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ハネ Unu plumo
みづからの光のごとき明るさをささげて咲けりくれなゐの薔薇
――佐藤佐太郎
一枚の羽として生まれて以来、華麗なる大鳥に使役される日々が続く。
なにがきっかけだったのだろう、わたしはふと、恋というものをしてみたくなった。
それからは恋のことを思うばかり、まわりの羽と息も合わず気流に乱れをつくる。
そのうち大鳥がわたしを嘴で引き抜き、あっさりと投棄した。
わたしは空を飛ぶ存在の一員である身分を奪われ、野に落ちた。
わたしを迎えに、だれか頼もしき人が駆けつけただろうか?
そんなことはなかった。誰ひとり来なかった。
雨が降った。羽であるわたしはにわかにできた川に流され、泥にまみれた。
わたしは力を失って眠りゆく。
しかしわたしはなんだか満足していた。
自らの外にあるすばらしいものを求めて、得られない時の気もち――
それはまさに恋だったから。
Fino
旧作に筆を足し、あらためました。
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