第114話
「ツェっちゃぁぁぁん!!!!!!!!ええタイミングでよお来てくれたなぁ!!!!!!!」
皇帝陛下からの命令で、テルク樹海方面軍の総司令部に来たんだけど・・・。
何故か、着いた瞬間に滝のように涙を流し始めた赤城に抱き着かれるという、意味不明な目にあった。
それにしても。美紗貴・麗香・フィアナ・赤城・AG74が一堂に会してしまったなぁ。
ああ。この世の地獄と言うのは、まさにこの状況だろう。
「ツェッちゃん!ワイ。気が付いてん!ツェッちゃんは偉大やったってことに!!!」
赤城が俺の服の裾で鼻をかみながら、急に話し始める。
「面倒事は自分から突っ込んで行って解決してくれるし、仕事をどれだけ押し付けてもやってくれるし。
ワイがやらなあかんことまで、放っといたら勝手にやってくれる!!!!!!!!!!!!!!!
ツェッちゃん!あんた程の偉大な『カモ』はおらへん!」
赤城はそう言い終わると、またしても俺の服の裾で鼻をかみやがる。
・・・俺は、赤城の脳天に全力の拳骨を入れてやった。うん。多分。俺は悪くない。
「痛ったぁ!何すんねん、ツェっちゃん!!」と顔を上げた赤城の鼻を思いっきりつねる。
「痛い!痛いってツェッちゃん!!」と、ジタバタと暴れる赤城の目をジッと見つめる。
「ごめんなさいは?」
俺はそう言うと同時に、鼻をつねるのを一旦やめる。
が、赤城はキョトンとしたまま一向に謝ろうとしないので、もう一度全力で鼻をつねる。
「痛たたたたた!分かった!ワイが悪かったから、ツェッちゃん!ツェッちゃん!!許して!!!」
俺は赤城の無様な姿を見られて少し満足した。ので、つねるのをやめてあげることにした。
えっ?なんかあったのかって??う~ん・・・。ちょ~~~~っとだけ、ストレスが溜まってるのかも?
まっ、今はそんなこと関係ないよ!!なんか赤城が変なことをするから忘れかけてたけど。
新しく入ったメンバー(ゴロー&リネット)を紹介しないといけないからね!!
(美紗貴とAG74は・・・なんかいつの間にか出来てたメイド?ってことにしといた!
あと、AG74は人前では『ロミー』と名乗らせることにした。)
「へぇ。ワイがおらん間に色々あったんやなぁ」
赤城は、急に増えたメンバーに特に驚くといった様子はなく、すんなりと受け入れた。
と言うか、『他人事』といった雰囲気だ。ホントに、コイツは・・・・・・・・・。
・・まあ、いつも通りの赤城で安心した(ということにしておこう)。
「あっ!それよりツェっちゃん。この街を管理しとるべベール男爵には挨拶したん?」
あっ!そうだったそうだった。久しぶりにべベールに来たんだから、カエラ男爵には挨拶しないとな。
俺は首を左右に振り「それで、カエラ男爵は?」と、赤城の肩を掴みながら無理矢理案内させる。
赤城は「・・・なんか、あったん?」と俺の顔を心配そうに見つめてきた。
何かあった?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
いや。何もなかったね。ただ、大量の仕事を押し付けられたり、文官に追い回されたり。
AG74や美紗貴という悩みの種が増えたり、急に追加で超難関任務を与えられたり。
俺に対して優しくしてくれる魔物がいないことや、休暇が全然もらえてないことを再認識したり。
うん。それだけだよ?何も。・・・何もなかったから。ストレスなんて溜まってないよ?????
・・・・久しぶりに感じる、誰かからの心配そうな顔と俺を気遣う言葉。・・・沁みる・・・
「な゛に゛ほ゛、な゛か゛っ た゛よ゛、だ い゛じょ う゛ ぶ、」
満面の笑みでそう言う俺の頬を冷たい物が流れていく。
不思議だな。こんなに晴れてるのに、雨が降ってきたみたいだ。
そんな俺のことを、赤城は「なんか。うん。いつでもワイがおるからな?」と
珍しく心配そうな顔をしながら見つめていた。
「あら!お久しぶり!麗ちゃん!!!!!。それにフィアナさんと死喰鬼?さん?
それと、見違えるくらい可愛くなったわね!リネットちゃん?であってるかな?」
赤城に案内されて来た応接室?みたいな場所に入った瞬間。物凄い勢いで、カエラ男爵が迫って来た。
そして、麗香さんに抱き着こうとするんだけど・・・簡単に躱されてしまう。
(どこかで見たことあるような光景(汗)。)
それにしても、蜘蛛人族が勢いよく迫って来る光景は、少しだけ怖かった。
{カエラの身長:(下半身:蜘蛛部分)を含めて2m30㎝以上}。
カエラ男爵。(俺の中で)ちょっとお茶目なクール系お姉さんのイメージがあったのに。
一連の出来事のせいで、完全に『クール系』の部分がなくなっちゃったよ(汗)。
「・・・麗ちゃん。酷い」
カエラ男爵は、ジトっとした目で麗香さんを見つめ、
麗香さんはそんな彼女に大きな溜息をついた。
「客人の前でそんなはしたない真似をするなど・・・。貴族として恥ずべき行為ですよ?」
麗香さんのその指摘は、鋭い言葉の矢となってカエラ男爵の胸に突き刺さった。
(特に、淡々と指摘されることによって、そのダメージにはバフが付く!!)
その後も麗香さんは
「それと。彼は今、死喰鬼ではなく死霊術師です。皇帝陛下より授かった
ツェーザハルト・フォン・ハインリッヒと言う名前もあります・・・・・」
みたいな感じで、カエラ男爵に説教を始めた。
そして何故か、誰も麗香さんを止めることが出来ず。モードはお通夜みたいな感じ(汗)。
(その後、かなり長い間説教が続いた。その間、リネットちゃんは外でゴローと遊んでました!)