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第三の何者か篇 第5話

「・・・?!」


洞窟の最奥で、全身を襲う苦痛に耐えていた劉備は、何者かの接近に気が付いた。

張飛が警備している入り口を突破し、朕の下までやって来る存在。・・・”奴”か。

そう考えた瞬間、氷河の下に眠る冷水の様に冷たい風が、洞窟内に吹く。

壁に掛けられていた松明は全て消え、その魔力で作られた特殊な風は劉備の体にも少なからずダメージを与える。

その攻撃によってもたらされた更なる痛みに耐えながらも彼は『ズル・・・ズル』と何かを引きずる様な

音が近づいて来るのに気が付いていた。

劉備が手を前に突き出すと、数十体もの魔獣が主を守る様な姿勢を見せる。


「おやおや・・・。流石、古の転生者。世界で唯一『魔獣を従えることの出来る者』だ」


魔獣の声に反応するように止まった『ズル・・・ズル』という音。

それと同時に、かろうじて言葉だと分かる低い声で、何者かがそう言った。

劉備はその声と言葉を聞いて、この何者かが”奴”であることを確信した。


どうしたものか。今は関羽がいない。張飛も奴の気配には気づけていない。

他の同志達も・・・いや、彼らはいたとしても”奴”をどうにもできはしないか。

『闇』は”奴”の領域。朕だけではどうしようもない。

・・・それに、今は”奴”も本調子ではないようだ。何より、敵意を感じない。

そう考えた劉備は”奴”と会話を試みることにした。


「一体なんの用だ」


劉備の声には、敵意と警戒、憎しみの感情が籠っていた。

そんな劉備の感情を敏感に感じた”奴”は「うはははは」と低い声で笑った。

”奴”はひとしきり笑った後、ゆっくりと話を始めた。


「なに。挨拶をしに来ただけさ。でも、2千年ぶりの再会だって言うのに、君は冷たいな。

おう。もしかして、分身体を寄こしたのがご不満なのかな?

すまないね、まだ本体は本調子じゃないんだ。」


「いや、貴様と会ったと言う事実自体が不満だ」


”奴”は劉備のその言葉に「悲しいなぁ」と返し、話を続ける。


「君は弱っている。しかし、私は力を取り戻しつつある。

今の君は数十体程度の魔獣を従えるのでやっとみたいだな」


「昔は優に数百体は従えられたと言うのに・・・」と言う”奴”の言葉を聞いた劉備は、

魔獣達に”奴”を殺すように命じた。

『推定:S級上位以上』の魔獣数十体が”奴”に向かって一直線に進む。


「愚かな・・・」


そう呟いた”奴”は、全てを消した。匂い、音、気配、何もかもを・・・。

数十体の魔獣が瞬時に完全に消失する。

たった2秒。2秒の間に”奴”は魔獣達を殲滅してしまったのだ。

一瞬の出来事に、劉備の理解が追いつかない。


「全ての者に伝えるがいい。真の王が還って来るとな」


「うははははは」と笑い声を上げ、”奴”がどこへともなく消え去った。

その次の瞬間、消えていた松明に再び火が灯り・・・魔獣達の亡骸が露わになる。

”奴”は、肉塊となった魔獣たちを並べ『真の王が還って来た』と中国語で書いていた。

劉備は”奴”の残忍性に腹を立てつつも、今までに感じたことのない程の恐怖に包まれていた。


”奴”の残忍性は世界を滅ぼしかねない。だが、たった2秒でここまで出来る存在に、勝てるのだろうか?

”奴”は、異世界の言葉(中国語)を習得していた。

別の世界に干渉出来る領域にまで至ったのかもしれない。

つまり・・・”奴”は『神の領域』に至った?いや。それなら何故、朕の結界を破れない。

分からない。”奴”の強さの秘訣も、”奴”に勝つ方法も、”奴”について分かっていることはほんの僅かだ。

一体何者なんだ『原初の魔王・ヴィドー』・・・。

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