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お金のために配信者になります〜えっ、人気がないとお金はもらえないんですか?〜  作者: 霞風太
十六章 夏休み 学園の課題

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百十九話

「おじゃましまーす」


「お邪魔します」


「これお菓子だからもらってくれ」


「お邪魔するわね」


「ありがとうございます。適当なところで座っていてください」


 夏休みの初日クライシスたち事務所の配信者たちは寮のクライシスの部屋へと集まっていた。

 何人かは手土産を持ちクライシスに渡しており、何人かは何かの本が置いてあるテーブルの席に座っている。

 何の本かと興味を持って見てみるとイジメについて書いてある本だった。


「イジメについて本ですか……。読んでみて良いでしょうか?」


「大丈夫です。あと近くにあるノートも良ければ確認してください」


「へぇ。何が………」


 クライシスの頼みに軽い気持ちで読んでみるとイジメが起こる割合やどんな相手が被害者になりやすいかなど各本ごとに記載されている内容がまとめてある。

 これを読めば記載されている本の内容は読まなくて良いんじゃないかと思うぐらいだ。


「すごいな……、これさえ読めば後は大丈夫なんじゃないか?」


「見落としている部分とかないか、できれば確認してほしいです。一人でやったから見落としている可能性は十分にありますし間違って記載していたら最悪ですので」


「たしかにな。……わかった」


 取り敢えずとクライシス以外の全員でノートと本の内容を確認し始める。

 クライシスはそれを見ながら飲み物などを準備していた。




「かなりわかりやすく纏められていて助かった。マジで捗る」


「念の為にあと何冊か買って調べますか?」


「そうだな……。あと五冊くらいか?それが終わったら教育機関などの聞き込みだな」


「…………わかりました」


 教育機関の聞き込みをしても答えてくれないだろうなとクライシスは想像する。

 もしくはイジメに気づいていないか。

 気づいていても口で注意だけして終わらせようとする。

 そのうえで注意もしたし止めようとしたと口にするのだ。


「あとは不登校の生徒とか?教えてくれるかどうかわかりませんけど、どんなイジメをされたとか被害者の方が覚えているでしょうし」


 どうせ加害者は軽い気持ちで楽しんでいるだけだから覚えていない。

 だが被害者は辛く苦しい気持ちだから決して忘れない。


「加害者には聞かないのか?」


「加害者は軽い気持ちでやってますから、それがイジメだと全く気づいていませんよ?だから聞いてもわからないでしょうし」


「そうか………」


 クライシスの発言に空気が重くなる。

 色々と詳しすぎて、色々と察してしまう。


「あとイジメられたって心配とか迷惑かけたくなくて話したくないんですよね。どうやって聞き出すかも考える必要がありますね」


「………イジメられたら、どうすれば良いと思いますか?」


「自分の人生捨てて報復に出るとか?反撃したら、その程度のことでやり返すなんて頭おかしいんじゃないのと被害者面してくるし。そんなの関係ねぇと反撃に出る精神も必要だしなぁ。こちら側もやり過ぎたらダメなんじゃと理性にブレーキがかかるし」


「おう………」


「はい………」


「うん………」


 クライシスの考えにそれぞれが黙り込みながらも頭のメモに刻み込む。

 イジメられている側の心理も聞けて、それをヒントに話を聞き出せるんじゃないかと予想する。


「まぁ結果を話すのにイジメられている相手と場所を出したらまずいから隠すべきなんだろうけど」


「……クライシスはどうだった?」


「最終的に相手の親も出てきて全員に一生の怪我を負わせたはず」


「「「「…………」」」」


 やっぱ経験者だよなと皆は思う。

 イジメてきた相手本人だけでなく親にも反撃したのかと恐ろしく思う。

 それだけイジメられた本人の恨みが強いのだと理解し過去にイジメをしていないか思い出そうとして恐怖する。


 その中でもヤーキはひどく怯えていた。

 手ひどく反撃を受けた一人だ。

 もしかしたら自分だけでなく家族にも手を伸ばしているんじゃないかと震える。

 今生きているのは運が良いのか悪いのかもわからない。

 もし家族にも手を伸ばされていたら自分のせいで被害に合うのだから生き地獄だ。


「………それ問題にもならなかったの?」


「さぁ?それ以降、相手側の話を聞いてませんし興味もなかったので」


「………そうですか」


 相手の親も怪我させたと言っていたし巻き込まないようにしたんだろうなと想像させる。

 また暴れられたらたまったもんじゃない。


「話を変えよう!」


「どうやったらイジメられないか、イジメに対抗できるかとか?実際にイジメの被害者と加害者と教育機関の人たちに何人か聞いてみたいです」


「おっ、そうだな」


 楽しそうな顔をで意見を提案してくるクライシスに少し不穏なものを感じるが、それでも意見自体は良いものだから賛成する。

 被害者相手には難しいだろうが、それ以外の者なら聞き出すのも容易のはずだ。


「誰がどこに聞きに行くのか先に決めておきますか?」


「取り敢えずクライシスくんは絶対に一人で聞きに行くな。最低でも二人以上にしてくれ」


 暴れられたらたまったものじゃないと思わず声に出す。

 その言葉にはクライシス以外の全員も頷いていて同意していることに安堵する。

 クライシスも皆がそういうなら良いかと、他の人達も念の為二人以上で行動したほうが良いと提案しながらも納得してくれた。

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