第三の何者か篇 第4話
「うぐっ!!・・・ふー。ふー。」
薄暗い洞窟の中に、苦しそうな呻き声がこだまする。
その声の主は、洞窟の最奥で玉座を模した椅子に鎮座している劉備である。
劉備は全身を駆け巡る激痛に、一人、耐えていたのだ。
10分。いや、1時間。劉備は着ている服が吸える水分の量を遥かに超えた、脂汗をかいていた。
その様子から、劉備がこの世のモノとは思えない程の苦痛に耐えていたであろうことが分かる。
「・・・もう、長くはないな。」
この役目を引き継いでより、早2200年。数多の英傑達が深淵に挑んだ。
そして、二度と地上に戻ってくることはなかった。
かつての盟友も死に、その子孫達は盟約のことを覚えてもいない。
朕に付いて来てくれていた同志達は、戦や病・・・そして寿命によって、一人また一人と減って行った。
新たに同志に加わる者も殆どおらず、今や、新しくこの世界に来た者か、
この世界の英傑に頼るしかない状況。
しかし、もう時間がない。朕の命は、そう長くはないだろう。
だが幸いなことに、近年この世界に来た者がいることを確認した。
美紗貴殿は『覚醒スキル』を持っていなかったが、残り二人・・・転生者がいるはずだ。
人間への転生者か、魔物への転生者か、そのどちらかが『覚醒スキル』を持っているはず。
人間への転生者は既に分かっている。問題は、魔物への転生者だ。
美紗貴殿が目星をつけてくれてはいるが・・・。いや、同志を信じずして誰を信じると言うのだ。
朕は、前の世界でもこの世界でも、多くの同志達に助けられた。
なのに朕は彼らに報いてやることが出来なんだ。
それでも彼らは朕に尽くしてくれたのだ、朕も彼らを信じなければ。
既に、関羽と美紗貴殿が魔物への転生者であろう者に、接触を図ろうとしておる。
劉備は、洞窟の最奥で静寂に包まれながら、ひたすらに耐え忍ぶのであった。