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お金のために配信者になります〜えっ、人気がないとお金はもらえないんですか?〜  作者: 霞風太
十八章 夏休み 学園見学会

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百三十五話

「これで後はクライシスくんと訓練だけです。何か用事があったりする方は帰っても大丈夫ですので!」


 後はクライシスくんとの訓練だけと聞いて期待で胸を膨らませる保護者と見学者たち。

 配信で一度だけ訓練の様子を見たことがあるが実際に体験するのは初めてだから楽しみにしている者がほとんどだ。


「えっと。それではこの先にクライシスくんが準備して待っていますので」


 誰も帰らないことにちょっとだけ驚きながら案内している生徒はクライシスが待っている部屋への扉を開ける。

 その次の瞬間に膝を屈してしまいそうになる。


「は?」


「え?」


「なにこれ……」


「え?……え」


 その後ろにいた見学者や保護者たちも同じように屈していまいそうになったり膝を地面につけてしまった者もいる。

 この先にいる何かが恐ろしくて本能が屈してしまっている。


「入ったらどうだ?」


 部屋の奥から聞こえてくる声に従う以外の考えが浮かばない。

 入った先にはクライシスがいた。


「放課後では偶に俺が精神修行と組手をしているなぁ。今回は精神訓練だけだ。学園の生徒より未熟な相手に組手は危ないだろう?」


「……は……はい…」


 クライシスの放つ気配に気圧されて頷くことしか出来ない。

 意見も何も言えなくて学園の生徒はこれを訓練の度に当てられているのかと少しばかりの尊敬の念を抱く。


「全員、ある程度の距離を開けて座ったらどうだ?今回の訓練は俺の殺気にその場で意識を失わず暴れず耐える訓練だ。この経験を積めば、ある程度はパニックになることはなくなるだろうなぁ?」


 クライシスが何か言っているが頭の中に入ってこない。

 ただ言われるがままに従って、早く終わってほしいということしか思えなかった。




 最初に感じたのは怖気だった。

 ゾワリと身体が震え、全身の毛が逆立つ。


 次に襲ってきたのは暴れ回りたくなるような恐怖。

 何でも良いから身体を動かして、この恐怖を忘れたかった。

 だけど、それはクライシスと視線があった瞬間に許されなくなった。

 クライシスの人目が暴れるな、意識を失うな、耐えろと告げてあった。

 従わなければ、どうなるかわからなくて恐ろしかった。


 その次に襲ってきたのは脱力感。

 暴れることも意識を失うことも許されず何も出来ないことに絶望したせいだ。

 そして尿意が襲ってきても力が入らないで垂れ流してしまう。


 そして次に感じたのは可笑しさ。

 何故か笑いがこみ上げてきて笑ってしまう。

 何が面白いのか笑っている自分自身ですらわからない。


 その次は目の不快感。

 気づいたら涙が流れていて前が見えづらく目が痛い。

 どれだけ拭いても涙が溢れてきて袖が重く痒くなってくる。


 次は喉。

 今もずっと笑っているせいで喉がガラガラになってきた。

 そのせいで声がかすれても、どうしても嗤うことが止められない。


 次は鼻の痛み。

 気づいたら鼻水が出ていた。

 それでも拭うことも出来ず、ただ垂れ流しになってしまう。

 流し続けたせいで鼻が痛い。


 その次はズボンの重さと濡れた感触。

 股下には水たまりが出来ていた。

 更には股間に濡れたモノが密着して痒くて気持ち悪い。

 濡れた原因が直ぐに察したせいで余計に涙が出てくる。


 そして、それらは一緒に参加していた生徒や教師も同じだった。

 彼らもまた見学者やその保護者と同じ目にあっている。

 これまで経験したことのない殺気にやり過ぎだと止めることもできない。


「………?」


 クライシスはそんな周りを眺めながら首を傾げる。

 異臭がしたことに何が原因か探して察し、その上で誰も止めようとしないことに疑問に思う。

 やり過ぎたなら慣れている学園の生徒なら止めるはずなのに誰もしない。


「まぁ、良いだろう」


 殺気を止める。

 何か理由があって止めなかったのだろうと止めてから思いつくが止めてしまったものは仕方がないと諦める。


 視界の先には誰もが顔を青くして地面に倒れ込んでいる。

 動く気力すらもない様子にクライシスはため息を吐く。


 ただの殺気でそうなるならダンジョンに挑んだら直ぐに死んでしまいそうだ。

 この学園に入学するなら徹底的に鍛えたほうが良いんじゃないかと思う。


「?お前らまで何をしているんだ?この程度の殺気なら慣れたものだろう?」


 次にクライシスは同じ学園の生徒に疑問をぶつける。

 何度か似たような訓練をしたくせに見学者たちと同じような状況になっているのが理解できなかった。

 少なくともクライシスにとっては初めて訓練で殺気をぶつけた時と変わらない程度のモノをぶつけたと思っている。

 それでも生徒たちは耐えてたくせに、今見学者と同じ姿をさらしているのは理解ができない。


「「「「「「「…………」」」」」」」


 クライシスの文句に生徒たちは言い返す気力すら出てこない。

 だが生徒たちは初めての時よりも圧倒的な殺気だと確信を持っている。

 でなければ見学者たちと同じようにならない自信がある。


 それも当然だ。

 クライシスも今年入学した一学年の生徒。

 年齢的にもまだまだ未熟で強くなる余地がある。

 だから初めて殺気を浴びせたときよりも強くなっているし、無自覚な緊張で感覚もズレて殺気がクライシスが思っている以上に強くなっていた。

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