第129話
赤城と色々話した結果、懸賞金は兵士達全員に分配することにした。まあ、それが一番無難だよね?
それと、腕や足、目などを失って軍を辞める魔物達には、俺が得た懸賞金を幾らか加えようと思ってる。
それで、残った懸賞金は襲われた村の復興支援金として寄付するつもりだ。
俺の実費?私財?まあ、俺が個人的所有してた魔物素材を使った装備代を
回収しようかとも思ったけど。そんな余裕はなさそうだったから諦めた。
それに、魔物素材の相場なんて分かんないしな。はぁ。今回は損しかしてないな。
でも、後悔はしてないし。戦いには勝てた。これ以上は欲張りだ、と言うことにしておこう。
「んじゃ、事後処理はワイと麗香ハン、ラッセマン中佐とでやっとくから。
ツェっちゃんは休んどいてな!あっ!既に麗香ハンが手を打って、ツェっちゃんには一切仕事が
回ってこうへんようになっとるから。諦めて、怪我を治すことに勤しむんやで!」
赤城はそう言うと、呼び止めようとする俺の声を無視して部屋を出て行ってしまった。
アイツ、普段なら面倒事は全て俺に押し付けてくるのに・・・。まっ、楽できるのは良いことだ。
だが、ゆっくりとするにはもう一つ問題を解決しないといけない。
「フィアナさん。なんで赤城と一緒に部屋を出て行かなかったんですか?」
俺がそう言うと、フィアナさんはどこからともなく姿を現して、無邪気な笑みを見せた。
はぁ。この淫魔だけは、俺がどんな状態でもイジメの手を緩める気はないようだ。
でも。なんだろう。この感覚。安心?・・・安心。・・・・安心。・・・・否定・・・したいけど。
この安心感は。・・・そうか!麗香さんも赤城もいつもと様子が大きく違ってたから、いつも通りの
フィアナさんを見て、無意識の内に安心してたんだ!・・・ん?それじゃ、俺がまるでドMじゃ・・。
うん。頭の中を駆け巡ったこの考えは、俺しか知らない。
故に、俺の記憶から抹消すればなかったことに。
「ハル君!なんでか、って聞いたね!!ふっふっふ!!!よくぞ聞いてくれたわね!!!!
一~つ!麗香ちゃんとの恋愛の進展があまりにも遅いから、文句を言いに来たのよ(早口)。
二~つ!一応。私も何かしてあげたくてね。ハル君の今後の行動方針を聞いておこうと思ったの。
これでも私って皇帝陛下直属の諜報員だし?情報収集なら、皆の役に立てるかなって・・・思っただけ」
前言撤回。元気と苛立ちと申し訳なさ、が混ざったこの得体のしれない構文。ムズムズする。
特に、フィアナさんがこんなことを言うなんて・・・。明日はこの世界の終末なのかもしれない。
そんな俺の考えが表情に出ていたのか、フィアナさんは
「何よその顔。失礼じゃない?私だってホンのちょっとだけど、心配してあげてるのよ?」
と言い、頬袋を膨らませる。・・・ここは、いつものフィアナさんだな。
「すみません。皆、いつもと違ってて。ちょっと困ってるだけなんです」
俺の言葉を聞いたフィアナさんは、呆気にとられたような、呆れたような顔をして、
大きな溜息をついた。そして、俺の体を指差しながら、額に手を当てる。
そう言えば、自分の怪我の状況はしっかりと確認してなかったけど。
と思って、自分の体を確認してみると・・・。想像以上にヤバそうだった。
フィアナさんの補足も加えると。俺は3日程眠っていたらしい。
その間、何度も包帯を交換しないといけない程、出血したらしい。
じゃあ、なんで死んでないのかって?なんか、大勢の人が協力して色々してくれた。とのこと。
まあ、突っ込みたいのは分かる。でも、フィアナさんは何も教えてくれないんだ。
なんでも「ハルちゃん、名前とか教えたら諸々の経費とか返そうとするでしょ。だから駄目!」だと
言われてしまった。いや。まあ。確かにそうだけど。・・・それの何がいけないんだ?
「・・ハルちゃん、今までにだって大怪我をすることは何回かあったけど・・・今回はね。
無理な仕事のせいで疲れも溜まってたのか、熱も出すし。
・・・兎に角、ハルちゃんも反省しないと駄目よ」
フィアナさんは腕を組みながら、何故か俺に説教してきた(汗)。
確かに・・・いや。う~ん。これは反省すべきことなのか?
まあとりあえず、皆の態度とかがいつもと大きく違った理由は明らかになったな。
でもそれより、もっと重要なことが気になる。
「俺は、いつ頃動けるようになるんですか?」
俺に質問に対して、フィアナさんは大きな溜息をついた。
「ハル君、何も分かってないじゃない!もういいわ。何も教えてあげない。
医者にも、絶対に何も答えないように命令しておくから!それと、勝手に動いたりしたら、
麗香ちゃんと一緒に、ぶん殴りに来るからね!!!!覚悟して休養を取りなさい」
そう言うと、フィアナさんは早足で部屋を出て行ってしまった。
う~ん。困ったな。どうすればいいんだ?俺が悪いのか?分からん。マジで分からん。
でも。はぁ。麗香さんとフィアナさんを敵に回すことは出来ないし、
今は言われた通り安静にしておくか。
(今日はこの後、リネットちゃんとゴローがAG74と一緒にお見舞いに来てくれた。
で、AG74はお世話係(監視役)として、俺の傍で待機するらしい(麗香さん命令)。)