第105話
今俺は、麗香さん、リネットちゃん、ゴローとAG74と一緒に冒険者協会に来ている。
と言っても、AG74を冒険者登録させるのは色々と面倒なので、外で待ってもらっている。
ゴローに関しては特に登録とか不要だから問題ない。だから、AG74と一緒に外で待機中だ。
たまに忘れそうになるけど、この世界に従魔って概念ないんだよねぇ。
それとリネットちゃんと麗香さんについてだけど、一応出かけることを麗香さんに伝えたんだよね。
すると、たまたまその場に居合わせたリネットちゃんが「一緒に魔獣討伐したいのデス!」と一言。
そしたら、リネットちゃんが行くなら私も。という流れで二人も来ることが決まった。
はぁ。さて、冒険者証明書の更新と依頼の受領をさっさと終わらせますか。
(現在、リネットちゃんは麗香さんの付き添いの元、A級の冒険者登録試験を受験中。)
「では、変更点をこちらの用紙にご記入ください」
冒険者証明書を受付に渡し、更新する旨を伝えると新しい証明書を渡された。
筆記用具がペンとインク程度だからね。書き換えとか出来ないんよ。
はぁ。鉛筆文化くらいあってもいいだろうに(涙)。
まあ、あるにはあるらしいんだけど、この世界で使われているインクは魔獣から取れてたり、
魔法陣を書くのに利用するのがインクだったり。
と、この世界で鉛筆を使うのは画家か物好きくらいしかいないらしい。
俺も中世ヨーロッパくらいのペンより、鉛筆を使いたい派なんだけど・・・
生産量が極端に少ないから、一本の値段がもう鉛筆じゃないんだよね(汗)。
それはさて措き、変更点を書き終えた俺は受付嬢に新しい冒険者証明書を渡した。
「では、確認させていただきますね。
変更点は進化歴・現種族・活動名・本名・年齢・パーティ名の6つですね?」
俺が受付嬢からの問いに頷き返すと
彼女は「承りました」と言って、受付の奥の方へと行ってしまう。
ああついでに、活動名はハルト。パーティ名は魔獣狩り専門団にしておいた。
(前の活動名は『初心者です!』でパーティ名は『弱いです!』だった。)
まあ、今のところパーティは俺一人だし、パーティ名にこだわる必要はないんだけどね。
なんて考えていると、受付嬢が戻って来て新たな冒険者証明書を渡してくれる。
アレだね、新しい冒険者証明書に印鑑を押しに行ってくれたんだよ。
溶かした蝋の上から鉄の印鑑を押し付ける古典的なヤツだけどね。
(※魔法陣で不正を出来ない様にされているから、ある意味異世界仕様?!)
兎に角、冒険者証明書の更新を終わらせた俺は、適当な依頼を受注して冒険者協会を後にした。
勿論、リネットちゃんと麗香さんが帰って来るまで周辺で待機って状態ですが。
「マスター、今回はどのような依頼をお受けになったのですか?」
街中を歩いていると、AG74が質問して来た。
確かに、今回は皆?にも手伝ってもらうわけだし、依頼の内容は共有しておかないとな。
ということで、四人に俺は依頼の内容を軽く説明。
(あっ!あと、リネットちゃんは試験に無事合格しました。)
「簡単に要約すると、魔獣討伐の依頼だ。
本来、(D級以下を除いて)魔獣の多くはテルク樹海や大穴周辺に生息しているんだけどな。
冬になると体がデカくて消費エネルギーが多いせいで冬眠できない魔獣が、
食糧を求めて大穴周辺やテルク樹海から抜け出して、人里に侵入してくるらしくて。
たとえC級であっても、大型となれば十分な脅威になるんだ」
「なるほど。・・それで、何級のなんと言う魔獣を排除するのですか?」
だが、尋ねられた俺はAG74のその質問に答えることは出来ない。
何故なら、今回の依頼は調査及び討伐の依頼だからだ。
魔帝都から徒歩で半日くらいの距離にある、スラッタ村という村の村長からの依頼。
『村の畑や食糧庫が頻繁に荒らされるようになった。最近は人的な被害も出ている。
これが単独の魔獣の仕業か複数の魔獣の仕業か分からんが、兎に角見つけ出して駆除してほしい。』
てな感じの依頼。ということだけ、俺は皆に説明した。
「冬の時期にはよくある依頼ですね。
ですが、村の人間が目的ではなく村の食料が目的なのだとしたら、草食性か
さほど強くない魔獣のどちらかでしょう」
そう言った麗香さんは続けて「恐らく、肩慣らしに最適な相手ですよ」とスラっと宣う。
これがAG74か、他の信頼できる魔物がした推測なら安心できるんだけど・・・。
麗香さんの場合、わざと俺達の油断を誘うようなことを言って試している可能性もあるからなぁ。
やっぱ、鉄鎖の試験運用のために依頼を受けたことは話さなかった方がよかったかなぁ(汗)。
「冒険は命がけです。嘘などはつきませんよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
うん。分かりました。分かりましたけど、心を平然と読んで来るのやめてくれませんかねぇ?
プライバシーの侵害どころの話じゃないですよ?
はぁ。俺、麗香さんの彼氏としてしっかりやって行けるのだろうか(涙)。