第100話
AG74が、俺と麗香さんの苗字を知っていることに驚いていると、何かを察したAG74が
丁寧に説明してくれた。
「マスターが私めに魔力を流し込んでくださったのと同時に、マスターの記録も、
私の記憶魔法陣に記憶されます。身長・体重は当然、お好みの食事から性癖&黒歴史まで。」
そんなヤヴァイ機能を聞かされた俺は、訳が分からず呆気にとられていた。
すると、麗香さんがAG74ととんでもない会話を始めた!
「ハルト殿の身長・体重は?」(麗香)
「身長185㎝、体重75キロやや筋肉多め、と言った感じです」(AG74)
「では、好きな食べ物は?」(麗香)
「肉です。魔獣<鶏<豚と言う魔物にしては意外な好みをしています」(AG74)
「・・・ふむ、ここまでは私の集めた情報と全て一致ですか。
では最後に好きなタイプの女性は?」(麗香)
「はい。麗香様がドストライクです(即答)」(AG74)
俺は麗香さんの最後の質問に即答で答えたAG74の口を、反射的に塞いでいた。
が、時すでに遅し。麗香さんは勝ち誇った様な目で俺のことを見ている(涙)。
俺は言葉にならない声を出して、膝から崩れ落ちた。
・・・確かに、麗香さんは俺のタイプの女性にピッタリと言えばピッタリ?かな?
でもね、それはどうでもいいんだ。「私の集めた情報と一致ですか」って何?
えっ?実は麗香さん、俺の好みとか全部把握してたの?えっ?だとしたらちょっと怖いんですけど?
それに、AG74の言動から、少し麗香さん味を感じる。
これは、呼び起こしてはいけない存在を呼び起こしてしまったか?
と、とりあえず!AG74にこれだけは命令しておかないと!
「AG74っ!今後、俺の許可なしに俺のことについて一切話すなっ!!!」
俺は、半分切れながらそう言っていた(涙)。
数十分後
何故か、俺の部屋には麗香さん・AG74・リネットちゃん・ゴローの2名1体1匹が集まっていた。
それぞれ
麗香さん:ゴローの件で来ていて、俺の用事が終わったところで、ゴローを連れて来た。
AG74:俺が再起動して、新たなマスターに認定される。
リネットちゃん:正式に俺の部隊に配属されることが決まったので、挨拶しに来た。
(※なお、リネットちゃんがこの部隊に配属されるに当たって、何者かの圧力があったそうだ。)
その・・・リネットちゃんは正式隊員になり。
ゴローは麗香さんが調べた結果、A級魔獣並みの戦闘能力を
持っていて、(勝手に)申請して(勝手に)受理されて、(勝手に)この部隊に配属されることが
決まったらしい。
AG74は「マスターの傍に仕え、お守りし、少しでもお手伝いをさせて頂くのが、私めの役目ですので」
と、俺達について来ることを表明した。端的に言えば、新たに部隊員が1名と1体と1匹?増える。
手続きのこととか、誰がこの件で許可を出したのかとか、AG74は公になれば研究機関に渡さなければ
ならなくなるのでは?とか、色々と頭の中を駆け巡ったけど・・・俺は・・・考えることを・・・
やめた(※情報量が多すぎて頭がパンクしている)。
とりあえず、今日のところは皆の要件を了承して、帰ってもらうことにする。
(AG74は傍で待機すると言って聞かなかったので、部屋の隅で待機してもらうことに。)
今日は、あまりにも急展開なことがありすぎて、頭の整理が追いつかない。
明日辺りには、AG74を勝手に持ち出したことをドワーフ達に怒られそうだし、
文官や武官から仕事を押し付けられるかもだし・・・はぁ。なんかこっちに帰って来てから、
ロクに休めてないな。やっぱ、退職しようかな?退職金とかあんのかな?異世界。
なんて考えながら、俺は自分の机に突っ伏して、いつの間にか眠っていた。
翌日
ドンドンドン、と扉を乱雑に叩く音で目を覚ました。
「儂じゃっ!若いのっ!ここにおることは分かっとるんじゃぞっ!」
声と口調からして、明らかにロルフさんだ。絶対に、勝手にAG74を持ち出したことを怒ってるよ。
ああ、扉開けたくねえ。扉開けたら怒ってるロルフさんに加えて、精神が崩壊しかけてる文官や武官が
大量の仕事と一緒に流れ込んでくる未来が見える。
でもなあ、扉を叩く音が激しくなってる。
このまま放置して扉をけ破られたら、この部屋に刻まれてる魔法陣が発動して
・・・もっと面倒なことに(涙)。
俺は10tはあるんじゃないかっていうほど重い腰を持ち上げて、ゆっくりと扉の鍵を開けた。
「若いのおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」
ロルフさんはそう叫びながら、大量の書類と共に流れ込んでくる。
(俺は外の状況がなんとなく分かってたから、横に避けてたので無傷。)
それにしても、軽く数ヵ月分の仕事量じゃない?これ?
それに外に重要書類を置きっぱって・・・はぁ。皆過労で頭が働かなくなってるんだろうなぁ。
この感じ、俺も魔帝都での用事を早く終わらせて、前線に戻った方が楽なんじゃないか?
なんて考えていると、書類の山に埋もれていたロルフさんが飛び出してきて、俺の胸ぐらを掴んで
前後に揺らしながら
「AG74をどこにやったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
と、聞いて来る。