十話
「おはようございます!!」
昨日、あの後はそのままヤーキの舎弟と一緒にダンジョンを脱出して終わった。
そして翌日の今日、教室に入るとヤーキが待ち構えており大声で挨拶をしてくる。
「おはようございます。事務所の先輩ですよね?何かありましたか?」
「はい!サークルの勧誘とあいさつに来ました!!」
サークルの勧誘と聞いて興味を持つクライシス。
ヤーキ本人も所属しているし事務所に配慮をしてくれるところかと想像する。
「サークル活動ですか?」
「はい!配信活動をサポートするために作ったサークルです!本来なら5月から入ることが出来ますが紹介しに来ました!」
「なるほど。見学自体は出来るんでしょうか?」
「問題有りません!ぜひ見学していきますか!?」
「お願いします」
「それでは失礼します!」
最後まで大声を上げて退室していくヤーキ。
その姿にクラスメイトたちは一歩引いためで見ていた。
「………ちょっと良いか?」
「何でしょうか?」
ヤーキが見えなくなったあとクラスメイトたちが近づいてくる。
少し怯えた目と少し開いている距離。
配信を見ていたからこそ、今の丁寧な言葉が逆に怖い。
「人を殺していないよな……」
「?ダンジョンに挑んだことが無いんですか?」
「………ない」
「ならカツアゲなんて良い方ですよ。カツアゲ自体が偶にあることですけど、そんなことより先に殺して奪うえば良いって考えるやつもいるし」
「………嘘だよね」
「証拠はないけど本当ですよ」
今までダンジョンに挑んだことはほとんどなく配信でしか見たことが無いから嘘だと断じることもできない。
先生に聞いて確認する必要があると感じる。
「親にダンジョンに挑むのは止められなかったの?私なんてまだ早いってこの学園に入るまで禁止されていたし」
「何度も止めらていましたけど次第に諦めてくれましたよ。最初は三十分。大丈夫だと思えば一時間って感じで。途中から好きにさせてもらいましたし」
「そういうやり方もあるんだ?人に殺されかけたことは言ったの?」
「言ってません」
だろうなと納得する。
もし言っていたら止められていただろう。
「あれ?配信で言いませんでした?」
「……あの後、怒られた。人を殺したことがあるのか聞かれた」
「でしょうね!」
親も配信を見ていたのかという同情よりも怒られたことに納得しかない。
多分、知ってたらダンジョンに行くのを止める。
自分なら止める。
「それよりも性格が配信のときと変わってない?やっぱりキャラを作ってんの?」
「うん。まぁ……」
「いや。あれは戦闘になると思って変わるだけで最初は変わってないだろって何でお前が頷いてんの?」
「顔を出して不特定多数の誰かに話しているんだから、ある程度は丁寧にする必要はあるし」
昨日の配信を思い出して丁寧だったかと首を傾げるクラスメイト達。
ほとんどがコメントを見てないし先輩相手にもタメ口だった。
「丁寧?」
「学年も事務所でも先輩だから敬語で話す必要はあるだろ?」
「あぁ、うん。………自覚がないんだな」
「待て。本気で言っているとは限らないだろ」
「あの顔を見て……?」
視線の先には何も分かってなさそうな顔。
本気で敬語を使っていると思っているように思える。
「はぁ………。なぁ、俺たちはダンジョンにほとんど挑戦したことはないんだ。お前から見て必要そうなことを教えてもらってよいか?」
「……わかった。黒板使ってよい?」
「書いた分だけ好きな昼飯を一日分奢ってやる」
「待ってろ」
昼食を奢ると言われて目を輝かせるクライシス。
豪華になると金がかかるし、その分の金額がチャラになるのならラッキーでしかない。
「なるほど……」
そして勢いのままに書かれていく。
ソロで挑むな、役割分担はきちんと話し合って決めろ、まだ大丈夫だと思うな、喧嘩は後にしろ、など多くのことを書いていく。
当たり前のことしか書いておらず本当に重要なのかと疑いたくなる。
「当たり前だと思わないほうが良いですよ。結構な割合でこれらが原因で揉め事を起こしている奴らを見たことがあるからなぁ?気づいたら死んでいる奴らも結構いたもんだ」
「「「ひっ」」」
配信でも見た表情に言葉使い。
女子たちは悲鳴を上げ、男子たちも鳥肌を立てて警戒する。
「おはよう。クライシス君も昨日の配信は見ていたぞって皆どうした?黒板に何をを書いているんだ?」
「俺にとってのダンジョンに挑むために必要なことです。実際、これが原因で死ぬ奴ら多いですよね?」
「ほんとにな!クラスメイトがこれで揉事してたら助けてくれないか」
「巻き込まれて死ぬので嫌です」
教師の全力の肯定に嘘ではなくマジだと察してしまう生徒たち。
しかも、いくら実力があるといえ同じ生徒のクライシスにも協力を頼んでいる辺り相当な問題になっているのも理解してしまう。
即答するクライシスもそういった光景を何度も見てきたのだろう。
流石にクラスメイトたちも冗談だとは思わず真剣な表情でメモを取り始めていた。
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