第116話
カエラ男爵との挨拶を終わらせた俺達は、今日は一旦休むことにした。
それぞれに用意された部屋で休むもよし、何かやりたいことをするもよし。
ただ、フィアナさんのように「ハルちゃんと麗香ちゃんの部屋は一緒でいいじゃん?」みたいな
野暮な提案をすることは禁止とする。
麗香さんも恋愛経験が少ない上、フィアナさんという価値観がバグってる変態がずっと隣にいた
もんだから、そんなアフォな提案を受け入れようとするし。はぁ。もしかして、俺が変なのか?
・・・いや!それだけはない!!俺は俺の周りにいる魔物の中で最も常識がある!!!
(※これぞ五十歩百歩)
それはさて措き、セルゲイ・ヒラサワ。なんか、聞く限りスペックが裏ボス級なんですけど(汗)。
はぁ。どうしたもんかなぁ。考えれば考える程、勝てる相手じゃない気がする。
ゲームの裏ボス・・・・・・・。ゲーム。ゲーム!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そうだよ、何を難しく考えてるんだ!
相手が裏ボスで、手の届く範囲にいるなら倒すチャンスは絶対にあるはずだ!!!
と、言いたいけど。ゲームとは違って一回死んだら終わりなんだよなぁ。・・・はぁ。
とりあえず、自由度の高い戦略シミュレーションゲームだと思って考えてみるか。
兵数、兵装、兵糧、士気、相手さんのスペック・・・。
作戦を組み立てるなら、最低でもこれらは念頭に置かないとな。
兵数、兵装ではこちらが圧倒的に優位、兵糧は若干不足気味で兵士の士気はやや低下気味。
相手さんは、高額の懸賞首と、元正規軍の騎兵、そして伝説の傭兵。
そこに、『時間』と言う概念を加えると・・・・・・・・・・・・・・・こちらが圧倒的に不利。
あちらは時間を稼げば稼ぐほど有利になり、こちらは時間が経つにつれ不利になっていく。
はぁ。なんで雪って3~4月くらいまでしか降らないんだ?ふざけているのか?
ジークの新王国樹立、原初の魔王ウィドーの復活。問題の量と大きさだけはアニメの主人公級だな。
・・・いかんいかん!!!!今は反乱軍をどう倒すかだけを考えないと。
兵数、兵装では勝っている。兵糧と士気は若干・・・否、完全に負けている。
スペック・・・。認めたくないけど、戦闘力では麗香さんとフィアナさんがこちらにいる。
ラインハルトや赤城、カイドウ。指揮官クラスの能力値は均衡といったところだけど。
問題は俺だよなぁ。セルゲイ・ヒラサワとは圧倒的に経験値が違う。
はぁ。今回ばかりは、指揮官の座を麗香さんや赤城に明け渡した方が賢明なのでは?
でもなぁ、赤城も麗香さんもそんなことさせてくれないよな。となると、真剣に作戦を練らないとな。
俺の得意分野は情報戦。あらゆる情報を精査し、作戦を練り上げる。
敵、味方の情報は当然集めるとして。出来れば戦場の情報も集めておきたいな。
・・・そうだな。まだ襲われていない集落の情報を集めて、その周辺の精密な地図を作ろう。
「よしっ!」
当面の目標は決まった。有翼人種と足の速い獣人系の兵士を主軸に斥候分隊を編成しよう。
4~6名を一分隊とし、少なくとも25個以上50個以下の分隊を編成して、交代で敵の動向を探らせる。
残った兵士達には、武器・兵糧・部隊編成の確認(魔物の細かい種族分け)をしてもらおう。
その間、俺は少数の隊員を連れて戦場になりえる地域の細かい地図を作りに行く。
兎に角だ、全ての情報を調べ尽くして、完璧な作戦を最低でも15通りは用意する。
でないと、戦争を全く経験したことのない俺が、セルゲイに勝てるわけがない。
そうと決まれば、早速行動開始だな。
まずはカエラ男爵の下に行って、地図を制作した経験のある者を紹介してもらおう。
その後は、俺の部隊の隊長クラスの隊員にそれぞれの命令を与える。
うん。いいね。なんか軍隊の指揮官になった感じがする。
~翌日~
麗香さんには全体のまとめ役を、フィアナさんには麗香さんの補佐を。
エミル、カイドウ、には偵察部隊の総まとめ役を。
ラインハルト、ミーニャ、エリゼには、兵糧・兵装・兵士達の細かい種族分けを頼んだ。
ゴロー、AG74、俺、赤城、その他護衛2名と地図製作係4名で、戦場になりえそうな場所の
地図を作りに行く。まあ、まだ襲われていない村の周辺の地図を作るだけだが。
(※リネットちゃんは残って麗香さんのお手伝いをするそうです。)
「なぁ、ツェッちゃん、麗香ハン連れて行かんでええの?麗香ハン怒ってるように見えたけど?」
珍しく、赤城が本当に心配そうな顔でこちらを見つめてくる。
確かに、麗香さんに全体のまとめ役を任せた時、物凄く嫌そうな顔をしていた。
さらに、俺達だけで地図を作りに行くと言った時には・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
でも、今回ばかりは仕方ない。地形の把握は、作戦を立てる上でかなり重要になってくる。
地図を作るだけじゃなくて、ある程度は自分の頭に叩き込んでおかないと。
はぁ。魔帝国軍に入る前は、色々と張り切ってたけど・・・今じゃ、アレは黒歴史だな。
兎に角、今は地図の制作に集中しないと。こうしている間に、村が襲われる可能性だってあるんだし。
俺は心配そうな顔をしている赤城の肩に手を置いて、首を左右に振る。
赤城は一瞬、何かを言いかけたけど、結局何も言わずに歩き始めた。