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お金のために配信者になります〜えっ、人気がないとお金はもらえないんですか?〜  作者: 霞風太
十二章 代表の決定と情報開示

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九十二話

「大丈夫ですか?」


「う………」


 意識が目覚めると目の前にはシクレの顔が見える。

 隣にはフレールやヤーキの姿。

 どうやら、あの後気絶させれたらしい。


「クライシスくんは…?」


「クライシスくんなら、あそこで本を読んでいますよ」


 指を指した先に何冊かの本を積み重ねているクライシスがいる。

 何冊も積み重ねている本にどのくらい寝ていたのか気になる。


「どのくらいの間、意識を失っていた?」


「一時間ほどですよ」


「一時間?」


 本を読んでいるクライシスの姿を指さしながら信じられなさそうな顔で時間を確認する。


「本当に?」


「どうしました?」


「あんなに本を読んでいるのに一時間?」


「あぁ……。あれは前に読んだ内容を探しているみたいですから気のせいですよ。………それでも本を読むスピードは早いですが」


「そういうこと」


 最後になにか付け足していた気がするが小声で聞こえずに納得するビース。

 次に一緒に戦ったヤーキとフレールを探す。

 だが辺りを見回しても見つからない。


「今度はどうしました?」


「フレール先輩とヤーキ先輩はどうしたんだ?私と一緒に気絶したんじゃないのか?」


「それは……。あぁ、そろそろですね」


「どういうこと………よ?」


 目の前で走り去るフレールとヤーキの二人。

 いつから走っていたのか大量の汗を流しているのが見える。

 おそらくは自分がより先に早く目覚めて走り始めたのだろう。


「……いつから走っているの?」


「三十分前からですね。意識を戻して何が足りないか説明を求めたら、あの中の本を読ませてから走らせましたよ」


「なるほど。少し私も聞いてみる」


「はい」


 おそらくは本にかかれている研究成果などを読ませて走らせたのだろうと予想できる。

 それが一番の近道だと説明したのかもしれない。

 今も本を読んでいるのは自分に納得できる説明させるための内容を探しているのかもしれないとビースは想像する。


「私は何が足りない?何を鍛えれば良い?」


「あの二人と同じように肉体面で答えるのなら走り込み。全身の筋力を鍛えることができるし体力もつく。あとビース先輩の場合はあの二人より柔軟と身体を自在に操れるように鍛えたら強くなると思いますよ。というわけで柔軟の方法と身体操作トレーニングが書いてある本です。」


 そう言って何冊かため息を手渡すクライシス。

 近くにあるメモには渡された本のタイトルが書かれてある。


「………読み終わったら返すわよ」


「?再確認したり理解を深めたりするために読み返さないんですか?」


「至急、新しく買い直すわ」


「別に気にしなくてよいですよ?」


「いえ買うわ」


 軽く見ただけでも結構な線が引かれてある。

 今でも使っているんだろうと理解して同じものを買うことを決める。


「それでどこでこの本を買ったのよ?」


「………さぁ。いろんな本屋に行って買うから、どこで買ったのかというのは覚えてないです」


「そう……」


 この本を買った店なら同じ本があるんじゃないかと思ったがわからないのなら注文するしか無いかと考える。

 クライシスが読書家なのもなんとなく理解できるし嘘ではないのだろう。


「それと学園最寄りの本屋なら比較的早く取り寄せてもらえますよ。学生なら割引もしてもらえますし」


「………ありがとう。今から注文しに行くわ。悪いけど借りるわね」


「気にしないでください」


 早速とばかりにビースはクライシスから借りた本を手にして本屋へと走っていく。

 その姿に何日ぐらいで戻ってくるんだろうとクライシスは予想していた。


「ところでクライシスくん?」


「どうしました?」


「クライシスくんは学園別の大会は出場するならソロやパーティにタッグ。どれに参加するつもりですか?」


「ソロ」


「…即答しましたね」


 シクレの疑問に出場するのならソロだと即答するクライシス。

 他人のことを考えなくてよいし好きなように戦うこともできる。


「?もうその時期なんですか?」


「そうなりますね。多分ですけどクライシスくんたちのクラスでも立候補者と推薦者の話が出ると思います。私達もクラスでも今朝出たばかりですし」


「へぇ」


「あと学年ごとの大会や学年無差別の大会もありますよ。どちらか片方にしか出れませんが詳しいことは先生から話があるはずです」


「………学年ごと無差別両方にソロとタッグとパーティ戦があるんですか?」


「はい」


「…………」


 終わるのに何日かかるんだと絶句するクライシス。

 その分拘束されそうで思わず嫌そうな顔をする。


「あの?なんで知らないんですか?詳しいルールはともかく無差別やそれ以外は知っていてもおかしくないですよ!?なんならいろんな人たちが見に来ますし!?」


「…………多分ダンジョンに行ってた。たまに大会を見ないのか聞かれてたような気がするし、その日に限っていろんな所が普段より空いてましたし」


「もう……。もっといろんなことに興味を持ったほうが良いと思いますよ?じゃないと世間知らずと笑われてバカにされてしまいます」


「………喧嘩を売ってくるのなら買えば「ダメです!」」


 クライシスの反論にシクレは力強く否定する。

 暴力で何でもかんでも解決しようというのは悪手だとしか思えない。

 いつか多くの者が協力して力で黙らせてきたことに復讐しに来るかもしれない。


 それを防ぐためにもっと一緒に行動して、いろんなことに興味や視線を向けさせようと考える。

 それに、そういう理由があれば二人きりの時間が増えるという打算がシクレにもあった。

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