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後編:暗雲 ~待ち構える強敵~

大穴の奥底。闇と影、光を飲み込む漆黒が支配する地。そこには、黒いスライム状の液体が蠢いていた。

そして、そのスライム状の液体の前には5名の何者かがいた。

全身に鎧を纏う人物。いや、よくよく見てみれば全身が鉄によって作られているようにも見える。

腕は四本もあり、目は薄く黄金に輝いているようだ。

かつては美しい緑色だったことを伺わせる外套は、薄汚れ所々に穴が開いている。

しかし、胸元に記されている剣と戦斧、戦槌と長槍が掲げられた紋章だけは、未だにハッキリと分かる。

四本腕は口から白い息を漏らしながら、スライム状の液体に話しかける。


「ウィドー殿よ、我らに話があるとのことだが・・・」


獣が唸るかのような低い声に、どことなく機械音のようなものが聞こえてくる。

四本腕は本当に人なのだろうか。否、それどころか生物ですらないのではないか。

だが、今この場にいる全員がそのようなことを一切気にしていない。

知っていると言った様子や、触れないようにしていると言った様子とは違い。

言葉にするなら、興味がない、もしくは気にしていないと言った方がいいかもしれない。


「ああ。皆、よく集まってくれた。君達に、少し話しておきたいことがあってな。

私の復活が近づいていることは知っているだろう?そうすれば、あの忌々しい結界も破壊でき、

我ら一同は再び地上の土を踏むことが出来る。だが、その前に一つ問題がある。

近い内に、劉備、関羽、張飛に加え新たな転生者3名。

そして10名の愚民が、私を脅かしに来るだろう。皆には、彼らの相手をしてもらいたい」


深淵より響く声が聞こえると同時に、スライム状の液体

・・・ウィドーは、その巨大な体を引きずり四本腕に近づく。

・・が、何倍にも肥大化し、威圧感の増したウィドーを前にしても彼が怯むことはない。

ウィドーは自らのスライム状の体の一部を鋭い形状に変え、四本腕に襲い掛かった。

すると、四本腕は自らの全ての腕を異空間に入れ、4つの武器を瞬時に取り出しウィドーの攻撃を防ぐ。


「久し振りに見たな。戦鬼神の完全武装を。右手上の雷神殺しの剣、右手下の炎神殺しの戦斧、

左手上の地神殺しの戦槌、左手下の魔神殺しの長槍を。懐かしいな。

私も、その武器に随分と苦しめられたのを覚えているよ」


そう言うウィドーの声には、どことなく喜びの感情が伺えた。

戦鬼神。又の名を暗黒将軍。異界より呼び寄せられし神殺しだ。

自らの世界の『神』を殺戮し、強者を求めて最終的にこの世界へとやってきた。

彼がウィドーの下に留まっている理由は、完全に力を取り戻した彼と戦うため。

そして、ウィドーを討ち滅ぼさんとする異世界人と戦うためだ。


「オ父様、戦鬼神様、仲間同士ノ喧嘩ハ良クアリマセン。ヤメマショウ」


機械音声のような。否、機械音声を発しながら二人の間に割って入ったのは、

辛うじて人型であることが分かるゴーレムだった。

しかし、その体には多くの戦闘用魔道具が搭載されており、凶悪な兵器であることを伺わせる。

だが、彼女の行動は年頃の甲斐甲斐しい娘のようでもあった。

と言うのも、彼女は、かつて戦った異界の戦士が使っていたゴーレムを参考に、

ウィドーが独自で開発したゴーレムだからだ。

そして、ウィドーは彼女に自らが父であると言う設定を与えた。

故に、彼女は自身をウィドーの娘だと思い込み、ウィドーを父と呼ぶのだ。


「我が娘よ、これは『喧嘩』ではなく『戯れ』だ。よく覚えておきたまえ」


ウィドーは、彼女の頭部?を優しく撫で、鋭い形状に変化させた体の一部を元に戻した。

そして、地獄の底から響いてくるような、小さな笑い声を上げた。


「戦鬼神、キャシャロン、黒魔卿、ジン、戦士長よ、旧時代の復活は近い。喜び給え!」


ウィドーの言葉に反応するかのように、大穴に住まう数多の魔獣達が咆哮を上げる。

喜びか、悲しみか、興奮か、そもそも魔獣に感情があるかどうかは分からないが、

少なくとも、この魔獣達の咆哮には感情らしき何かが宿っているように思えた。

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