第121話
・・・セルゲイが、動き出したって情報が入ってきた。はぁ。つまり、戦いが始まる。
この世界に転生してから、初めての集団戦?になるのかな。
しかも敵は、傭兵王率いる高額賞金首達。そんで、味方は俺が指揮しないといけない。うっ。胃が痛い。
よし!作戦の最終確認をしておこう!!
まず、敵が吊り橋を渡り切ったら、魔法で完全に焼却してしまう。
逃げ道を失った敵が、必死の抵抗をする可能性もあるけど・・・仕方ない。
アイツらを早く殲滅しないと、各方面に大きな負担を掛けてしまうことになる。
被害を出す様なやり方は嫌だけど。これは戦争だ。死傷者を出さずに、って言うのは無理がある。
そこを割り切らないと、軍人としてはやっていけない。悲しいけどね。
続けて、敵を村までおびき寄せる。村にはあらかじめ多くの罠を仕掛けてある。
そこで時間を稼がないといけない。と言うのも、村の周りは平らで木が一本もない。
地図を作った時にも確認したけど、万単位の兵士を配置できる広さだ。
でも、『伏兵』を隠しておく場所が10㎞先にある森しかなかった。
だから、そこにいる兵士達約500名が、村に到着するまでは、
100名程度の兵士で600程の敵を抑えないといけない。
まっ。俺や麗香さん、赤城やカイドウ、ラインハルトもいるから、そう簡単にやられることはない!
と思いたい。・・・はぁ。この世に絶対があったらなぁ。
でも、仲間と合流した後は互角以上の戦いが出来るはずだ。
だって、こっちはあらかじめ地形を把握して、罠を設置したりしてるんだから!!
そして!!!近くの廃村に待機させている別動隊が合流すれば、2万対600。
油断さえしなければ、勝利を収めることが出来る!と、思う。
なんて考えていると、偵察部隊の人が帰って来た。
「閣下、数キロ先で敵らしき集団を発見しました」
・・・来ちゃったかぁ。こんなことを言うのはいけないかもしれないけど。
セルゲイがこの地形を警戒し続けて、攻めてこないことをちょっと期待してたんだけど。
まあ、来ちゃったからには仕方がない。そう割り切らないと、俺が死ぬ。
俺は早速、足の速い獣人族の斥候に頼んで、伏兵の方へ伝令を複数出した。
6人も向かわせたら、何かあったとしても一人くらい辿りつけるだろう。
後は、皆に敵が来たことを知らせて、戦闘配置についてもらう。
「麗香さん、カイドウ、前衛を頼みます。消耗を抑える戦い方でお願いします。
大丈夫。俺の知る限りの知識を総動員して作り上げた要塞ですから」
二人は頷くと、自分達の武器を持ってサッと自分達の配置についた。
「赤城、エミル、エリゼ、フィアナさんは、後方支援をお願いします。
魔法での攻撃より、要塞化した村を破壊されない。つまり、基本は防衛に徹底してください。
ですが、前線の兵士達が苦戦しているようなら、支援をしてあげてください。
そこの判断は、皆さんに任せます。
最後に、ミーニャさんはここで待機していてください。貴方達は予備兵力です。
前線が崩壊しかけている所や、増援を頼まれた時に動いて頂きます。
要するに、貴方達は最後の砦です」
各々が配置に着く。俺も戦闘支援を行うべきなんだろうけど。
俺は、戦況を聞いて、見て、判断する。自分で言うのも何だけど、ブレイン役だ。
広範囲の探査魔法を使えるのも俺だけだし、俺の魔法は仲間を巻き込む可能性もある。
・・・もし前線が崩壊して、撤退を余儀なくされた場合、俺が殿を務めることになる。と思う。
あっ!実は昨日思いついて、倉庫の中に仕舞っておいた物資。全部俺のアイテムボックスの中に
収納しといた。これで撤退しても、物資を奪われることはない。
まあ、俺が死んだら。多分、全部消滅するんだろうけど(汗)。
さて、例の村に近づいて来たな。さっきまで俺らのことを監視していた視線を感じなくなった。
敵の指揮官は、とことん几帳面な野郎なんだろうなぁ。だが、それはそれで面白い。
几帳面な策士とは何度か戦ったことがある。
どいつもこいつも、作戦が正確すぎて、寸分の狂いも許さねぇ。って言った感じで。
少し時間をずらしたり、予想外の行動を取るだけで、簡単に勝てちまった。
それに、緻密で正確で洗練されているからこそ、簡単に読めちまう。
強いと言われれば、強いんだろうが。俺を楽しませる程じゃなかった。
が、今回の野郎は、緻密だが大胆。しかも、全く情報がねぇ。
ふざけた作戦を緻密に練り、予想もつかない手段を使ってくる。
今回の敵は、そんな奴な気がしてたまらねぇ。ああ、楽しみだ。
俺の予想通りの奴なら、俺を楽しませてくれる・・・いや、俺を倒してくれるかもしれねぇ。
「山猫族共、お前らは先行して村の様子を見てこい。
俺の予想が正しければ・・・面白れぇことになってるはずだ」
「へいへい」とやる気のねぇ返事を返した山猫族は、完全に気配を消し、先行して行った。
山猫族か。まるで暗殺者だな。いや、狩人の方が表現として正しいか。
まっ、そんなことはどうでもいい。楽しませてくれよ、謎多き指揮官。