序
「よいか! 飢えに苦しむ者も、寒さに凍える者も、一人として出してはならない! 今こそ、全国民が貧困と闘い、決別する時なのだ! 君達もまた、更なる募金活動によって、国家に寄与することが求められる!」
壇上から、槍で刺すかのようだった。その下で背筋をぴんと張り、起立している少年の一団は、困惑を隠せない。
「二週間! 二週間だ! 次の集会までに、この募金缶を各自、一杯にしたまえ!」
募金缶が高く掲げられると、動揺は抑えきれずに、ざわめきとなって広がった。その要求の困難さは集会の規律よりも重く少年達を襲い、不平不満の囁きは今やはっきりと聞こえるようになっていた。姿勢は崩れ、隊列が乱れ始める。
「静粛に!」
少し間を置き、両手を演壇に付け、身を乗り出し、
「次の集会では、いよいよテオドール少佐がお見えになる。我々に貴重な時間を割いて、演説をくださるのだ。また、募金活動において優れた成果を挙げた者には、お声をかける機会を設ける予定である」
一転、集会所は歓声で沸き立った。少年達は顔を綻ばせながらも、改めて背を垂直に伸ばし壇上を食い入るように見つめている。語り聞かされた勇敢なる兵士達は今や彼らの憧れの的で、まして少佐なぞと言ったら遥か彼方の夢に住む英雄だった。
「テオドール少佐に、恥じぬよう、募金活動に精進するように!」
帰りの道すがらの話題は、これで持ちきりだった。誰もが希望を膨らませていた。学校の国語の授業中でも、次の少年団の集会へと心は弾んでいた。