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反乱勢力“か”皇帝陛下篇 第8話

「ルシファン様。相手。想像以上」


私も少女の戦士の言葉に「ああ」と同意し、額から流れ出る血を拭う。

私、妖艶の魔女、神父、マザー、午後のティータイム、少女戦士。

さらに、第四防衛都市防衛軍総司令官アウグスト・ライフアウゼン中将。

魔物協会ラデール支部長(元S級魔物協会員)三好みよし権蔵ごんぞう

持てる最大戦力を投入したと言うのに。たった一人の魔物に抑え込まれるとは。

否。怒りで我を忘れているからなのか、それとも単に経験不足なのか。

相手の動きは、その無尽蔵とも思える魔力を力任せに振るっているだけ。

簡単に言ってしまえば、素人そのものの動きだ。

ただ。逆に言えば。相手が素人の動きであるから我々はまだ生きているのだ。

もし、この力を持っているのが勘解由小路や赤城なら。我々は確実に死んでいる。

・・・消耗戦か、撤退か。いや、ここは消耗戦覚悟で戦う!

勘解由小路は重傷で、赤城やセルゲイと言った脅威も疲労している。

奇襲のアドバンテージがある内に、少しでも戦力を削っておかなければ。

町に出る被害は・・・この際、仕方ないか。

冷静さを失っているとはいえ、市民のことを考慮せずに力を振るうとは。まるで、愚かな人間のようだ。


「『泥化』、『凝固』、『瓦礫』『収集』『成形』・・・『瓦礫弾』」


地面を泥にして、我々の足が沈んだ瞬間に凝固。後に瓦礫を集めてぶつけて来る。

私はその攻撃を回避できたが、マザーと午後のティータイムが直に攻撃を受けてしまった。

マザーは結界で、午後のティータイムは糸で作った壁で少しは防げていたようだが。

遠くからでも分かる程の負傷。明らかに致命打となっている。

・・・聞いたことも見たこともない魔法。そして、異様に短い詠唱。

特殊スキル持ちか?元は希少種であるから不思議ではないが。

まあ、なんにせよ厄介な魔法であることに変わりはない。

街中でやっては、民に被害が出るからと控えて来たが。

今までの激しい戦闘で、殆どの民は避難しただろうし。もういいだろう。


「『竜化』!」


・・・竜の姿になって、改めて全体を見てみると。ハインリッヒの恐ろしさがよく分かるな。

周りの建築物の破損具合、地面の荒れ具合。なにより、可視化出来る程の魔力残留子。

・・・かつて『魔導王』と呼ばれた、魔帝国第26代皇帝アーサー・フォン・コイル=ドル。

彼の有している魔力は高濃度かつ高密度で、彼の放った魔法の痕には可視化できる程の魔力が残った。

当時の学者はそれを『魔力残留子』と名付け、色々と研究したようだが。

結論として『魔力残留子』を残すには、一度に膨大な量の魔力を消費するか、

皇帝コイル=ドルと同等以上の、高濃度かつ高密度な魔力を有している者が、

何十何百年と魔導の研鑽を積まないといけない。と言う結論が出た。

ハインリッヒは、膨大な量の魔力を消費はしていない。

つまり『魔導王』と同等以上の、高濃度かつ高密度の魔力を有していると言うことか。

クソ。危険な魔物とは思っていたが。もっと詳しく調べるべきだったか。


「ルシ君!」


妖艶の魔女の叫び声、と同時に顔に激しい衝撃が走った。

・・・どうやら。殴れらたようだ。頭がボーっとする。

膨大な魔力で全身を覆うことによって、攻防を完全に一体化しているのか。ハインリッヒは。

私の意識が完全に飛びそうになった瞬間、視界の端に仲間達の姿が映った。

そうだ、ここは戦場で。今は私が仲間の中で最も強い。私が倒れれば全てが崩壊する。


「ガァァァァァ!!!!!!」


私は咆えながら、足を突き出し倒れそうになっている体を無理矢理支える。

・・・下位の龍にならば、匹敵するかもしれない『古竜』ですら一撃で気絶しかねない攻撃。

ただ。今思えば、私が油断していたから当たった節もあるだろう。

ハインリッヒの動きは、まだそこまで速くない。どうやら、大量の魔力を制御しきれていないようだ。

ますます、ここでケリを付けておきたいが。マザーと午後のティータイムは戦えるような状況じゃない。

他の皆も少なからず疲れを見せている。そして何より、ハインリッヒを倒したとしても、

その後ろには赤城、セルゲイ、クロイツェル一家と言った強力な敵も残っている。

連れて来た兵達も大半が死んだ。はぁ。彼らも、決して弱くはなかったのだが。

撤退、するのもありだが。逃がしてくれるような甘い相手じゃない。

向こうに有翼種がいなければ手だてもあったが、竜族のルイーサとやらがいる。

戦闘を継続するにせよ、撤退するにせよ、何か新しい手だてを考えないと。

はぁ。「奇襲攻撃でハインリッヒを殺せなければ、お前達の運命もそこまでだろう」

とスライムの野郎が言っていたが。過剰な表現じゃなかったか。

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