第88話
俺は麗香さんと付き合うことになった。
まあ、麗香さんはれっきとした貴族だから、非公式な?交際になるのかな?
それとも、この世界は貴族でも恋愛婚とかできるのかな?
この世界なぁ、しっかりしてる所としてない所がかなりハッキリしてるからな(汗)。
それはさて措き、麗香さんは落馬した直後までの記憶は、曖昧ながらあるらしいのだが・・・
その後が全くわからないらしいので、俺が丁寧に説明することにした。
と言って、赤城とジークと別れて、麗香さんを抱えて逃げて、洞窟で一息ついて、子犬と出会って、
麗香さんを看病して、食事を探して、今に至るって感じだからなぁ。
子犬の部分以外、特にこれと言って説明するべきところがないんだよねぇ。
「この子犬、どうするんですか?」
なんて考えていると、麗香さんが子犬と戯れながらそう言ってきた。
確かに、この子をどうするかは重要な・・・っていや!何があったかの話とか、
今後についての話の方が大事でしょ!!
と言いたいところだけど、何があったかに関しては麗香さんが興味を既に失っているし、
今後について、と言っても、頑張ってジークの領土に帰るしかないわけだし。
子犬のことについて考える時間は十分にあるか。
この子犬、多分、ずっと一人でこの辺りで生活してきてるよな?
自然の中でも一人で生きていける力を持っている。・・・なら、この子の判断に任せるとしよう!
ここに残りたいのなら残ればいいし、一緒に行きたいと言うなら一緒にくればいい。
幸い、俺は前世から”わんこ”が大好きだから、わんこを飼うのに必要な知識はある程度は分かる。
と言うことで、俺は早速、この子犬に今後どうしたいかを聞くことにした。
「お前、一緒に来るか?それとも・・・」
俺が全てを言い終わる前に、子犬は「アン!」と元気よく返事をして来た。
やっぱりこいつ、俺と過ごした短い時間の中で、ある程度の”言葉”を理解したようだ。
その証拠に、子犬は『一緒に来るか?』と言った瞬間に、元気よく返事を返してきたんだから。
子犬と俺との一連のやり取りを聞いていた麗香さんは、俺達の会話?が終わると、こう言った。
「なら、この子の名前を決めないとですね」
麗香さんのその言葉に、子犬も元気よく「アン」と返事を返した。
もちろん、俺も頷いて、こいつの名前を考えることにした。
性別はオス。茶色い毛につぶらな瞳。・・・でもなぁ、犬種が分からないんじゃ、大人になった時に
名前と見た目のギャップがアレなことになるかも(汗)。
せめて、大型犬か中型犬か小型犬か、それだけでも分かればいいんだけどねぇ。
そして何より、俺は昔(前世)から周りに「ネーミングセンスが独特だね(苦笑い)」的なことを
言われ続けて来た!そんな俺が、こいつに名前を付けてもいいものだろうか?
・・・!そう言えば、この場には俺以外にも魔物がいたじゃないかっ!!
と言うことで、そのもう一人の魔物にこの子犬の名前を決めてもらうことにしようか!!!
「その、麗香さんは、いい名前とか、あります?」
俺から質問されたことに対して、麗香さんは意外そうな顔をした。
けど、暫く考え込む素振りを見せた後
「無難に、ゴローなどではダメなんですか?」
麗香さんは表情一つ変えずにそう言った(汗)。
うぅ~ん。そう言われれば、無難な名前でもいい気がして来たけど・・・ゴローは流石に。
でも、麗香さんの手前「いや、ゴローって言うのはちょっと・・・」とか言えないしなぁ(汗)。
うううううぅぅぅぅ、しかし、俺もいい名前が思い浮かばない(涙)。
ゴロー。ゴローか・・・なんか、良い名前の様な気がして来た!うん!!そうだ!!!
ゴロー。良い名前じゃないか!!!!よし!!!!!ゴローに決定だっ!!!!!!
「・・・そうですね!俺もゴローが良いと思います!!」
と言うことで、子犬の名前は『ゴロー』に決定した。
ゴローからは「本当にそんな決め方でいいのか?」と言う目で見られたが・・・
気付かないふりをしておいた。
と、一件落着したところで、次は今後どうするかについての話し合いに自然と移っていた。
麗香さんは病み上がりと言うこともあって、今日はこの洞窟で休んで、明日出発することにする。
・・・そこで一つ、大きな問題が出て来た。
まず、俺が麗香さんを異性として認識していることを、再認識させられたことと、麗香さんが
俺のことを異性と認識していると分かったことによって、俺の『理性』がかなり動揺している。
それと・・・麗香さんが『恋愛』においては、随分ポンコツであった事実が発覚する(汗)。
まず、最近風呂に入れていなかったから、二人とも水浴びをすることにしたんだけど
「一緒に水浴びでもどうですか?」と麗香さんに言われたこと。
その時は、あまりのド直球発言に、頭の回路全てがショートしてしまった(汗)。
後で聞いた話なんだけど、フィアナさんに「恋仲になった相手とは、一緒に入浴をするのよ!」と
言われていたらしい(汗)。
なのでしっかりと麗香さんに
「淫魔と普通の魔物の常識を一緒にしては駄目ですよ」
と言っておいた。
それと、帰ったらフィアナの野郎を絶対にシバク!!!!!!!!!!!!!!!!
はぁ、これから二人旅になると思うと・・・うう。頭を抱えたくなる。
でも、ゴローもいてくれることだし、何とかなる・・・よね?