百三十七話
十二時、十八時にも今日は投稿します。
「ふぅ……」
学園のシャワーを使い身体を洗って一息つく保護者たち。
下着や服も新しいものを準備してもらい、その上もらっても良いらしい。
ほんの少しだけ得をした気分になる。
「クライシスくんって、この学園に来てからも強くなったんですよね?」
「はい。この学園に来てから確実に強くなったはずです。少なくとも殺気だけで、あんな結果になることはなかったはずです。実際に放課後の訓練で似たようなことはやったことはありますが生徒たちも結果は倒れただけですし」
「そうですか……」
つまりは教師より優れた生徒でも実力を伸ばす環境や設備が整っているのだと理解する。
恥をかかされたが、その元凶はクライシス。
学園そのものには思うところはないから入学も良いんじゃないかと考える。
「どうする?受験してみるか?」
「する。合格してクライシスさんに実力で一発殴りたい」
「「「「「「わかる!!」」」」」」
保護者が自分の子に強くなるための環境と設備が整っているのなら受験してみるかと確認すると受験すると即答し他の見学者の子たちも同意する。
勝てるとは夢にも思っていないが目標として鍛えていって一発ぐらいは殴れるはずだと考えていた。
恥を欠かされたことに対してはクライシスと比べて弱すぎる自分たちが悪いと思っているが、それはそれとして一発は殴りたいと思っている。
「………そうですか。来年の入学式が楽しみです。ぜひ受験をがんばって下さい」
教師はどんな思惑があろうと優秀な生徒が来るのは大歓迎だ。
ぜひ入学してほしい。
「あっ、質問があるんですけど大丈夫ですか?」
「構いませんよ」
見学者とその保護者たちは学園内で泊まっている。
教師たちも一緒に泊まることになっており色々と学園のことについて質問していた。
「おはようございます」
「おはようございます……」
翌日、朝になると良い匂いと日光が差し込んできて目覚める。
視線を向けると焼き立てのパンが目に入ってくる。
焼き立ての匂いとふっくらと焼き上がったパン。
無性に腹が減ってしまう。
「向こうにはスープもありますので好きなだけ召し上がってください。おかわりも当然自由ですよ」
お言葉に甘えて早速手に取っていく。
中にはパンを加えながらスープをもらいに行く者もいる。
保護者に、はしたないと叩かれていたが。
「美味い……」
見た目通りの味に舌鼓を打つ見学者や保護者たち。
パンやスープを作った者たちもそれを聞いて嬉しそうにする。
「そういえばクライシスくんより強い人って学園にいるんですか?最強クラスなのは予想していますけど他にいるのか確認したいです」
「………ぶっちぎりでクライシスくんが最強です」
「………なるほど」
やはり設備や環境が優れているんだなと保護者たちは理解する。
ライバルという競い合う相手がいなくても強くなれるのだ。
我が子を入学させるのも悪くないと更に決意を強くする。
「入学願書をもらえないでしょうか」
「大丈夫ですよ。玄関の前に必要な方は持っていけるように準備していますので」
「そうなんですか!わかりました」
入学願書を持っていこうと決める者もいる。
「洗い終わった服は名前が書いている札と一緒に置いてありますので各自で回収してください。もし持って帰らなかったら、こちらで廃棄するので忘れないでくださいね」
その言葉にいらないから置いたままにしようとする者が数名、持ち帰らなきゃと忘れないように気をつけようとする者が数名いる。
特にお気に入りの服だから忘れないようにしなきゃと考える者や強くなろうと決意する切っ掛けとして持ち帰るものは忘れないように心に刻む。
「ところでクライシスさんはどこのサークルに入っているんでしょうか?参考にしたいのですが」
「クライシスくんは同じ事務所の配信者が集まっているサークルに入っているので……。同じサークルに入ったり参考にするのは難しいかと」
「あぁ〜。そうですか……」
強くなるためにまずはクライシスの真似をしようと参考にしようとするが色々と難しい。
まずは配信じゃないし、同じ事務所というのがハードルを上げている。
バイトで同じ事務所に入っても配信者じゃないからサークルに入れない可能性はある。
「ただよくダンジョンに挑んで経験は積んでいるみたいですよ。安全を確認して経験を積んでいけば強くなれると思います」
「本当ですか!?」
思っていた以上に参考に出来そうな情報が入ってきて保護者や見学者たちは喜ぶ。
やはり実戦が一番かと納得する。
クライシスもそれが強くなれた一番の理由だろうと想像していた。
「どこのダンジョンに挑んでいるとかはわかりますか!?」
「基本的にはモンスターが多く出現する場所だと聞いてますね。そっちのほうがたくさん戦えるみたいですし」
「他にも何か情報は有りませんか!?」
「いえ。流石にこれ以上は……」
わからないのもあるだろうが個人情報の観点からもこれ以上は聞けないだろうなと諦める。
だが強くなった一番の理由はわかったのだ。
自分たちも同じ真似をすれば強くなれるはずだと考え、見学者たちは早速挑んでみようと考えていた。




