ハーフ
家に帰ると、一人、家族以外の人。
「おとん、おかえりぃ」
「おじゃましてます」
落ち着きの違う声、娘の友人が来ていた。今日は前に聞いていた、お泊まり会の日だった。栗色の髪に青い瞳、整った顔立ちはお人形さんみたいで、これはみっともない姿など見せられない、部屋着を洗い立てアイロンされたものに着替える。
「なに意識してんの」
「別にそんなんじゃないんだが」
妻につつかれて反発する。どこか気後れ気味でも自分の家だ。娘たちが興じているリビングにいつも通り入っていき、テレビを付け、声も掛ける。
「もう夕飯は済んだ?」
「うん」
娘が答える。唐揚げがおいしかったわ、と言う平たい丸顔は妻そっくりで、隣とは対照的。
「ご馳走さまでした」
友人はお行儀のよい、その唐揚げがおいしかったと相槌を打つ。
「今度、レシピを教えてもらうんです」
「別に普通やけどな。気に入ったん?」
「うん」
やりとりにちょっと加わりたく、だからそれとなく訊ねてみた。
「ママはアバウトなんです」
苦笑しながらの答え。お母さんはイギリスの方だそうで、定番というかなんというか、私も料理音痴だから、とのことで。
「偏見はあかんよ」
相槌しそうで、娘が眦をキリッとさせてくる。確かにいけない、お国柄とか、どこの国の子だとか。揶揄してしまうのは、軽口でも、そんなつもりがなくても、とにかくよくない。
「うちかて大阪と東京のハーフやねんから。行こっ」
そっぽを向いた娘は友人の手を取り、二階へと上がっていった。
しまった、しもたかなぁ。
やらかしの後悔に、気にしない、妻は柔らかな目で返してくれた。
「大丈夫やない。ハーフの子のその手の話なんて、そこらありふれとるんやから」
生まれてくる子供の30人に1人くらいが、ハーフかクオーターの昨今。どことどこの人の子供でも、普通に過ごしていく社会となるのだろう。
「うちの子も君と僕のハーフだし、ね。はははっ」
まぁ…そやね。ふふふふっ。
ちょっと間が空いたが、妻は押し気味に笑いを合わせた。