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お金のために配信者になります〜えっ、人気がないとお金はもらえないんですか?〜  作者: 霞風太
二十二章 夏休み最後の訓練

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百五十三話

「まぁ、こんなものだろうなぁ?」


 学生たちの攻撃を全て避け防いていたら日が暮れてきた。

 クライシスは念の為に確認するともう時間は夕方だ。


「はぁ……。はぁ。はぁ…」


 学生たちを見るが心はまだ折れていない。

 絶対に一撃を当ててやるという決意に溢れている。


「これで終わりです。………これ以上は付き合うつもりはありません」


 剣の峰を思い切り叩き甲高い音と一緒に刃が折れる。

 どれだけ諦めきれず終わりにしたくなくても、これで終わり。

 クライシスはお前たちの話しを聞く気はないと言わんばかりに変える準備をしていく。


「まだだ!まだ終わっていない!」


「はぁ…。夕方までだと言いましたよね?それに明日はバーベキューをするんですから、ゆっくり休んでください。今日の訓練で疲れたから参加しないとでも言う気ですか?」


「それは……」


 明日はバーベキューだと思い出して決意が揺らぐ。

 楽しみにしていたのに参加できないのは嫌だった。

 それでもこのままでは終われないと武器から手を離すことはできない。


「あと」


「?」


「最初から制限時間は決めていた。その時間内に達成できなかったお前らが悪いし、後から延長をさせようとするな。ギルドの依頼でそんなこと受け入れられると思っているのか?」


「ぐっ」


 期日が決められている依頼の場合、一日でも遅れたらぞの時点で失敗だ。

 そのことを考えたらたしかに達成できなかった自分たちが悪い。

 それでもギルドの依頼でもない訓練だから少しぐらいは延長させてもらっても良いんじゃないかと思う。


「それでもこれは訓練です!だから……!」


「あと腹が減ったから嫌だ」


「は?……ぐぅぅぅ」


 クライシスの言葉にふざけるなと言いたくなった。

 だけど同時に自分たちも意識した途端に腹の音が鳴った。

 思わず顔を赤くしてしまい腹を抑えてしまう。


「先程までは意識もしなかっただろうけど意識したからパフォーマンスも落ちるだろ。今日はもう終わり」


「「「「「っ!!」」」」」


 クライシスにも聞こえていたことに学生たちは何も言い返せなくなる。

 たしかにお腹が減って力が出にくい。


「それじゃあ明日は準備も忘れずに」


 その間にクライシスはさっさとこの場から離れていく。

 学生たちはそれをただ見送ることしか出来なかった。

 そして完全に見えなくなると誰からともなく地面に座り込んだ。




「………くっそ」


「一撃も当てられなかった」


「明日はやけ食いしよう」


「わかる」


 クライシスとの訓練が終わり学生たちはそれぞれ愚痴を零す。

 休憩をもらった。

 それに対してクライシスは一度も休憩を挟まなかった。

 こちらは常に複数人で挑んだ。

 クライシスは一人で相手をしていた。


 実力差があると知っているとはいえ、こうも見せられると悔しい。

 しかもほとんど攻撃してくることはなかった。


「やっぱクライシスくんの強さって見切りと関係あるのかね」


「そりゃあるだろ。こっちの攻撃なんて全部見切られたんだし」


「まぁ、見切られてたからこその余裕はあったんだろうなと思う」


「ちょっと憧れる……」


「わかる」


 学生たちはそれぞれクライシスとの訓練を愚痴り合う。

 そして一番に思い出すのはこちらの攻撃が一度も当たらなかったこと。

 こちらの攻撃は全て見切られていて悔しいし、同時に憧れてしまう者もいる。


「どうして見切られてしまうんだ?」


「クライシスくんにとっては遅いとか?」


「ありえそう。クライシスくん自身も速いし」


「あぁ〜。何度か見失うしな」


「あとはダンジョンに挑んでいるから、そこで経験したからとか?」


「どんだけ危険なことをしてきたんだよ。……ありえるけど」


 初見からの反応より経験則からの反応の方がまだ納得ができる。

 だとしても複数人で袋叩きにしたのに見切られてるのは、どれだけ危険なところを切り抜けてきたのか心配になる。

 今生きているのも運が良かっただけじゃないかとさえ思う。


「あぁ、もう!」


 地面に座り込んで話している学生たちを見て、学年が一番上の生徒の一人が声を上げる。

 いつまでもこの場で話していたら風邪をひくし、学園も閉まる。

 その前には帰りたい。


「反省会は後!風邪をひくし学園も閉まる。寮に戻って明日の準備でもしなさい!どうしても話したかったら寮に戻って汗を流してから!風邪をひいたらバーベキューも参加できないわよ!」


 風邪をひいたらバーベキューに参加できないと言われ、それもそうだと頷いて寮へと戻り始める学生たち。

 バーベキューに参加できないのは嫌だったから明日のためにもう帰って休もうと考える。

 話したいことがあったら寮に戻ってから、また集まれば良い。


「はぁ……。明日は昼からだっけ」


「そうそう。ある程度の準備もしないと」


「今日はもう休んで疲れから回復して明日は楽しむわよ!」


「はやく明日にならないかなぁ……」


 寮へと戻りながら明日に想いをはせる学生たち。

 夏休みの間の訓練は過酷で今まで築き上げてきた自信も砕かれた。

 それでも頑張れたのは明日のバーベキューがあるからだ。

 だから明日は全力で楽しもうと誰もが決めていた。

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