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10名の反逆者

「暗黒騎士殿は今回の転生者、どうだと思う」


その日は、珍しく寡黙な狩人殿が話し掛けて来た。

全身を包み隠すかの様な狩人装束、滅びたとされる『太古狩人の一族』を象徴する仮面。

ただ、声と胸部の軽い膨らみ、そして本人の証言曰く、女性らしい。

まあ、それはさて措き、急に何故そんな質問を?・・・直接本人に聞いてみるか。


「何故、急にそのような質問を?」


私の問いかけに対して、狩人殿は僅かな時間押し黙った後、言葉を発する。


「貴殿も分かっているだろう。劉備殿、関羽殿、張飛殿は見た目は兎も角、相当なお歳だ。

それに、老兵殿や、貴殿。そして私も、そう長くはないだろう。

と言うよりも、次の転生者が現れた時に、戦力になれる保証がない。

要は、私達には時間がないのだ。恐らく、今まで通りに戦えるのは此度の戦いまで。

ふふふ。私は冷静に見えて、実は焦っているのだよ。

あのクソスライムに報いることが出来ないんじゃないかってね」


そう語った狩人殿の声色からは、確かに焦りと憎悪が感じ取れた。

・・・ただ。その気持ち、確かに私も理解出来る。

まあ私の場合、狩人殿とは違って『責任を果たさないといけない』と言う使命感から来るものだが。

長きに渡る戦いの中、多くの同志がウィドー陛・・・。ウィドーとその配下との戦いで倒れた。

結果的に、真の実力者のみが残った訳だ。が、同志として完全に信頼できるかどうかは別問題だ。

狩人殿は、理由こそ話してはくれないが、確かにウィドーを滅することに協力的で。

老兵殿は、実力こそ信頼に値するが、ウィドーとの戦いに何故身を投じているかは分からない。

皇帝殿は、毎度満面の笑みで「世界を滅ぼそうとしてる奴と戦うのに、理由なんているか!」と

言っている。ハッキリ言って、正気の沙汰とは思えないが。信頼できる人物ではある。

それに、彼の師は『異界の戦士』だ。実力も確かなものだと言える。

戦乙女殿は、両親の敵討ちだと言っていたか。動機には少々思うところがあるが。

異界の戦士の父と龍族の母を持っていた彼女の力は、

ウィドーと戦うのに大いに役立っているのも事実だ。

武士殿は、狩人殿と同様、理由こそ話してくれないものの、ウィドーを滅ぼすのには協力的だ。

蛮族殿は、夫と子供の敵討ちだと言っていたな。そのためなら命をも投げ出す覚悟なのは

少々思うところもあるが。夫(異界の戦士)に認められるだけの力は保有している。

暗殺者殿(本人は執行代理人と言い張っているが。)は、一族の敵討ちと世界を守るためと言っている。

最初こそ本心か疑っていたが、彼の行動からして彼のその言葉は確かなものだ。

博士殿・・・は、正直言って何を考えているのか、何を行おうとしているのか。全く分からない。

仲間であることは認めているが、同志であることは個人的にまだ認めていない。

指揮官殿は、老兵殿と同様、実力は信用できる。

ただ、ウィドーとの戦いに身を投じている理由は分かっていない。

・・・結局、真に信頼できる者は、狩人殿、皇帝殿、戦乙女殿、武士殿、蛮族殿、

暗殺者殿といったところか。

確かに、今回の戦いを逃せば。劉備殿らと私、狩人殿、老兵殿を失うことになるかもしれない。

劉備殿を失えば、ウィドーが完全体として復活するだけでなく、大穴から大量の魔獣が溢れ出る。

今回の転生者についてどう思うか、か。確かに、心配するのも頷けることだ。

ただ。今の私に言えることは一つしかない。


「・・・今まで、異界の戦士達は皆、身命を賭してウィドーと戦ってくれました。

わざわざ、平和な時代や安全な国からやって来て、私達を助けてくれた異界の戦士もいました。

彼らは最善を尽くしてくれた。そしてここまで来たのです。私は、この度も彼らを信頼するのみ」


私はそう言うと、真剣な眼差しを狩人殿に向けた。

彼女は、暫く押し黙った後

「ふふふ。そうか。そうだな。確かに貴殿が正しい。つまらぬことを聞いた、忘れてくれ」

と言い、この場を去って行ってしまった。

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