百三十九話
「「「「「「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」」」」」
学園案内から数日後。
いつものようにクライシスの訓練に生徒たちは参加する。
先日の事件を聞いてないのかとクライシスは思うが、よくよく周りを見ると学園案内に参加していた生徒もいる。
「………取り敢えずまずは精神訓練から」
それを見て知ってて来ているとクライシスは判断して、まずはいつもどおりにプレッシャーをかけることに決める。
そういえば、と思い出す。
あの後、怒られることはなかった。
実力の差に怯えて何も言えなかったのかと想像しラッキーだと思うと同時に少しだけ心苦しい。
少しだけ手心を加えた方が良いんじゃないかと考えてしまう。
「………このぐらいなら耐えられるだろう?」
先日はやりすぎたとこれでも反省しているのだ。
今思えば異臭もきつかった。
漏らさない程度に手加減してプレッシャーを与える。
「「「「「「「「「「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」」」」
「………」
いつもと違い、いつも以上に気合を入れて耐える学生たちにクライシスは静かに驚く。
たかが気合とバカにしたものでもなく、これまで以上に耐えていてしっかりと実力が上がっているなと感心してしまう。
「っ………!」
中には耐えるどころかしっかりと睨んできている者もいて、この程度のプレッシャーを受けても戦えそうだなと思う。
近い内にプレッシャーに耐える訓練はなくなりそうだと想像する。
その分、組み手の時間が増えそうだと予想したところで考え直す。
プレッシャーに耐える訓練は必要なくなるだけで精神訓練自体は続ける意味はある。
組手の時間は変わらないだろうなと想像する。
「残念だなぁ」
少しだけ楽しめそうだったから残念に思う。
だけど一度ぐらいは組手だけの日があっても良いんじゃないかと考える。
今度、提案し見るのも良いかもしれないとクライシスは心に決める。
「くそっ……」
そして学生たちはクライシスの様子に悔しさを覚えていた。
こっちは必死に耐えているのにクライシスは何か考え事をしながら独り言をぶつぶつ言っているのだ。
その様子からも全力でプレッシャーを掛けていないし片手間にしかやっていないのがわかってしまう。
「あ゛ぁ………!」
舐めるなと全力で襲いかかりたい。
だけどプレッシャーのせいで足がすくんで動けない。
それが情けなくて悔しくて涙が滲み出そうになる。
「へぇ……」
クライシスをもう一度見ると楽しそうな目で見ている。
まるで期待しているように感じて更に気合が入った。
クライシスぐらい強い者に期待されているとわかると嬉しいものだし、まだまだ出来るはずだと力を振り絞れる。
絶対にクライシスが期待しているどころか、それを超えた実力を手にしてやると心に決めて訓練をしていた。
「終わり。次は組手だ。その前に休憩は挟まないとなぁ?」
クライシスの言葉に生徒たちは地面に膝をつける。
酷く疲れていて汗を大量に流している。
外からは昼の鐘が鳴り響いていて昼だと自覚したらお腹が空いた。
「前と同じように昼食を食べた後に組手だ。それまでにしっかりと休憩を取ったらどうだ?」
その言葉に頷いて各々が休憩を取り始める。
クライシスも昼食を食べるためか学生たちの前から去っていった。
「なぁ。今日はクライシスくんと戦わねぇ?」
「………クライシスくんが許可すると思う?」
「案外するかもよ?」
「全員で頼めば頷いてくれそうではあるな」
クライシスに挑みたいという意見に学生たちはそれぞれ自分の意見を言い合う。
数名は賛成しているが、もう数名はクライシスが頷いてくれるか疑問だ。
「そもそも俺達で相手になるか?以前も全員で挑んで負けたじゃんか」
「でも、どうせなら強い相手と戦って経験を積んだほうが強くなれそうじゃん」
「そうよね。正直、自分と同程度の相手と戦うよりは意外と格上相手のほうが強くなれる気がするわよね」
「わかる。けど戦ってくれるかどうかは別だよな……」
「取り敢えず聞いてみるだけ聞いてみるか?その上でクライシスくんに挑みたいやつだけ挑むとか」
それなら自分も参加したいと声を上げる者も増える。
そもそも人数がいないとクライシスの相手にもならない。
人数は多ければ多いほど良いはずだ。
「そんな皆で集まってどうかしました?」
そうして話し合っているとクライシスが戻ってくる。
思わず時計を確認すると長い時間話し合っていた。
「クライシスくん、午後からの組手は俺達と戦ってくれ!」
「………良いだろう。ただし全員で挑んできたらどうだ?一人だと相手にもならないだろう?」
「わかっている」
全員がそのつもりなのだとわかってクライシスは目を細める。
以前から少しは時間が経った。
実力の差も知っている。
その上で挑んでくるのだから楽しみでしかない。
「さっきまで話し合っていたし、もう少し準備はいるか?いらないのなら始めても良いのだろう?」
「もう少し時間をくれ」
「良いだろう」
クライシスは学生たちの頼みを受け入れ、準備ができたら声をかけてくれと少し離れて待機する。
その行動に感謝しながら学生たちはクライシスに一撃は確実に入れれるように作戦会議をしていた。




