第96話
「何をしていたんですか?」
二人の下に駆け寄った俺は、真っ先にそう聞いた。
二人が話してくれた話を超・簡単にまとめると・・・
~俺達がカザル王国に向かう前の出来事~
リネットちゃん「私も、麗香お姉ちゃんと一緒に働きたいのデスッ!」
麗香さん「それなら、正規騎士になる試験を受ける必要がありますね」
リネットちゃん「分かったのデスッ!」
この後、試験内容を麗香さんから聞かされたリネットちゃんは、訓練と勉強を重ねた!
(俺達がカザル王国から帰って来るまでの間。)
~昨日~
麗香さん「それでは早速、明日に正規騎士になるための試験を受けてもらいます」
リネットちゃん「分かりましたのデスッ!麗香お姉ちゃん!!」
~さっき~
正規騎士になるための試験1(筆記)を終わらせたリネットちゃんが、試験2(模擬戦)をやっていた。
とのことだ!!
どうだ!超・簡単、にまとめることが出来ただろ!!
・・・すまん。深夜テンションになってた。
まあ、それはさて措き、今は試験官が合格かどうかを確認しているらしい。
と言うか、こんな多忙な時に、たった一人のために複数の武官が試験に付き合ってくれるなんて・・・。
麗香さんが何かしたのかな?
「彼らの仕事なのでやって当然ですよ。それに、前線の兵士が不足している現状ですから、少しでも
兵士を増やしたいはずですし・・・」
なんかさ、普通に心読んでくるのやめてもらえないかな?麗香さん?
怖い。もう、自分の頭の中すら安全じゃなくなったのが怖い(涙)。
皆、こんな経験したことないだろ?自分の頭の中ですら安心できないなんて。
はぁ。・・・いや、もう愚痴るのも考えるのもやめよう。どうせ、意味ないし(涙)。
なんて考えていると、さっきの(「そこまで」って言ってた)武官が、こっちに駆け寄って来た。
「・・・リネットさんは正規騎士の試験に、無事に合格しました。
手続きが終わり次第、いずれかの部隊に配属されます。」
そう告げ、素早く去って行った。
・・・あの武官の顔も、大分やつれていたし。多分、仕事に向かったんだろう。
前線で散々愚痴ってたけど、後方に残されるよりましだったのかも(汗)。
「麗香おねえちゃん!ハルトお兄ちゃん!やったデス!!」
武官の後姿を同情交じりに見ていると、リネットちゃんが俺と麗香さんの手を取って、嬉しそうに笑った。
ああ、こういうところは昔と変わってないなぁ(※昔=3ヵ月前)。
と、リネットちゃんの頭を撫でようとしたんだけど・・・。
犯罪になりそうだからやめた。子供の姿でも、犯罪になりそうだったけど。
この姿がこの姿で、『セクハラ』とか言われそうで怖い(涙)。
いや、リネットちゃんは言わないよ?隣りにいる、麗香さんとか言う魔物に言われそうなだけ。
そして、そっちの方がヤヴァイってだけ。
あっ!でもそうか。俺、彼女持ちなわけだから、そこらへん色々と気を付けないとなのか。
はぁ。年齢=彼女いない歴の俺が、急に麗香さんみたいな魔物と付き合うことに・・・。
俺、大丈夫かな?今更だけど、色々と不安になって来た(涙)。
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まっ!今は純粋に、リネットちゃんが正規騎士になったことを喜ぼう!!!(※思考放棄)
ん?でも待てよ・・・
「どの部隊に配属されるかは分からないのかぁ」
しまった!思ったことをつい口に出してしまった。
俺の失言を聞いたリネットちゃんの顔から、みるみるうちに笑顔が消えて、目に涙を浮かべていた。
ヤヴァイ。ヤヴァイ!これはマジでやっちまった!!!!!!!!!!
どうしよう。こういう時、どうすればいいんだっ!!!!!!!!!!!!!!!!!
困っていると、今にも泣きだしそうな顔をしているリネットちゃんの頭を、
麗香さんが優しく撫でる。
そして、とんでもない発言をした(汗)。
「大丈夫。私のコネを全て使って、無理矢理同じ部隊にねじ込みますから」
うん。良識を持っている魔物の発言とは到底思えない。
でも、麗香さんの言葉を聞いたリネットちゃんは、「うん!」と言いながら涙を拭った。
そして、次の瞬間には満面の笑みに戻っていた(汗)。
これって、正解・・・なのか?ううん。不正解でもないよな。所謂、力業ってやつ?かな。
ま、まあ、とりあえず、この場はなんとかなったわけだし、一件落着っ!!!!!
「最悪、ハルト殿のコネもフルで使わせますから」
?!巻き込まれたっ。・・・でも俺、そんなにコネなんてないぞ?
ま、まあ、リネットちゃんのためになら、頑張っても、いいかも??
・・・あっ!話は変わるけど、フィアナさんはどこに行ったんだろう?
また男の魔物かな。はぁ。アザゼル宰相にフィアナさんを呼ぶようにお願いされたんだけどなぁ。
あっ、でも、もう丸一日経つのか。とっくに、別の魔物がフィアナさんを呼びに行ってるか。
いや、一応確認だけはしておきたいな。
「話が変わるんですけど、フィアナさんがどこに行ったのか知りませんか?」
と言うことで、俺は二人にフィアナさんの所在を聞いた。