表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ハーフ

作者: 楽部

 家に帰ると、一人、家族以外の人。


「おとん、おかえりぃ」

「おじゃましてます」


 落ち着きの違う声、娘の友人が来ていた。今日は前に聞いていた、お泊まり会の日だった。栗色の髪に青い瞳、整った顔立ちはお人形さんみたいで、これはみっともない姿など見せられない、部屋着を洗い立てアイロンされたものに着替える。


「なに意識してんの」

「別にそんなんじゃないんだが」


 妻につつかれて反発する。どこか気後れ気味でも自分の家だ。娘たちが興じているリビングにいつも通り入っていき、テレビを付け、声も掛ける。


「もう夕飯は済んだ?」

「うん」


 娘が答える。唐揚げがおいしかったわ、と言う平たい丸顔は妻そっくりで、隣とは対照的。


「ご馳走さまでした」


 友人はお行儀のよい、その唐揚げがおいしかったと相槌を打つ。


「今度、レシピを教えてもらうんです」

「別に普通やけどな。気に入ったん?」

「うん」


 やりとりにちょっと加わりたく、だからそれとなく訊ねてみた。


「ママはアバウトなんです」


 苦笑しながらの答え。お母さんはイギリスの方だそうで、定番というかなんというか、私も料理音痴だから、とのことで。


「偏見はあかんよ」


 相槌しそうで、娘が眦をキリッとさせてくる。確かにいけない、お国柄とか、どこの国の子だとか。揶揄してしまうのは、軽口でも、そんなつもりがなくても、とにかくよくない。


「うちかて大阪と東京のハーフやねんから。行こっ」


 そっぽを向いた娘は友人の手を取り、二階へと上がっていった。


 しまった、しもたかなぁ。


 やらかしの後悔に、気にしない、妻は柔らかな目で返してくれた。


「大丈夫やない。ハーフの子のその手の話なんて、そこらありふれとるんやから」


 生まれてくる子供の30人に1人くらいが、ハーフかクオーターの昨今。どことどこの人の子供でも、普通に過ごしていく社会となるのだろう。


「うちの子も君と僕のハーフだし、ね。はははっ」


 まぁ…そやね。ふふふふっ。


 ちょっと間が空いたが、妻は押し気味に笑いを合わせた。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ