百四十四話(配信回)
「ところでクライシスくん」
「なんですか?」
「次からは料理を配信する時は私も絶対に参加させてください」
【それな】
【少なくともシクレちゃんがいたら安心できる】
【今度からは絶対に他にも参加させて】
【怖いんだよ】
【嫌そうな顔すんな】
「………わかりました」
「料理の仕方を教えますので覚悟してくださいね」
「……はい」
【妥当なんだよなぁ】
【草】
【いつか指を切りそうで怖い】
【切るならまだ良いけど切り落としそう】
【わかる】
「指を切ろうが切り落とそうが直ぐに治癒魔法を使えば大丈夫なんだよなぁ」
「何か言いました?」
「指を切っても魔法で直ぐに治せば良いよなって」
【青筋立ててるのわからないの?】
【怖いもの知らずか?】
【そういう問題ではない】
「………治したとしても血がついた食べ物を誰かに食べさせるつもりですか?」
「あっ、それはダメだな。自分だけならともかく他人には食べさせられないですし」
「わかってもらえて良かったです」
【たしかに誰かの血が付着したのは食べたくないな】
【そもそも治せば良いという発想がある時点ですでにやったことがあるんじゃないか】
【ありそう】
【だから治癒魔法を使う発想が直ぐに出てきたのか】
「………クライシスくん。もしかして調理中に怪我をして魔法で治したことがありますか?」
「ありますよ?自分しか食べる相手はいなかったし別に良いかなって」
「………調理の基礎の基礎から教えますから覚悟してくださいね?」
【3000円 がんばって下さい】
【1000円 これで子供用の包丁でも買ってください】
【500円 基本の調理方法が書いてある本でも買え】
「ふぅ。明日時間はありますか?」
「大丈夫ですけど……」
「なら買いに行きますよ」
「何を?」
「料理の基礎が載ってある本をです」
【まぁ、妥当】
【むしろそれ以外にある?】
【察しが悪い】
【5000円 デート代】
【たしかに二人で買い物に行くからデートでもあるのか】
「………たしかにそうなりますね。必要なものを買い終わったらデートに行きますか?」
「…………そうですね。せっかくですし行きましょう」
【デート配信かな?】
【前は1日中してたな】
【10000円 デート代】
【また配信するの?】
【6000円 デートに使って】
「デート代でスパチャが飛んできますね」
「ありがたく使わせてもらいます」
「そうですね……。せっかくデート代として頂きましたし。デート資金として使わせてもらいましょう」
【2000円 じゃあこれも】
【1000円 ぜひ使ってください!】
【4000円 デート費用です】
【40000円 どうぞ】
【20000円 これでデートしてください】
【3000円 デート代】
「多い多い多い」
「こんなに渡されても使い切れませんよ!?」
「?一回では使い切れないけど二回三回とデートを重ねれば良いだろ」
「……!そうですね!」
【4000円 嬉しそう あっデート代です】
【5000円 二回目にでも】
【1000円 どうぞ使ってください】
「ここまで!デート代はここまでです!使いきれません!」
「デートを楽しむよりもお金を使わなきゃという義務感が強くなりそうですしね」
【ごめんなさい】
【真面目すぎる】
【好きに使っても言わなきゃバレないだろ】
【ちょっとわかる】
【義務感でデートはしたくないよね】
「デート代でもらったのにそれ以外で使ったら罪悪感がわく」
「わかります」
【二人とも真面目だなぁ】
【いつも楽しませてもらっているから、それぐらい良いのに】
「お前らっていつ付き合んの?」
「は?」
「それは……」
【そういえばシクレだけでなく他の配信者たちもいたな】
【すっかり存在を忘れてた】
【乱入してきたのもあって出来る限り影を薄くしてたんだろ】
【乱入はしゃーない】
「…………たしかに何度もデートも行っていま「それよりも明日は本屋に行った後にどこに行きましょうか!?最近できた喫茶店はコーヒが美味いらしいですよ!?」……本屋に行ったら、そこに行きましょうか?」
「はい!」
【ヘタレ】
【シクレの方にも問題あるな】
【むしろクライシスは決着つけようとしてる?】
【シクレさんが逃げるせいで進展しない、と】
「違いますよ!?ただ単にこんな場所で雑に付き合い始めたくないだけです!」
【ちょっとわかる】
【あぁ〜】
【たしかにムードもクソもねぇ】
「………結局最後はコラボになったな」
「クライシスくんの配信が危険が過ぎるのが悪い」
【なんかクライシスくんがつぶやいているけど、ほんとそれ】
【配信内容が色んな意味で危なすぎるんだよ】
【文句があるなら安心できる配信にして】
「料理だから安心出来ると思うんですけど……」
「できないから凸したんだが!」
「血が流れたら危ないって納得したんじゃないんですか!?」
「?たしかに血が流れた食べ物を他人に食べさせるのはマズイけど自分が食べる分には問題ないだろ?」
【そっち!?】
【自分の分だとしても血が流れたのはちょっと……】
【もうホントなんとかして……】
【シクレさんたち頑張って】
「はい……」
「がんばります」
「……?」
【ホント頑張れ…!】
【クライシスくん全然わかってねぇ…】




