反乱勢力“か”皇帝陛下篇 第4話
雪が降り始めれば戦闘は止む。本来なれば喜ぶべきなのだろうが・・・。
現在、我が魔帝国の心臓部分は敵が抑えている。
そのため、我が魔帝国は甚大な経済的損失を出している。
はぁ。それにしても反乱を事前に察知すら出来ないとは、余も老いたものだ。
この内乱とカザル王国との戦争が終わった後に、皇帝の座を退くのもありかもしれないな。
アザゼル、ドイル、ツェーザハルト、麗香、フィアナ。
うむ。これだけの人材が揃っておれば、余がおらずとも問題なかろう。
それはさて措き、今後の敵の動向が気になるな。
自らの後方を脅かしておる謎の存在の排除に尽力するのか、スパイを送り込み我が方を混乱させるか。
我が軍の補給線を締め上げに来るか、一度前線を退き軍の再編を行うか。その全てか。
いや、このまま攻勢を続けてくるかもしれんな。しかし・・・。
「・・・か・・・へ・・・か・・・陛下」
集中して考え事をしていたせいか、スティアの声を聞き逃していたようだ。
「陛下。お疲れのところ申し訳ないのですが、例のハインリッヒ少尉が率いる部隊が到着いたしました」
スティアからの報告に「ああ」と短く返事を返す。
確かに余は疲れている。だが、兵士達も故郷を遠く離れ、連日激しい戦いに身を投じている。
首都に残った文官や武官達もここ数か月の間、激務に追われているらしい。
戦争によって家族や家を失った民もいれば、この冬を越えられるか分からない民もいる。
そして、ハインリッヒやその部下達はカザル王国で半年以上に渡る長期任務を
終えたばかりだと言うのに、休みもせずにこちらに駆けつけてくれた。
つまりは、だ。余だけが疲れているわけではない。全ての者が疲労を感じている。
否。悲しみや怒り、後悔に苛まれている者すらいる。
そのような中、余だけが休息を取るなど言語道断。
「労いも兼ねて、余自ら彼らに会いに行こう」
そう言いながら立ち上がると、スティアが彼らの下まで余を先導した。
・・・大勢が傷つき、死んだ。特に病が蔓延した時は悲惨であった。
傷つき痛みに悶える中、病に襲われ痛みと高熱にうなされ死んで逝く者もいた。
幸い、近くの都市や町、村からも医者と薬師をかき集め、迅速に対応したことによって
軍の崩壊を防ぐことには成功するのだが。
病魔に侵され、弱った軍隊に反乱者共は追い打ちを掛けて来た。
結果として、余の軍は甚大な被害を受けることになる。
しかし、そんな時に敵の領内で暴れ回っていた謎の戦士が、余の軍を助けるかのように、
10ヵ所近い敵の後方支援基地を破壊し、敵の猛烈な攻勢を中断させた。
謎の戦士。伝え聞く話が本当ならば、相当な実力の持ち主だが・・・。
こんな時、フィアナでもおれば敵の領内の偵察を頼むのだがな。
それはさて措き、わざわざこちらに来たハインリッヒ達には申し訳ないが、
一旦テルク樹海方面に向かってもらうことにしよう。
彼らには、弱った余の軍を救う重要な任務を任せる。