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第143話

「貴族の脱税、裏切り、人員の不足、他国からの干渉、借金奴隷制の利用。

魔帝国は窮地に立たされている。ツェーザハルトよ、何かよい考えなどはないか?」


皇帝陛下のテントに挨拶をしに行ったら。・・・捕まった。

どうやら、アザゼル宰相からの愚痴が色々と(手紙として)届いているらしく

「解決策はないか?」と現在進行形で相談されている。

最近は軍の仕事ばっかりしてたから忘れてたけど。皇帝補佐官なんだよな、本職は。

・・・嫌な立場になっちゃったなぁ。って言うか、質問の仕方があまりにも投げやり過ぎないか?

貴族の脱税と裏切り、これが人員不足に直結してる。そんで、貴族が脱税をしたり裏切ったりするのは、

お金と食糧が不足していること。それは戦争が原因で、他国からの干渉も似た感じ。

と言うことは、財政と人員不足さえ解決すれば、かなり状態は良くなる。かな。知らんけど。

そう言えば、魔獣の素材が不足してるって言ってたけど、魔帝国には魔獣牧場があったのでは?

って思ったけど、確かあそこはあんまり強い魔獣は育成してないんだったな。

高位の魔獣はテルク樹海か、大穴から。だから、正規兵が他国よりも多い。それが魔帝国だった。

でもそうすると、財政をよくするには、大穴を取り返すしか・・・。

いや、テルク樹海は取り返したんだから、状況はよくなるのでは?

と思いたいけど、冒険者だけじゃ捕獲できる数も限って来るし、

文官とか貴族とかは復興を優先しないとか。

う~ん。でも、その復興を行うにしてもお金も人手も足りない。あれ?問題が根本に戻っちゃった。


「やはり、良い案は思い浮かばぬか。アザゼルをも悩ませる問題だ、仕方あるまい」


皇帝陛下はそう仰ると、大きな溜息をついて。テントの入り口の隙間から見える外の景色に目を向けた。

ははは。まあ、俺は前世ただの高校生だし。政治なんて出来るわけがないんだよ。

俺が多少、政治や軍事のことについて考えられるようになったのは・・・・・・・・・・・。

うう。思い出すだけでも、全身の鳥肌が立ってくる。そう、そうだ。

麗香さんからの超超超超超超超超超超超超超超超スパルタ教育の賜物・・・うん、賜物だ。

でも、だからと言って優秀な皇帝補佐官になる。ってわけじゃない。

残念ながら、俺は物語の主人公じゃないから、そこそこ優秀な文官レベル止まりだ。

ジークとかなら、前世からスペック高かったし、良い案の一つや二つ思いつくんだろうけど。

はぁ。前世からのThe・モブである俺には、少々荷が重いよ。


「失礼致します。赤城准尉が到着なされました」


色々と考えていると、テント前の兵士が中に入って来て騎士特有の敬礼をした。


「そう言えば、お前達は敵地に潜入するためにこちらに来たのであったな。

はぁ。お前達も働いてもらってばかりで申し訳ない。

終戦の後、しかと褒美を用意したいと考えておるから、今は耐えてくれ」


少し申し訳なさそうな顔をされている皇帝陛下に、

俺も他の兵士と同じ騎士団の敬礼をしてテントを後にした。

外では、やつれた顔の赤城が羨望の眼差しで俺のことを見つめていた。

・・・あれ?前に似たような光景を見た気がする。

と思った瞬間、赤城が涙を流しながら俺に抱き着こうとしてきた。ので、回避した。

ら、勢い余ってそのまま転んでしまい。・・・そこまではよかったんだけど。

転んだまま起き上がらない。少し心配になって顔を覗き込んでみると。赤城は、死んでいた。

俺は両手を合わせて「南無南無」とだけ呟いて、この場から立ち去ろうとする。


「ちょっ!ツェっちゃん?!なんでワイのこと無視するん?酷ない?ワイが何したっちゅうねん」


と、女の子座りをして、手は祈りを捧げるポーズ。そして、目をウルウルとさせて俺のことを見つめる。

・・・なんだ、女の子がやったら可愛いんだろうけど。男がやると・・・・・・・・・・・・・・。

いや、皆まで言うのはやめよう。俺は大きな溜息をつきながら、赤城の肩を掴んで立ち上がらせる。


「いやだわ、ツェーザハルト様!漢女おとめには優しくしてくださいまし」


俺はアホなことをやっている赤城の頬を、全力でつねっていた。

最近、分かったことがある。赤城はそれなりに頑丈だ。ということである。

多少、つねったり殴ったりしてもビクともしない。

ただ、殴るのは流石にアレだから。つねることにしたのだ。うん。ふざけた赤城が悪い。


「痛い~。ちょっとふざけただけやのに、酷いわツェッちゃん」


と涙を流しながら、ヤツが手を離すようにお願いしてきた。ので、つねるのをやめてあげた。


「・・・おふざけもほどほどにしないと、もう一回つねるからな?」


俺は赤城の頭を掴んで全力で締め上げながら、圧を掛ける。

すると赤城は「痛っ!分かった!分かったから!痛っ!ごめんて、ツェッちゃん」と謝って来る。

俺は大きな溜息をついて赤城の頭から手を離し、麗香さん達が待機している

テントに向かって歩き始めた。

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