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お金のために配信者になります〜えっ、人気がないとお金はもらえないんですか?〜  作者: 霞風太
十五章 夏休みの開始

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百十七話

「クライシスくん!」


「どうした?」


「夏休み、この日は鍛えてもらって大丈夫か?無理なら無理で良いから」


「はぁ……」


 クライシスの夏休みの予定を聞いて数日後、クラスメイトたちは訓練の予定表を書いて提案する。

 鍛えてもらうよりは実際に戦ったほうが何倍も価値があるだろうと思いながらクライシスは確認する。

 強くなるのに適した方法は人によって違うし、これが最も効果がある方法な者もいるだろうから何も言わない。


「………あっ、この日は無理。先生たちに手伝って欲しいって言われたし」


「え。この日って学園説明会の日だよな。手伝うの?」


「そう」


 クライシスが指した日は学園説明会の日だ。

 そのことは先輩にも聞いて知っていたしクライシスが手伝うとは予想もしてなかった。


「………一週間に一度か。それぐらいなら良いか」


「なら頼む!」


「鍛える内容は俺が決めてよいのか?」


「構わない、構わない。いつもそれで鍛えてもらっているし」


「なら、そうさせてもらう」


 いつものように鍛えるか、それとも実践形式で鍛えるかクライシスは迷う。

 実践形式の方が強くなれると考えているが弱すぎると手加減が面倒だ。

 だがいつものように鍛えるにしても時間が勿体ない。


「………どうするべきなぁ」


 夏休みはまだとはいえ近い。

 それまでに考えないといけないのが色々と面倒だった。




「クライシスくん、大丈夫かな?」


「多分、大丈夫だろ。色々と面倒をかけてしまっているのは悪いが学園が優勝するためだし」


「そうだけど鍛えるにしても色々と考えなきゃいけないみたいだし」


「……まぁ、配信でも大変だと愚痴ってたしな」


 クライシスの配信を欠かさず見ているからこそ大変だとよく聞いている。

 それでも鍛えてくれるのなら、それに精一杯甘えるのつもりだ。

 そのぐらいしないと強くなれる気が全くしない。


「それでもクライシスくんの好意に甘えないと強くなれないからな」


「それはそう」


「迷惑を掛けられないと自分たちだけで鍛えても強くなれた気がしなかったし」


「わかる」


 生徒たちは互いに頷きあう。

 クライシスに鍛えてもらうと地味だが強くなれる実感がたしかにある。

 他の訓練なんて考えられなくなるぐらいだ。


「やっぱクライシスくんが強いから、その影響か?」


「地味な訓練は私達もしているけど効果をあまり感じなかったのにね」


 クラシスがいるかいないかで効果が変わるのかと話し合う生徒たち。

 もしそうなら、これからも訓練の時は常にクライシスがいた方が良いんじゃと考える。


「「「「「「っ!!!?」」」」」


 そして怖気が走った。

 クライシスは配信でも愚痴ってしまうぐらいには訓練の相手をすることに疲れている。

 それなのに無理を言ったら、どうなるかわかったものじゃない。

 実際、先輩の何人かはクライシスに対してひどく怯えている。

 

 あの姿を見て殺されかねないようなトラウマを刻まれたのは事実だと生徒たちは確信していた。

 自分たちも同じような目にあわないと考えるのは恐ろしくて無理だった。




「………面倒くさいなぁ」


 クライシスは鍛えることにオッケーを出したが、少し時間が経つとやはり面倒だという思いが強くなる。

 あくまでも自分は誰かに鍛えてもらうことなく強くなった。

 なら他の皆も同じことをすれば強くなれるはずだ。


 それでも鍛えると約束した以上、反故にすることは出来ない。

 だが事前に誓約書を書かせて鍛えれば多少の事故があっても大丈夫かと考える。


「………死にかけて休止に一生を得れば強くなれるだろうし、マジで一回死ぬ一歩手前まで追い込むか?」


 それで恐怖を覚えて二度と頼まなくなっても都合が良い。

 だいたい物語でも一度死んで強くなるのはよくある話だし、実際に強くなったら文句も出ないだろ。


「クライシスくん、どうしましたか?」


「シクレさん。………ただ夏休みも週に一回は鍛えることになって、どう鍛えるべきか頭を抱えてます」


「………いつものように地味な精神訓練じゃあダメなんですか?」


「良いですけど、それじゃあ俺がつまらないでので」


「?クライシスくんがつまらないだけで済むなら、それで良いと思いますけど……」


「うっ……」


 無報酬で鍛えるのも嫌なのだが、それを口にしづらい。

 世の中には一見して弱そうだからとカツアゲする者もいれば、逆に心配して助けようとしてくれる者もいることは知っている。

 だけど、ここまで誰かのために行動するのが当然だという信じ切っている瞳を目の前に口にするのはキツかった。


「同じ学園の仲間で大会を優勝するための仲間ですし。クライシスくんは強くて余裕があるのだから少しは協力したほうが良いと思いますよ。何もしないから周囲に悪感情を持たれたら私は嫌です」


「…………わかりました」


 嫌がらせか攻撃してくるならともかく何もせずに黙って見ているだけなら想像するだけでも嫌だ。

 それで攻撃したら完全にこちらが悪者になってしまう。

 そう考えると鍛える以外に選択肢はなくて、それがクライシスは癪に障った。

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