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神父様の過去

あの日は、雨が降っていましたね。そうだ、雷も鳴っていました。

私は、我が神への祈りを捧げていた最中でしたね。

確か。村の入り口から女性の叫び声が聞こえてきたのが始まりでした。

私は祈りの最中でしたが、次々と聞えて来る悲鳴に、思わず祈りを中断してしまいました。

人とは業を背負わずにはいられない生き物なのでしょうか。


「この村は、人と魔物が結託して邪教を信仰している!誰一人として生かすな!!」


馬に跨った男性は、剣を高らかに掲げながら大きな声で自らの殺人を正当化していました。

同族である人間、罪を一切犯していない魔物。そして、平和な村。

彼らは、そんな私達の村を。一日にして崩壊させてしまったのです。


「っ!何を仰るか。この村は人と魔物が手を取り合っている、大陸一平和な村です!!」


私は大きな声でそう主張しました。・・・が、この言葉が彼らに届くことはありませんでした。

いえ。初めから、彼らはそんなことを気にしてはいなかったのです。

彼らは、逆う者を蹂躙する快楽。村人達の努力を踏みにじる快楽。

他人の財産を奪い取る快楽。他人をいたぶり、殺害する快楽を、享受したかっただけ。

彼らは、神父である私の前で神像を汚し、教会に火をかけ、唾を吐いたのです。


「神に対してこのような行為を行うとは、なんと罰当たりな」


私の言葉を聞いた騎士の一人が、下卑た笑みを浮かべながら私に問いかけました。

「お前達が信仰する神は、お前達を見捨てたみたいだな」

神父である私が、その様な挑発を真に受けるわけがありません。・・・普段なら。

奴らは、神の無力さを私に見せつける様に、目の前で村の者達の首を刎ねていったのです。

老若男女問わず、一人また一人と。

そして、首が一つ刎ねられるのと同時に、

零れ落ちる涙と共に私の信仰心もまた薄れていってしまいました。

否。神は甘すぎると考えるようになってしまったのでした。罪とは、罰せられて初めて許されるもの。

しかし、神が人や魔物に与える罰は『死』のみ。そんなものだけでは、生ぬるい。

・・ケダモノに慈悲深き神父は必要ない。

私は、笑いながら首を刎ねていた騎士を魔法で殺し、武器を奪って村の者達を解放しました。


「コイツ、仲間を殺りやがった」


残りの騎士達が激高し、一斉に私目掛けて襲い掛かって来ます。

私は、魔法を放ち、武器を振るい、痛みに耐え、ただただ戦い続けました。

やがて、村を襲った騎士達が皆、地に伏し。村に静寂が訪れた時。


「ああ神よ。貴方が神罰をお与えにならぬのなら、私めが代わりに悪を裁きましょう」


雨が止み、差し込む太陽の光に。私は祈りを捧げました。

魔物に害をなす人。人に害をなす魔物。私は彼らを地上から消し去ることを心に誓ったのです。

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