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第14話

「食事をしながらでいいので、しっかり聞いていて下さいね」


何時も以上に真面目な声と顔をしているカエラ男爵に、俺の背筋も自然と伸びていた。

カエラ男爵曰く

過激派には確実に 大物 が関わっているらしい(仮面の魔人以外の)。

カエラ男爵はリネットちゃんの話を聞いて、リネットちゃんが住んでいた村について調べてみたらしい。

すると 『そんな村は存在しない』 ことが発覚した。

無論辺境な土地にある上、地図などは紙が高価なせいで出回っていない様な世界だ。

だが、魔帝都に住んでいる従妹エレナ・伯爵グラーフ・フォン・カレリーナに頼んで、

大帝都貴族資料館

(貴族のみが閲覧を許可された、魔帝国内最大の資料館)で調べてもらっても、一切の関連情報が出てこなかったとのこと。

大帝都貴族資料館は魔王様直々に 絶対不可侵の資料館である と明言され、勝手な改変即ち極刑である、とも仰られている。

しかし、その大帝都貴族資料館の資料を改変し、未だにそれが知られていないとなると・・・魔帝国有数の上流貴族か、魔王様と何らかの関わりがある魔物か、どちらにせよ、只者ではない存在が、過激派に加担もしくは手助けを行っているのは確実だ。

その意図はともかく、確実に危険な存在であることだけは確かである。


「恐らく、謎の大物は 存在しないはずの魔物リネットちゃん が我々の手にあることを良く思わないでしょう」


カエラ男爵のその一言は、非常に説得力のあるものだった。

リネットちゃんにかまけていた麗香さんやフィアナさんも、何時もの数十倍の真剣さでカエラ男爵の話を聞いていた。

この人達が真面目なのか不真面目なのかいよいよ分からなくなってきたな。

まあそれはさて措き、リネットちゃんはこれから狙われ続けことになるかもしれない。

ということだろう。

それも、魔王様と互角の相手から。

となると、必然的にリネットちゃんと関わりを持った俺達の命も危険に晒されるわけだな。

俺がまた色々と考えていると、カエラ男爵が俺達の前にスッと一つの資料を差し出してきた。

資料を見て一番最初に飛び込んでくるのは 『貴族派閥の有力貴族及び怪しいその他有力者』 という文字だ。

カエラ男爵が最初に渡してきたのは名簿、そして名簿に書かれている人物の詳細情報が書かれた分厚い資料。

そして

「できれば、この場で暗記してこの資料は素早く破棄したいのだけど・・・」

と言って、俺の顔をじっと見て来る。

そこで俺はカエラ男爵の言葉の真の意味を理解する。

はっとした俺は、リネットちゃんの両隣に座っている麗香さんとフィアナさんに目を向ける。

二人は既にリネットちゃんとわちゃわちゃしており、資料の話を聞いてはいない。

そう‼またしても俺は面倒事を押し付けられたわけだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうしよう、俺、あんまし頭良くないよ?こんな分厚い資料を暗記するなんてとてもだけどできないよ?

名簿だけでも覚えられるか怪しいのに。

でも、麗香さんとフィアナさんは元から覚える気がないし、リネットちゃんに覚えてもらうわけにもいかないし、カエラ男爵も後のことは知らぬと言った感じで、食後のお茶を楽しんでいる。

流石は貴族に関わる仕事をしている魔物、面倒事の押し付け方を心得ている!

って、感心している場合じゃない‼

どうしよう、悪魔達ふたりに頼んだところで聞いてはくれないだろうし・・・。

ああ‼俺には他人が絶対に干渉できない 空間 があるじゃないか‼

そこに仕舞っておけば問題ないだろう。

俺はカエラ男爵に

異空間道具箱アイテムボックスに仕舞うっていうのはどうですか?」

と聞いてみた。

カエラ男爵は飲み終えたお茶を受け皿に置き、ゆっくりと俺の方を見ると、優しく微笑みながら

「私は責任を取りませんので、どうぞお好きな様に」

と言ってきた。

そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。

結局、皆酷い奴らってわけだ。

まあいいさ、資料を貰えただけ得だと思おう。

俺は異空間道具箱アイテムボックスにカエラ男爵より貰った資料を詰め込んだ。

静まり返った空間に

「うにゃ~」

と腑抜けた欠伸あくびが響く。

その声の元を辿ると、リネットちゃんに行きついた。

今日は色々とあったから疲れたのだろう。

静かで強張っていた空間が、少しだけ和んだ気がする。

これからリネットちゃんの護衛を務めつつ、魔王様の副官になるための試験を受けなければ

ならない。

過激派を叩き潰すためにも、副官の座を本気で取りに行かなければならないしな。


「それでは、帰りましょうか」

 

カエラ男爵の言葉に俺達は同意して、帰ることにした。

帰りは非常に楽で、カエラ男爵が乗って来た馬車に一緒に乗せてもらえた。

カエラ男爵に非常に良くしてもらえて、町の雰囲気も少ししか味わえなかったが、良いものであったのは確かだ。

リネットちゃんとも出会えたし、冒険者デビューも出来・・・た?

まあ本当に、この街は 思い出の街 だな。

それはさて措き、明日までに竜の飛行速度から身を守る魔法を開発しないとだな。

無論、悪魔達ふたりのためではない。

リネットちゃんのためだ。

決して、悪魔達ふたりのためではないゾ‼‼

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