費の費用が無かったのもあるし本気で焦っているのも伝わったからだ。

 これで本当に平然と当たり前の顔をしていたら不満はあった。

 ただの不幸な事故だとわかったのも大きかった。



「クライシスくーん?」


「……別に狙ったわけじゃないので」


「ごめんごめん。わかっているって!」


 クライシスが最短で一番の景品を当てたことをニヤニヤと笑いながらからかうフレールたち。

 正直クライシスの表情の変化が面白かったから、からかいたくてしょうがなかった。


「それで最短で当たってどうだった?」


「最初はいちいちビンゴを回して自分のシートを確認して開けてが面倒だったから直ぐに終わってラッキーだと思ったんですけど。……思ったんだけどなぁ」


「気まずく感じたか」


「まぁ…」


「運が悪ったと言うべきか、それとも良かったと言うべきか……」


「流石に次は無いと思いますし……」


 ある意味では最も無欲だったんだろうなと思える。

 他の皆が景品を狙っていたとしたらクライシスは自分のビンゴが早く終わることを祈っていた。

 そして祈っていた通り直ぐに終わり、そのかわりに一番良い景品が当たり気まずい気持ちを味わった。

 色んな意味で世の中よく出来ているなぁ、と思う。


「………それよりもバーベキューって何時までやるんでしたっけ?」


「もうそろそろじゃないか?空もちょっと赤くなってきたし」


 これ以上は聞きたくないと話しを逸らされるが気にせずにそのまま乗ることにする。

 あまりにもこの件でからかい過ぎたら慣れて受け流されそうだと思ったのもある。

 そうなったらつまらない。


「みなさーん!聞いて下さい!」


 ちょうど良く教師からの声が拡声器ごしに聞こえる。

 もしかしたら終了の合図だろうかと視線を向ける。


「皆様。本日はバーベキューに参加して頂きありがとうございます。そろそろ終了の時間ですのでお帰りの準備をお願いいたします。使い終わった皿や箸などはグラウンドにあるゴミ箱に捨ててくれたら幸いです。本日は本当にありがとうございました。お気をつけてお帰りください」


「………本当に終了の合図でしたね」


「全くだ。明日はどうなるかな?」


「明日ですか?」


「ん?明日は片付けだろう?朝一でやるのか、それともある程度終わってからやるのか…」


「ある程度って何よ?」


「夏休み明けの始業式とか、これからの授業の予定とか。片付けもあるから去年よりは早く終わりそうだけどな」


「?」


「………」


「あぁ、なるほど」


 クライシスはよくわかっていないがシクレたちはよくわかっているのか何度も頷く。

 去年も同じ経験をした経験だろう。

 何度も頷いているあたり、この学園も校長などの話が長いのかもしれない。

 去年よりも早く終わると言っているあたりで予想できる。

 

「なら俺は運が良いですね。校長の話とか長いですし」


「「「わかるの!?」」」


「進学前の学校の校長も話が長かったので」


「「「あぁ〜」」」


 そのままわかる、とクライシスたちは笑い合っていた。

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