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第107話

何度も村の魔物を襲ったり、倉庫を荒らしたりしているのなら、

近くに巣があるだろうと言うことで俺達は村の近辺の森の中を探索していた。


「・・・この辺り、おしっこの臭いがするのデス!」


リネットちゃんがおもむろに木の傍に近寄って、スンスンとニオイを嗅いだかと思うと、

とんでもないことを言い出した。

女の子なんだから、そんなはしたないこと言わないの!

とたしなめたいところなんだけど。リネットちゃんって獅子族。

つまり獣人族なわけで、そういった動物の習性を一部持ってたりするんだよねぇ~。

ええとね。だから結局俺が言いたいのは、これはリネットちゃんのせいじゃなくて

獣人族の習性のせいなんだってこと。

それを裏付ける様に、この場にいる全員がリネットちゃんの行動に対して何ら変に思ってないっぽいし。

・・・これは地球と異世界。人間と魔物の常識の差だと受け入れるしかない。


「じゃあ、この辺を探索・・・・・・・・っ!」


俺はある気配を感じて魔法の発動を準備すると同時に、鉄鎖も構える。

麗香さん、リネットちゃん、AG74、ゴローも同時に戦闘態勢に移る。

テルク樹海で対峙したS級上位の魔獣でも、こんなプレッシャーは感じなかったのに。

緊張のせいか、それとも本能が全力で警戒しているからか、五感が研ぎ澄まされる。

・・・だと言うのに、森から出る音は一切聞こえず、視界も徐々に暗くなっていく。

ありえない。一体何が起こっているんだ?色んな考えが思い浮かんでは消えていく。

そんな時、森の奥の方から『ズルズル、ズルズル』と何かを引きずるような音が聞こえてきた。

俺も、麗香さんも、リネットちゃんも、冷や汗が止まらない。


「マスター。第三次武器使用を申請します」


AG74に許可を出そうとするが・・・声が出ない。

いや。声が出せない。体も微妙に震えている。

でもこれは俺だけに起こった現象じゃないみたいだ。

リネットちゃんは明らかにガタガタと震えている。

麗香さんは正面を集中して見つめている。

いつもなら、戦闘中であっても周りに気を配れる麗香さんが、

今は謎の存在だけに注意を払っている。

だが・・・兎に角、相手に集中しないといけない。

俺は何とか気力を振り絞って、AG74にアイコンタクトで武器の使用を許可する。

こんな状況で言うのもなんだけど、AG74にマスターの記憶を流し込むように設定した前任者は、

良い仕事をしてくれた。

と考えていると、森の奥から黒くドロっとした粘性の液体・・・。

つまり、黒色のスライムが現れた。

しかし、スライムと言うにはあまりにも全てが異常だ。

まず、魔力の保有量が皇帝陛下を軽く凌駕しているし、

発しているプレッシャーがこの世のものじゃない。

外見は、黒色に一点だけ白色があってそこが歪な、辛うじて顔と言える形をしている。

スライム希少レアなんだとしても、説明がつかないことが多すぎる。


「おやおやおや。すまないね、我が民達よ。

私がどれだけ気配を消しても、か弱いお前達を怯えさせてしまう。

だが。安心したまえ。私は民を傷つけるようなことはしない。」


しかも、奴は低く唸るような、辛うじて聞き取れる声で言葉を発している。

エリカと比較しても、何もかもが異常で説明が出来ない。

だが、こちらを攻撃する気はないようなことを言っている。

分からない。奴はなんなんだ?何が目的で、何故ここにいるんだ。


「・・・私は民は傷つけない。しかし、この場には私の民ではない者がいるようだ」


奴は俺を指差しながら、自分の体の一部を素早く伸ばして殺そうとしてくる。

麗香さんの攻撃とは比較にならない程速い攻撃に俺は死を予感した。

その瞬間、「てりゃ!」と言う声と共に奴の体の一部が切り落とされる。

続けて、大刀を持った大男は謎のスライムに目掛けて斬りかかる。

一体何が起こったのか理解出来ていない俺達に、続いて現れた女性が

「こっちよ!」と手招きをした。

全く状況は理解できていないけど、今は女性の言うことを聞くのが一番いい気がする。

何にせよ、俺達じゃあのスライムに太刀打ちできないだろうし・・・。


「行くよ!皆!」


俺は麗香さんとリネットちゃんの手を取って、走り始めた。

後ろからは、地震を彷彿とさせるような激しい戦闘音が森に響き渡っている。

それと同時に「我が眷属よ、奴らを追え!」と唸る様な声が聞こえて来た。

すると、六体の鎧がガシャガシャと音を立てながら一直線に俺達のことを追いかけてくる。

アイツら、重そうな鎧を纏ってくるくせして、信じられないくらい足が速い。

このままじゃ、俺達の体力が先に尽きる気がする。

・・・俺達を助けた女性も同じことを考えていたのか、大きな溜息をついた後に立ち止まった。


「いい?アイツらの倒し方は、鎧を破壊するか無理矢理引き剝がすかして、中身を引きずり出す。

そして、明るいところに連れて行くの。ああ、魔法で作り出した光だと意味ないから、そこんとこ

気を付けてね。それと、この倒し方は人から聞いたことだから、間違ってても文句言わないでね。」


そして女性は「これ、痛いから嫌なんだけど・・・仕方ないかぁ」と呟いた後、

自分で自分の腕に嚙みついた。

彼女の腕から流れた血が腕を伝って手に集まり、刀の形を作り上げる。

大分出血してたけど大丈夫?と思ったけど、女性はピンピンとしている。

肌の色も・・・そう言えば元から白かったな。

生気がない肌の色をしてるし、もしかしたら俺と同系統の種族なのかもしれない。

まあそれはさて措き、鎧の騎士達が追いついて来た。いよいよ戦闘開始だ。

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