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第92話

帰り道は単純だ。往路で使った道に沿って帰るだけだからね。

魔帝国に着いてから一番最初に行ったのは、ヴァルメル要塞だった。

理由は、そこに残っている部下達に、皇帝陛下が対応されている大穴方面へ向かうように命令するためだ。

証拠探しは『多少手荒くなっても構わない』って、皇帝陛下が直々に仰ったからね!

隊員達を連れて行って、いざと言う時は力技で解決できるようにしておくのさ!

もちろん、ダルフゲン大将にも挨拶しに行ったよ?

「戦線が膠着しているこの状況に痺れを切らし始めている兵士がいる。

そいつらを抑えるの、これまた疲れるんだ。」

と愚痴って来た。

はぁ。やっぱり上層になればなるほど苦労してるんだなぁ。

・・・俺は今の給料で文句ないし、出世はしない様に務めよっと。

それはさて措き、ここで麗香さん、フィアナさん、ルイーサ(とゴロー)を除く

全員と別れることになる。

(ルイーサは毎度のことながら、移動要員として働いてもらう。

本当に、ルイーサ(竜族)がいるだけで、移動時間が格段に変わってくるから、感謝してるぜ。)

皆には、各部隊の隊長としての務めを果たしてもらわないとね!それと、全体指揮は

いつも通り赤城に任せてある。

最近思うんだけど、俺って今のところ隊長らしいこと、何一つしてないよね?

やっぱり、俺は皇帝補佐官に専念して実戦部隊は赤城に任せるのが良いと思うんだ!

まっ、余計なことを考えるのはよして、魔帝都に向かうとしましょうか。

魔帝都に向かう理由は幾つかある。

まず、過激派のメンバーの詳細な情報を知りたい。

そのため、魔帝国にある『大帝都貴族資料館』に行こうと思っている。

あそこは、魔帝国で一番多くの情報が集積されている場所!らしいから。

まぁ、それ以外にも調べたいこととか、やりたいこととか・・・やらないといけないこととか。

色々あるから、うん。ま。うん。休みは、一切ないっす。(涙)。



どんよりとした雲が空を覆って、真っ白な雪を降らせるようになった頃、俺達は魔帝都に到着した。


「お帰りなさいなのデス!麗香お姉ちゃん!フィアナお姉ちゃん!ハルトお兄ちゃん」


そう可愛い声で、俺達の下に駆け寄って来てくれたのは・・・多分、リネットちゃん。

え?なんで”多分”なのかって?ええっと。その。

身長が160㎝くらいになって、顔も大人びている、から?

でも、声とか可愛らしいケモミミとか、見覚えのある部分?もあるんだよねぇ。

そして、麗香さんやフィアナさんのことをお姉ちゃん呼びして、俺のこともお兄ちゃん呼びする。

そんな子は、俺の知る限りリネットちゃんしかいない。


「ええ。良い子にしていましたか?リネット」


そして何より、”あの”麗香さんがこの子のことをリネットちゃんだと認めた。

フィアナさんも「リネットちゃんただいまぁ~」って言ってるし、間違いない。

この子はリネットちゃんだ。でも、なんで1年程度でここまで成長するんだ?

10歳・・・いや、今年で11か?どちらにせよ、そんな年齢にはまったく見えない。

俺が、異様な成長を遂げたリネットちゃんのことを不思議がっていると

「麗香お姉ちゃんがいない間、腕が鈍らないように町にいる悪い魔物をい~っぱいやっつけたんだ!

そうしたら、いつの間にかこんな姿になってたの!」

って、リネットちゃんが俺の顔を真っすぐに見ながら言った。

ああなるほど!つまり、進化したってわけだね!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ん?待て待て待て待て待て待て!!!確かに、俺は不思議そうな顔でリネットちゃんのことを見ていた。

でも、11歳の子がそれだけで俺の考えていることを言い当てるって、おかしくないか?????

もしかして、リネットちゃんは、麗香さんに、鍛えられていて。だからこそ、俺の心も読めた、のか?

そう思った瞬間、俺の背筋は完全に凍っていた。

マイ・エンジェル・イズ・ジ・エンドってことぉ~!!!

(※ツェーザハルトは壊滅的なまでに英語が出来ません。)

あああああああああ。終わりだぁ!この世の終わりが訪れたああああぁあああああああ!!!

もはや、俺に癒しは永遠に訪れない。俺の人生・・・いや、魔物生は今この時をもって下り坂に突入した(涙)。


「ワンッ!」


完全に落ち込んでいた俺に、優しく吠えかけてくれる存在がいた。

そう!ゴローである!!ゴローだけは、俺の傍で俺のことを慰め続けてくれるらしい。

・・・ああ。こいつと俺はずっ友だ。

なんて考えながら、俺はゴローのことを撫でまわしていた。

すると

「さっ!貴方には仕事が残っているでしょう?行きますよ」

と、麗香さんに無理矢理腕を掴まれ引きずられていく。

俺はずっ友である、ゴローに『助けてくれ!』と目で訴えかけた。

・・・しかし!ゴローは気まずそうな顔をしながらも、決して俺と目を合わせようとはせず、

何処かへ行ってしまった。

あの野郎は、麗香さんを目の前にして怖気づき、ずっ友であるはずの俺のことを見捨てやがった!!

俺は・・・俺は・・・俺は・・・(涙)。

俺は、純粋な悲しみを抱きながら、麗香さんに仕事場に連れて行かれるのであった。

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