百三十一話
「はい、終了です。お疲れ様でした」
クライシスは生徒たちから距離を取り大きく手を叩いてから宣言する。
その言葉に生徒たちはやっと終わったと崩れ落ちる。
生徒たちの顔や身体の至るところが青く痛々しい。
何度も殴られ蹴られたせいだ。
最初は一撃を食らうたびに気絶していたのに途中から痛みはあっても気絶できなくなった。
自分たちが慣れて耐えれるようになったか、それともクライシスの手加減が上手くなったのか。
両方だとしても比率はクライシスの手加減が上手くなったのが大きそうだ。
「各自、好きに帰っても大丈夫ですよ。それじゃあ」
「待って!」
そう言って帰ろうとするクライシス。
そんな彼に生徒たちは待ってくれと声を上げる。
「?どうしました」
「最終日は皆でバーベキューしないか?学園にも許可をもらって」
「別に良いけど……。学園に許可って学園の敷地内でやるつもり?」
「そのつもりだけど……」
まぁ、良いかとクライシスは寮の部屋へと戻ろうとしたのを職員室へと行き先を変更する。
目的は当然、バーベキューの許可をもらうためだ。
もし職員室にいなかったら明日、もしくは学園案内の日に確認しようと決める。
「先生いますか?」
「どうした?訓練が終わったのなら報告しなくて良いぞ」
先生がいたことにクライシスは運が良いと笑った。
「急に笑ってどうした?」
「先生、まだ正確な日程は決まっていませんけど夏休みの終わりに学園の敷地内でバーベキューをやりたいんですが」
「………良いぞ。正確な日が決まったら教えてくれ。俺も参加したい」
「じゃあ夏休みの最終日にします」
「良いけど他の奴らに相談しなくて大丈夫か?」
「まぁ良いかなって」
問題ないのなら良いがと書類を取り出す教師。
クライシスは早速とばかりに日付と時間を書いていく。
「昼から夕方までやるのか?」
「はい。あと夏休みでの訓練の最終日にバーベキューの予定を伝えて参加する人はできれば食料を持ってきてもらおうと考えています」
「なるほど。私も肉とか持ってくるよ。……家族も参加して良い」
「お願いします。家族の方も連れてきて構いません」
それならお言葉に甘えて連れてこようと教師は決める。
夏休みの最終日が今から楽しみだ。
「それじゃあよろしくお願いします」
「あぁ、わかってる」
クライシスはそう言うと今度こそ寮の部屋へと戻っていった。
「なぁ……?」
「なんだ……」
「俺達でバーベキューの許可をもらいにいかないか?できれば早いうちに許可をもらいたいし」
「……そうだな。もしダメだってなったら早めに諦めたり違う場所でやれば良いし」
たしかにと頷いて大声を出して聞き始める。
この場にはクライシスの訓練を受けた者がまだ全員いる。
訓練で疲れたせいで、まだ動けていなかった。
「さんせーい」
「次の訓練の時にバーベキューの許可をもらう?」
「できれば今日が良いんだろうけど動けない……」
「わかる。早くて明日かな……」
生徒たちは疲れ果てて動く気力もなかった。
今日はもう寮の部屋に戻って休みたい。
「うおっ、大丈夫か!お前ら!」
そうしていると教師が生徒たちのいる場所へと来る。
訓練していたことは知っているから帰ったか確認のためだった。
ちなみにクライシスにバーベキューの相談を受けた教師でもある。
「だいじょうぶです。少し休んだら動けます」
「本当にそうか?まぁ夏休みの最終日はバーベキューをするらしいから頑張れよ?」
「え?」
「クライシスくんはバーベキューをするための学園の敷地の使用許可の話をされたんだが聞いてないのか?」
「え?」
教師から話に顔を見合わせる生徒たち。
クライシス自信もバーベキューに乗り気で、しかも先に話を通してくれたことにガッツポーズを作る。
「あっ。一応言っておくけどできるだけお前らも食材とか持ってこいよ。俺も持って行くから」
「?先生も参加するんですか?」
「あと家の家族もだな」
「おぉ…」
先生とその家族も参加すると聞いてかなり大きい規模になりそうだなと想像する生徒たち。
以前と同じように鉄板も持ってくるべきだろうなと考えていた。
先生がこうして話してくると言うことは許可も得たのも同然だろうし今から最終日が楽しみでしょうがない。
「明日、俺達で誰が何を持ってくるか話し合わない?」
「オッケー。皆は大丈夫?」
その確認に全員が頷く。
もともとクライシスの訓練の次の日は疲れて動けないだろうから予定は空けていた。
「じゃあ明日の午後に集合しない?」
「りょーかい。クライシスくんはどうする?」
「…………クライシスくんにも伝えて参加させよう。誰か連絡先持っている?」
「あっ、俺隣の部屋なんで伝えておきます」
「マジで。じゃあ頼んだ」
クライシスへの連絡は隣の部屋の生徒が伝えてくれるらしく言葉に甘えることにする。
教師も家族を連れて参加するらしいし自分も家族を連れて来て良いのか確認しようと決める者もいる。
もし、そうならどれだけの人が集まるのか、どれだけ食べ物を持ってくれば良いのか、不安と興味でいっぱいだった。




