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第148話

『大乱闘を目撃したT・フォン・Hさんの証言』

いや~。アレは、乱闘と言うよりは。一方的な暴力でしたね。

乱闘に参加したのは、リーンさん、童子さん、オルマン君、セルゲイだけでしたが

・・・凄まじかったですよ。

リーンさんは、目にも止まらぬ速さで敵の急所を突いて、素手で気絶させちゃうんですよ?

童子さんは、鎧の上からでもお構いなし。凄いスピードとパワーで敵を粉砕してました。

あの魔物、鎧を紙を千切るかのように引き裂いたんですよ?ヤヴァくないですか?!

パワーが化け物級なのに、スピードまで上げちゃうとか(しかも防御力も滅茶高いし)。

あっ!既視感があると思ったら、昔戦ったゴル・ドゴさん?もそんな感じだったよな。

オルマン君は、自分のアイテムボックスから『針』を取り出して敵の急所を一瞬で突いてました。

最後にセルゲイは、「童子とか言う奴、やるな!」とか言いながら、自分も素手で戦ってました。

いやぁ。皆さんお強かったですよ?はい。もう、俺なんていらないんじゃないかって思うくらい。

特に、伝令であるはずのオルマン君。アレは、確実に私よりも強いですよ(涙)。

まあ、それはさて措き。戦闘終了後、即座にリーンさんが頭を下げに来た。


「申し訳ありません。弟は、普段は大人しいのですが、売られた喧嘩は絶対に買う主義で・・・。

いえ、言い訳はよくありませんね。この度は誠に申し訳ありませんでした」


リーンさんはそう言うと、もう一度深く頭を下げて来た。

俺は慌てて首を左右に振りながら

「いえ。別に問題はありませんから。それに私の部下もちゃっかり参加してますし」

と困った顔をしながら答えた。

それより、この倒れた魔物達をどうするかだな。今すぐこの場から立ち去るか、証拠隠滅を図るか。

でも、40人全員をなんとかすることなんて出来ないし。逃げる方が楽か。


「それより、早くこの場から立ち去りましょう」


俺の言葉を聞いたリーンさんは、ハッとした顔をして頷いた。

そうして、俺達は人目を避けながら。アダムスの営んでいる酒場までやって来た。

いよいよ、アダムスとの再会。・・・うう、なんか緊張してきた。

なんて考えていると、リーンさんが店の扉を開けて中へ入って行く。

まあ、深く考えても仕方ない。と言うことで、俺もリーンさんに続いて店の中へと入った。

カウンターに女性が一人。一人席に見覚えのある男。

入ってすぐの扉の横に、葉巻を燻しているこちらも見覚えのある男が一人いる。

そして、店に入ってすぐに。俺の体の周りをグルグル回りながら、ニオイを嗅いでくる女性が一人。

四本の腕に、スリムな体、中性的な見た目に、美しく透き通るような薄茶色の髪。

スーツと貴族男性の着る服を合わせたかの様な服装に、黒色の革手袋を身に着けている。

感じとしては、男装した女性。と言うか、まんま男装した女性だ、この魔物。


「私、クレイシー・クロイツェル!貴方、私の旦那様にならない!」


女性・・・。クレイシーさんがそう言った瞬間、背後からとてつもない殺気が飛んで来た。

クレイシーさんに対してもそうだけど、俺に対してもありえない殺気が飛んでくる(涙)。

俺は、そのあり得ない程の殺気の密度の濃さに小動物みたいに、

縮こまって震えることしか出来なかった。

そんな場の雰囲気を一瞬で察した、一同が音速で動いた。

リーンさんと童子さんは俺の目の前の女性を引っ張って、遠くへ連れて行く。

リネットちゃんとルイーサが、麗香さんのことを落ち着かせて、

美紗貴とロミーが俺とクレイシーさんの間に立つ。

(ついでに赤城、セルゲイ、オルマン、ゴローの男4人衆は、

俺と同じくずっとオロオロしてた(汗)。)

この場に、不穏・・・じゃないけど、少し不穏な雰囲気というか空気が漂った。

俺はもう。ホントに、小動物の如く縮こまって震えることしか出来ない(涙)。


「皆様、どうか落ち着いて頂きたい。それと、勘解由小路様。

愚娘が失礼を申し上げましたこと、深くお詫びいたします」


一人席に座っていたアダムスが立ち上がったかと思うと、俺達の前に立って深く頭を下げた。

その間に、カウンターにいた女性がクレイシーさんのことを叱っていた。

なんと言うか、状況がカオス過ぎて付いていけないんだけど・・・(汗)。

暫くすると、全員が落ち着いた。はぁ。最近、展開が超急な上、激しいから体力を滅茶消費する。


「改めまして。私、アダムス・クロイツェルと申します。

そして、もうご存じかと思いますが。こちらが長女のクレイシー、次女のリーン、長男の童子です。

扉の隣にいるのが私の弟ディーン。そしてこちらが、私の妻の凛紬と申します」


アダムスは、所謂営業スマイルで淡々の自分の家族のことを紹介してきた。

えっと。こう言う時ってどういう反応をすればいいんだ?全く分からん。

とりあえず、俺も仲間のことを紹介しておいた。多分、間違ってないと思う。うん、多分。


「ええ。皆様の勇士は存じ上げております。

それではハンリッヒ様、以前のお話の御返答を頂けますでしょうか?」


来た。とうとうこの質問が来てしまった。・・・だが、急いては事を仕損じるとも言うし。

俺は緊張を少しでも解すために、大きく息を吸って吐いた。

そして、アダムスの目を真っすぐ見つめながら答える。


「もう少し、お話を聞かせて頂けるでしょうか」

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